44話
楽しそうに花冠を編む2人の姿を見ながら。
「女の子のああいう所は可愛いよね」
「ティナはリリが居ると、ちょっと子供っぽくなるな」
「そこも可愛いけれどね。リリアンヌ嬢もああしていると普通の可愛いご令嬢って感じだし」
「中身と外見がちぐはぐだけどなぁ・・・」
サミュエルはリュドをちらりと見て。
「リュドはどう思う?」
「お2人共、大変お可愛らしいと思いますよ」
「その余所行きやめろ。久しぶりに見ると違和感が・・・」
「おや?私はいつも通りですが?」
「ははっ、このリュドを崩すのは無理だよ。でも自分の事「俺」て言うのは意外だった」
「それは秘密でお願い致します」
ティナがリリアンヌを連れていく間、3人で話す事が増え随分と気安い関係になってきていた。
「そういえば、リリの様子が一時期おかしかったのは何かあったのか?」
リュドは自分にも原因が無くはない気がするので微妙な顔をして。
「私は今年から専属ですから詳しい事はわかりません。サラさんと話されて落ち着かれた様です。サラさんからはお嬢様の心が成長するのを見守りましょうと言われましたね」
「あぁ・・・リリは自分の事には鈍感だからな」
「リリアンヌ嬢は不思議な人だよね。後継として話していると自分より大人みたいな所があるのに」
「そうだな。かと思えば酔うと5歳になるとは・・・くくっ」
「サミュエル様。お嬢様は余程恥ずかしかった様で、その事は話題には出さない様にして下さい」
「わかってる。お気に入りの気分はどうだった?」
「意外な酔い方でしたが可愛らしかったですよ」
飄々と答えるリュドに2人は。
「あのリリを見て照れもしないとか・・・お前の精神力どうなってんだよ・・・」
「本当にね。僕・・・クリスティナにされたら自信ないよ・・・」
「お2人はまだまだという事ですね」
*****
花冠を手に2人が戻ってきた。
「アンドリュー様に差し上げますわ」
クリスティナはふわりとアンドリューの頭に花冠をかぶせる。
「ありがとう、クリスティナ」
「では、私のはサミュエルお兄様へ」
同じ様に花冠を乗せてあげる。
「お前らなぁ・・・」
美青年2人が森の中で花冠をかぶる姿など、愛でる皆さんが知ったら面白い事になりそうだわ。
誰かカメラの魔道具を開発してくれないかしら?
一瞬、ぞわりとした気配が森の奥からした。ティナと侍女以外は感じた様で、その方向から目を離さない。
「リュドすぐに馬を戻して。アンドリュー様はティナをお願いしますね」
「わかった。クリスティナこちらへ」
静かに従ってくれるティナには助かるわ。護衛の2人が前に立ち警戒する。
「魔獣か?」
「領地で魔物と対峙した時に似ていますが・・・あの時は遠くから見ていましたから何とも」
「俺は学園に居たからな・・・間違いないのか?」
「魔獣であって欲しいのですが・・・目視するまでは・・・」
「そうだな。アンドリューはティナを乗せて、護衛1人と侍女と共に先に離れろ。リリはどうする?」
「もちろん、残りますわ」
「お嬢様、私が魔道具で知らせますからアンドリュー様と行って下さい」
「リュド。領地では騎士団と戦闘訓練もしてきたのよ」
「わかりました。私の言う事を必ず聞くとお約束下さい」
「約束するわ」
リュドは渋い顔のまま承諾してくれた。
アンドリュー様達の準備が整い立ち去ると、じわじわと気配が濃くなる。護衛とリュドが前に立ち警戒する。
「お嬢様、離れないで下さいね」
「わかっているわ」
「この気配は嫌だな・・・出来れば確認してから離脱したいが」
「同感ですわ。サラに状況を知らせます」
銀の魔石に指を添え。
「サラ。緊急事態よ。まだ目視は出来ていないけれど、おそらく魔物が出たわ。場所は湖。魔物はその森の中。アンドリュー様と護衛1人がティナと侍女を連れて先に離脱したわ」
『畏まりました。至急王宮へ連絡を入れます』
「お願いね。私達は目視確認後に離脱するわ」
『ご無理はなさらないで下さい』
「ええ。気をつけるわ」
銀の魔石から指を離す。
「その魔道具便利だな」
「サミュエルお兄様も持たれては?」
「考えとく」
*****
30分程経ったはずだが、気配は濃くなるが物音一つしない。
「変だな。魔物は生き物の方に来るはずだろ?あの辺の木を切り倒すか?」
「雑ですわね・・・」
「確認しなきゃ動けないだろ」
「そうですね。ずっと気を張っていると精神的に消耗しますし」
「じゃあ・・・やるぞ」
護衛とリュドが前にシールドを張り、サミュエルお兄様が上級の風魔法で1番気配の濃い場所の木を切り倒す。
「居ませんわね・・・習っていないタイプかしら?」
「新種か?厄介だな・・・」
「サミュエル様、離脱しますか?」
サミュエルは護衛からの問いに難しそうな顔をして。
「着いて来ない保証が無い・・・魔物を街道に出す事は避けたい。馬だけ逃がせ。逃げるなら森へ入る」
ちらりとグリーズを見ると警戒はしているが落ち着いてる。
「グリーズ、他の子を連れて行きなさい。命令よ」
少しこちらを見ていたが他の子達と街道に向かって走り出した。本当に賢くて助かるわ。
銀の魔石に指を添え。
「サラ、魔物の気配のする一帯の木を切り倒したけれど目視確認は出来ない。相手は物音一つしない。おそらく新種。囲まれたようだから馬は逃がしたわ。着いて来る可能性があるから逃げる時は街道では無く森に入るわ」
『畏まりました』
「何かあればまた報告するわ」
『お気をつけて』
指を離し周りを観察する。前世、音のしない魔物なんて居たかしら?幽霊とスライムくらいしか思いつかないわ・・・。もっとゲーム好きの友人の話を聞いておけば良かったわ。
「さて、どうするべきか悩むな」
「魔物は残った切り株より小さいのかしら?」
「小型は的としては狙いにくいな・・・」
「お兄様は音のしない魔物に心当たりは?」
「無いな。はぁ・・・分が悪いな」
「お嬢様、来ます」
盾分のシールドを出し構えると森の中から鞭のようなものが攻撃してくる。護衛が鞭の根元を土魔法で盛り上げる。
「なんだあれ?」
ブルンブルンした半透明の30cmくらいの芋虫みたいな物が触手っぽい物を鞭のようにして攻撃してきていた。スライムっぽいけど何故その形なの!?
攻撃する度にブルブルしてるわ・・・。
私・・・前世から虫は駄目なのよ・・・幽霊の方が良かったわ。




