42話
邸に帰り晩餐と湯浴みを済ませ、今度こそ仕事に手をつける。
最善と思う案を考えた・・・のだけれど決めきれないわ。でもこれは終わらせてしまいたいし・・・少し時間が遅いけれどリュドに意見を聞こうかしら?
「お嬢様、お呼びですか?」
「遅くにごめんなさいね。これの意見を聞きたくて」
リュドにも確認してもらい同意を得られてほっとする。
「それと昨日は迷惑をかけてごめんなさい・・・」
「大丈夫ですよ。ただアルコールは禁止です」
「わかっているわ。ティナに可愛いけどエロい・・・と言われたもの。サミュエルお兄様達も男の前では飲むなって言うから乾杯の1杯だけにするわ」
「それが宜しかと思います。せめて婚約者の方がエスコートし守って下さる様になるまでは控えて下さいね」
婚約者・・・。婚約者が出来たらリュドはもうエスコートをしてくれないのよね・・・。
「どうかされましたか?」
「リュドはもうエスコートをしてくれないのかと思って・・・」
「昨日のように旦那様方が一緒に行けない場合は護衛としてエスコート致しますよ」
「そうよね。護衛よね・・・」
何かしら?とても悲しいわ・・・。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。遅くにありがとう。下がって良いわ」
「夜更かしは程々にして下さいね。失礼致します」
そういえば、リュドに名前で呼んでもらった事も無いわ。いつも「お嬢様」ね。
次の資料を手に取るけれど集中出来そうにないわ・・・。
*****
リリアンヌの部屋から下がるとリュドはサラの元へ向かう。
「サラさん、少し宜しいですか?」
「リュド、どうかしたの?」
「お嬢様の様子が少しおかしい様でして・・・」
「ありがとう。ちょっと見てくるわ」
「お願いします」
リリアンヌの部屋をノックをする。
「お嬢様、少し宜しいですか?」
「サラ?大丈夫よ」
「失礼致します」
リリアンヌはデスクを片付けていた。
「お嬢様、リュドが様子がおかしいと心配していましたよ」
「そうかしら?」
「久しぶりに少しお話を致しましょう」
リリアンヌをドレッサーに座らせ、ブランデーを垂らした紅茶を差し出す。
「良い香り・・・美味しいわ」
「お口に合って良かったですわ」
髪を優しく梳きながら。
「リリアンヌ様は何か悩んでいらっしゃるのですか?」
「最近ね・・・自分の気持ちがよくわからなくて・・・何だかモヤモヤして嫌なの」
「どういう時にモヤモヤされるのですか?」
「さっきは・・・リュドがもうエスコートをしてくれないと思って・・・。昨日みたいに護衛としてエスコートするって言われても何だか悲しくて・・・モヤモヤしたわ」
「リュドにエスコートをしてもらいたいのですか?」
「リュドのエスコートはとても安心するわ。デビュタントも昨日も助けてもらったもの」
「そうですね」
「あと・・・サラやメルみたいに名前で呼んでくれた事が無いなって・・・」
「私共は侍女で多少立場が違いますからね。特にメルには学園の先輩という面もありますから。リリアンヌ様には少し友人の様な感じですね」
「そうね・・・」
「リリアンヌ様。モヤモヤしたらそれはどんな時か、何を考えている時か、誰と居る時かなど考えみて下さい」
「そうしたら何故かわかるの?」
「考えていたら・・・きっとわかりますわ」
「わかったわ。ありがとう、サラ。少しスッキリしたわ」
リリアンヌがベッドに入るのを見届け。
「おやすみなさいませ」
「おやすみ、サラ」
部屋の明かりを消し下がる。
リリアンヌ様は自分の感情にとても鈍いわね。仕事に関しては大人顔負けなのに・・・でも何らかの感情が芽生えた事は喜ばしいわ。
ただ・・・リュドの事は頼りになるから傍に置きたいのか、異性として気になるのか物凄く微妙ね・・・。
ゆっくり見守りましょう。
*****
サラが話を聞いてくれて良かったわ。
昔から何か悩んだり迷ったりするとサラが髪を梳きながら話を聞いてくれるのよね。でも、答えは教えてくれないの。たくさん考えて間違えても良いから答えを見つけて下さいって子供の頃に言われたわ。
サラにとっては私はまだ子供なのね。嫌じゃないけれど少しくすぐったい感じがするわ。
学園の授業は通常に戻った。学園と仕事に週末だけの社交と、少し余裕ある生活になってほっとしたわ。
「リリ。今日の授業後、勉強を教えて貰っても良いかしら?」
「ええ。もちろん。月末には試験ですものね」
「成績が悪いと2年生からリリと離れちゃうわ」
「ティナと3年間同じクラスだと嬉しいわ」
ブレスレットの銀の魔石に指を添え。
「サラ、今日はティナと試験勉強をして帰るわ。カフェテリアの閉まる18時頃に迎えに来て欲しいの。ティナの家にも伝えておいて」
『畏まりました』
「これで御者を待たせる事は無いわ」
ティナがブレスレットをまじまじと見つめてくる。
「その魔道具、本当に便利ね」
「元々は乗馬に出て何かあった時に、緊急事態を知らせる為に購入したのだけれど便利よ」
「私も魔道具組合で見てこようかしら?」
「アンドリュー様とデートで行って来たらどうかしら?」
「そうね。目的があるのなら誘いやすいわ」
「デートって目的が無いとしないものなの?」
「そうじゃないけれど・・・理由がある方が誘いやすいわ」
「そうなのね」
デートって難しいのね。前世は仕事終わりに飲みに行くのがデートみたいなものだったわね。
「リリはどんなデートをしてみたい?」
「私は一緒に乗馬で出掛けたいわ。婿に来てくれる方が乗馬好きだと嬉しいけれど・・・望みすぎね」
「あら?希望を言うだけは自由よ」
「ふふ、そうね」
「リリのお婿さんの条件ってどんなの?」
「変わってないわよ?優秀なのは絶対ね。後は信用出来て人柄も良ければ合格点ね。これは素行調査から見極めているわ。それと領地や領民の為に働いてくれる方ね。それに乗馬が好きなら言う事はないわ」
優秀でリリから信用もされて乗馬も出来る・・・それはもうリュドで良いのでは?とクリスティナは思った。
リリがリュドを気に入っている事は確かよ。でもリリは鈍いのよね・・・リリとリュド、お似合いだと思うのだけれど・・・。




