38話
翌日、アルトワ伯爵家のガーデンパーティ。
エノー伯爵家と共に婚約したアンドリューも来ていた。隅のテーブルに座り3人でリリアンヌを観察していた。
「リリのやつ、やっぱり変だな」
「そうよね。どうしたのかしら?」
長い付き合い故にエノー兄妹はリリアンヌの些細な変化にも敏感に反応する。
「違うかな?いつも社交で会う時と変わらない気がするけど」
「アンドリュー様、あれは絶対何かあった顔よ」
「そうなの?」
アンドリューには普段と同じに見える。
「リリ、学校ではどうだったんだ?」
「普通だったわよ」
「じゃあ、何かあったのは昨日だな」
「聞いたら教えてくれるかしら?」
近くを通りかかったメルを捕まえる。
「あっ!メル、リリに何かあったの?」
「昨日乗馬から帰られてから様子が少し。一緒に行ったのがリュドさんだけなので何があったのかは・・・」
「メル、ありがとう!」
クリスティナは瞳を輝かせた。
「リリとリュドの2人に何かあったわね・・・乗馬で恋に進展があったのかしら!」
サミュエルとアンドリューはリリアンヌと恋がどうしても結びつかず微妙な顔をした。
クリスティナに頼まれ素行調査はしっかりした。サミュエルとアンドリューの2人で内容を確認したが「もうリリアンヌの婿はリュドで良いのでは?」というくらい優秀だし、悪い噂1つ無い。
そして子爵家の三男。家格的にも問題は無い。付き合っていた女性は居たが彼女達は既に既婚。過去に問題も無く現在恋人は居ない。
そもそもリリアンヌの専属になるのに素行が悪い訳が無いのだが・・・しかし専属だからこそ恋愛に発展するかは難しい。令嬢に異性の専属をつける場合は手を出すような者は絶対に選ばれない。
浮かれるクリスティナは立ち上がると、サラを見つけ足取り軽く歩き出す。
「私ちょっと行ってくるわね!」
2人は進展があっても、それはそれで問題なので微妙な顔で見送った。
*****
クリスティナはさり気なくサラを捕まえる。
「リリは大丈夫なの?」
「クリスティナ様。本人は大丈夫だと。実際きちんと対応されていますから・・・」
「アンドリュー様は気づかなかったからそうでしょうね。でも、私とお兄様はすぐ気づいたわよ」
「そうですよね・・・リュドに話を聞きたかったのですがお嬢様が口止めをされたのでわからないのです」
給仕に出ているリュドをちらりと見て。
「リュドを問い詰めたら言うかしら?」
「無理だと思いますわ」
「リリから聞くしかないのね・・・。忙しいのにありがとう」
クリスティナは、しょんぼりとした顔でテーブルに戻った。
「どうだった?」
「リリがリュドに口止めをしたから本人から聞くしかないわ」
「あぁ~・・・そりゃ話さないな。諦めろ」
「そうよね・・・」
アンドリューは不思議そうに。
「リリアンヌ嬢はクリスティナには何でも話すのかと思っていたのに意外だな」
「リリはね、話さないと決めたら絶対話さないわ」
「じゃあ見守るしかないね」
「うぅ~・・・リュドの口を割らせれば・・・」
「主人から口止めされたら話さないよ」
クリスティナはパーティが終わるまで、何があったのか聞き出す方法は無いかと悩み続けた。
*****
それからも時々リリアンヌの様子はおかしかったが何事も無く過ぎていった。
クリスティナ達の婚約披露パーティまで1ヶ月を切った頃。
「お嬢様、クリスティナ様の婚約パーティにお召になるドレスの仮縫いのお時間です」
「すぐに行くわ」
応接室に入るとマダムが待っていた。学園に入ってから毎月会っているわね・・・今回はどんなドレスだったかしら?
「お待たせしてごめんなさいね」
「リリアンヌ様、ご機嫌麗しく。早速ですがお着替えをお願い致します」
衝立の裏に入り着替えさせてもらう。その間にお母様が来てマダムとお喋りをしている。着替えて衝立から出ると。
「あらあら!リリアンヌ素敵よ!」
「まぁ、良くお似合いですわ」
まさかのマーメイドラインのドレス・・・。淡い水色の生地に光沢のある青い刺繍が胸元から膝に向かって濃くなるように施されている。膝の上辺りから下は青からネイビーのレースやシフォンが重ねられ、全体的に水色からネイビーへのグラデーションが大人っぽい。
「素敵だけれど大人過ぎないかしら?」
「そんな事ないわ。良く似合っているわよ」
「お母様が言うのなら大丈夫なのかしら・・・」
「このタイプのドレスを仕立てるとね、ボディラインを維持しようと思えるから良いのよ!」
着れなくなるからそうだと思うけれど、ボディラインが出過ぎて恥ずかしいわ・・・。
「お嬢様はまだ成長されますから調整出来るように仕上げますからご安心くださいね」
マダムの視線が胸とお尻・・・まだ育つのかしら?身長は止まりそうなのに。
仮縫いが終わり部屋に戻る。サラがハーブティーを入れてくれる。
「お嬢様、お疲れ様で御座います」
「ありがとう」
「ハイシーズンも後1ヶ月程ですが、無理はなさらないで下さいね」
「ええ。ティナの婚約パーティが最後ね。メルから聞いていたけれど本当に大変ね。夜会は休日だけで良いとお父様が言ってくれて助かったわ。サラとメルもあと少し宜しくね」
「はい。それでは失礼致します」
ハーブティーを飲みながら受け待っている仕事に優先順位をつける。
1度鉱山も視察に行きたいが転移塔を使っても、そこから馬車で移動するから・・・余裕を持つと1週間は欲しいわね。年末に予定を組もうかしら?
スキルで行ったのは・・・あれはカウントされないものね。
リュドを呼ぼうとブレスレットに手を触れるのを迷う。
2人で乗馬に行ってから自分でもよくわからない感情に悩まされている。容姿を褒められるのがあんなに恥ずかしいなんて思わなかったし・・・思い出すと顔が熱い・・・。
あの落ち着く感じは何なのかしら?お父様に抱きしめられたりクリスに抱き上げられた時に近いのかしら?それとも兄的な感じ?
今度サミュエルお兄様で試したらわかるのかしら?




