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転生したら伯爵令嬢~恋愛偏差値マイナスだけど優秀な部下(婿)を捕まえたい~  作者: 塩豆大福


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37話


ティナとアンドリュー様は正式に婚約を結んだわ。7月初めの週末にお披露目の夜会があるから楽しみね。


湯浴みを済ませて仕事の資料をリュドから受け取る。


そういえば、リュドと良い雰囲気だったと言っていたわね・・・変な噂が流れたらリュドの迷惑にならないかしら?


「この前のお茶会でね、ティナがリュドと良い雰囲気だったと言っていたの。私はデビュタントの時とても助かったわ。でも変な噂が立てばリュドに迷惑をかけてしまうと今気づいたの」

「大丈夫ですよ。結婚の予定も相手も居ませんから」

「そうなの?」


見目もスタイルも良くて仕事も出来るのに?もしかして・・・


「お嬢様、違いますからね」

「あら?偏見は無いから大丈夫よ」

「私はちゃんと女性が好きですから」

「そうなのね・・・」


だって優秀なイケメンが独身主義ってそんな気がしない?駄目ね。これが偏見だわ。


「良い人が出来たら報告してね。サラは全然結婚する気が無いのよ」

「サラさんも私も仕事が好きですから、お気になさらずに。お嬢様1つだけ宜しいでしょうか?」

「何かしら?」

「外でのアルコールは控えて下さい。酔ったお嬢様は目の毒ですから夜会の時は気を付けて下さいね。それでは失礼致します」


目の毒・・・目の毒?確か良い意味よね?違うかしら?前世でも今世でも実際に言葉として使った事が無いからわからないわ。


字の通りだと毒だから悪い意味かしら・・・酔った姿が見苦しかったとか?確かにリュドには迷惑をかけたわ・・・何故かしら凄く悲しいわ・・・。




*****




ハイシーズンは社交に勉強、仕事と忙しい日々を送っている。


明日は我が家でガーデンパーティがあるから特に皆忙しそう。私が手伝える準備はもう無いから仕事をしているけれど、息抜きにグリーズと出掛けたいわね。


「お嬢様、そろそろ休憩をして下さい」


リュドが紅茶を持って来てくれた。


「あら?リュドが入れてくれるなんて珍しいわね」

「暇なのは私だけですからね」

「そういえばメルも見かけないわね。息抜きにグリーズと出掛けようかと思ったのだけれど無理そうね」

「私がお供致しましょうか?」

「良いの?」

「構いませんよ。着替えはメイドを呼びましょう」

「じゃあ、お願いしても良いかしら?」

「畏まりました」


水色のアフタヌーンドレスに着替え、水色のリボンが巻かれ青いコサージュのついた白い女優帽をかぶせて貰う。ブリムが透けているから危なくは無いわ。手袋とブーツを履かせてもらい準備完了。


成人してアフタヌーンドレスも胸元が開いたデザインに変わった。谷間が見えるから恥ずかしいのよね・・・。


「グリーズ、今日は近場だけどお散歩よ」


今日は何度か行った王都にある小川の流れる森へ行く。王家所有だけれど、ある程度解放されていて乗馬好きには定番の散歩コースよ。


街中は少し暑いけれど森に入ると涼しいわ。小川近くの大きな木の下でグリーズから降りる。


「やっぱり森の中は涼しくて良いわね」

「寒くはありませんか?」

「ええ。丁度良いわ」


夏のアフタヌーンドレスは生地は薄く、袖の形は肘から先が広がって七分袖が多いわ。今日は肘下までの手袋だから丁度良いわ。馬達を撫でながらご褒美の角砂糖をあげ自由にする。


「お嬢様、準備が整いました」

「ありがとう」


ブーツを脱がしてもらい敷物の上に座り手袋と帽子を外す。おしぼりで手を拭いてもらい、持ってきたフルーツティーに口を付け一息つく。


「そういえば2人で来るのは初めてね」

「そうですね」

「私、男の人と2人で出掛けるのは初めてだわ」

「おや?お嬢様の初めてのデートのお相手とは光栄ですね」

「こういうのがデートなの?」

「男女が一緒に出かける事を指すことが多いですね。でも読書が好きなお2人なら一緒に読む時間もデートになりますから色々ですね」

「そうなのね。将来、婿に来て下さる方が乗馬好きだと嬉しいわ」


何だか条件が増えてしまうわ・・・困ったわね。


「リュドに聞きたい事があったの・・・」

「何でしょう?」

「その・・・前に言っていた目の毒ってどういう意味かしら?見苦しかったのかしら・・・」


どうしましょう・・・悲しくなってきたわ。


「良い意味ですよ。だから・・・泣かないで下さい」


目尻をそっと指先で拭われる。


「お嬢様は大人びていらっしゃるのに時々子供の様で目が離せませんね」


笑わなくても良いじゃない・・・でも悪い意味かと泣いてしまうなんて子供かしら?


「目の毒と言ったのは、酔ったお嬢様の姿がとても扇情的で、年頃の令息の前に出すのは危ないと思いそう言いました」

「扇情的?」

「ええ。酔って肌が上気し潤んだ瞳で見つめられるのは・・・なかなかですよ」

「私はそんなに美人じゃないし、リュドの態度も普通だったわ」

「私は大人ですからね。ただ、お嬢様はご自分の容姿をわかっていませんね」

「そこそこ整っているとは思っているわよ?」


何故困った顔になるのかしら?


「そこそこではありませんよ。金色の髪は艶やかで、肌は透き通るように白く滑らか。長い睫毛に縁取られた瞳は大きく湖のように煌めいて美しい。まろい頬と唇は柔らかく淡く色づいて愛らしい。幼さが残るのがまた・・・危うい色香を感じさせますね」


リュドの指が髪から唇までゆっくりと滑る。物凄く顔が熱いわ・・・。そっと手を引かれリュドにもたれ掛かる。


「柔らかく女性らしい体も年頃の令息にはとても目の毒です。夜会では気を付けて下さいね」


物凄くドキドキして声も出なくて必死に頷いたわ。


でも・・・リュドの腕の中は落ち着くわ。声もそわそわするけれど心地良い・・・何故かしら?体の力を抜いてもたれ掛かる。


「お嬢様、気をつけて下さいと言ったばかりですよ?」


リュドが笑うと体に振動が伝わってきて何だか変な感じ。見上げて正直に言う。


「だって、何故かわからないけれど落ち着くの」

「お嬢様、その顔も駄目です」

「変な顔?」

「とても可愛らしいですが・・・駄目ですよ」


体を起こされたのが何だか残念だわ・・・。


「いつかお嬢様の条件を満たした乗馬好きの方と出会えますよ」

「そうかしら?」

「そうですよ。馬達を連れ戻してますね」




*****




馬の所へ歩きながらリュドは深呼吸をして気持ちを切り替える。


「はぁ・・・デビュタントでも思ったが無自覚で無防備すぎる。普段は鉄壁過ぎるくらいなのに」


お嬢様に自覚して欲しくて、少しやり過ぎなくらいにしたのに簡単に体を預けてくるとは・・・。


何度か茶会やパーティに同行したが男に対しては見えない壁が絶対にある。そもそも素行調査が厳し過ぎる。デビュタントもテラスに出るまではあったはずなのに・・・。


酔って居たからか、親しい者しか居なかったからか・・・。夜会も増えるから慣れてきて当主夫妻と離れた場合が心配だ。


タウンハウスへの帰り道、リリアンヌは人生で初めて上の空だった。しかし出来る牝馬グリーズは、指示など無くとも安全に主を邸まで送り届けた。



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