31話
早く寝たのに起きるのはいつも通りなんて疲れていたのかしら?窓を開けて空気を入れ換えているとサラが入って来た。
「お嬢様、おはようございます」
「サラ、おはよう。今日はいつもより長く寝てしまったわ」
「十分な睡眠時間がとれて良う御座いました。今日は朝食後に湯浴みとマッサージ。その後に休憩と軽食。ヘアメイクにお着替えとなります」
「わかったわ。デビュタントに出るって大変なのね」
「一生に一度ですからね。では、朝食をお持ちしますね」
これで美容メニューも終わるのね。長かったわ・・・。もちろん美味しいけれど決められたものを食べ続けるのはつまらないわ。
普段の食事は肉と魚も出てくるけれど野菜がたっぷり。シェフが工夫をしてくれてどれも美味しいのよ。早くあの食事に戻りたいわ・・・。
あら?湯浴みとマッサージをして寝て起きただけなのに湯浴みとマッサージをするの?何故かしら・・・。
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湯浴みとマッサージで午前中が終わってしまったわ・・・ビックリよ。今は休憩中だけど爪を磨かれているわ。時々果実水を飲み軽食のフルーツ等を摘んでいるけれど・・・疲れたわ。
休憩の後、更に顔から首のマッサージをされメイクを施され髪を結われ、バランスを見てメイクを足され。今までは下ろしていたからアップスタイルは落ち着かないわ。
ドレスを着るのも大変よ。
ビスチェタイプ用の下着から始まりパニエ、そしてデビュタントのドレスを着せてもらいロンググローブに指を通しヒールを履き、パリュールをつけたら完成よ。
胸が気になるわ・・・ドレスから出ている胸の上部はふんわり丸く見えてラインが綺麗だけど谷間が・・・。スッキリ谷間が出来ないように着せて欲しかったわ・・・。
アフタヌーンドレスより準備も動くのも大変ね。行く前から疲労困憊よ・・・緊張と疲労で倒れるご令嬢が居ると聞いたけれど私はすでに倒れたいわ・・・。
「お嬢様、とてもお綺麗ですわ」
サラとメルが鏡を持って来て見せてくれる。
メイクは練習より薄いわね。髪型も編み込まれ緩めのアップで可愛いわ。
ディアデムはティアラでは無くカチューシャみたいにつけられているけど銀細工にパールとダイアモンドが・・・。ピアスもネックレスも同様ね。とりあえず宝石1つ1つが大きいのよ・・・。
ドレスはボディ部分はレースだけど何かが縫いつけられてキラキラしているわ・・・。ウエストのサテンはシンプルで腰の部分でリボンになって長く垂れている。くるりと回るとヒラヒラして可愛い。
スカートの刺繍は着てみるとより豪華で凄いわ。ここにも何か縫い付けられているわね・・・ガラスビーズだと思いましょう。私の心の平穏の為に。
出入り禁止となっていたリュドも部屋へ入ってくる。今日はエスコート兼護衛よ。昨夜聞いたからビックリしたわ。普段の執事服では無く正装姿は初めて見るわね。
リュドは髪は後ろに流し、黒の正装に青や金糸で刺繍が施されてアスコットタイもサファイアのピンでとめられスッキリとしてリュドの雰囲気によく合っている。
「お嬢様、とても可憐でお美しいです。まるで精霊の様ですね」
手を取られ指先に触れるか触れないかの口付けをされる。
「ありがとう。やっぱり恥ずかしいし・・・とても照れるわね・・・。リュドの正装も素敵よ」
「ありがとうございます」
褒め合うのも恥ずかしいわね・・・。
「リュドは絶対女性に声をかけられて大変だと思うけど、エスコート宜しくね」
「お気遣いありがとうございます。お嬢様も気分が悪い等ありましたら遠慮せずに仰って下さい。サラさんも控えていますから」
「わかっているわ。無理はしないと約束するわ」
リュドのエスコートで1階のサロンへ向かう。
ダンスの練習でヒールに慣れたはずだったけど、イブニングドレスだと勝手が違うわね・・・。階段を降りるのは足元が見えなくて怖かったわ。エスコートじゃなくてリュドの腕に掴まっていたわね。ダンスは出来ていたのだから転ばないとは思うけど・・・不安だわ。
サロンにはお父様が先に来ていた。
「お父様、変じゃありませんか?」
「とても綺麗だよ、リリアンヌ。私の天使は精霊になってしまったみたいだ」
「まぁ!お父様の元から飛び立ちませんもの安心して下さいませ」
「そうだね。リュド、リリアンヌを頼むよ。何かあればすぐ控え室に。サラもいつでも動けるように」
「「畏まりました」」
何かのフラグが立ちそうですわ・・・。
「お父様、デビュタントはそれほど大変ですの?」
「初めての夜会だしね。緊張と疲労で倒れる令嬢も居るし、お酒を飲み過ぎたり、何か粗相をしたり、まぁ・・・会場に居られなくなる事態は色々ある。そうならない為に挨拶回りをして早めに帰る家もある。リリアンヌは後継として挨拶に回るからそれは難しい。でも無理はしないんだよ?」
「わかりましたわ」
お母様がサロンに入ってくる。
「まぁまぁまぁ!」
「お母様、似合っていますか?」
「とっても素敵よ!今までも自慢の娘だったけれど、リリアンヌは天使から精霊様になってしまったわね」
「ふふ、お父様と同じことを仰っているわ」
「あら?夫婦だから考える事は同じなのかしら?でも本当に綺麗になったわね」
「ありがとうございます」
「リュドもわたくしが見立てたけれど・・・ふふ、似合っていて良かったわ」
「奥様、ありがとうございます」
ジェイムズはリュドを見て思う所はあったが・・・妻の意図もわからなくは無いのでぐっと飲み込んだ。
「さて、そろそろ行こうか。王宮近くは混むからね」
お父様達と一緒に馬車に乗ると思っていたのに、私はサラとリュドと馬車に乗り込んだ。
いつもよりボリュームのあるスカートは馬車に乗るのも大変だったわ。踏み台も見えないし、皺にならないように座るのも気を使うわ。
夜会に出るって本当に大変ね・・・。




