26話
馬車が混むかと思い少し早く邸を出たけど順調に学園まで着いたわ。
馬車寄せはトラブル防止の為に爵位毎に別れているの。
門を潜り左から王族、公爵、侯爵。警備の建物を挟んで伯爵、子爵、男爵と騎士爵、辻馬車となる。辻馬車があるのは家の馬車が使えなかったり寮生が出掛けるのに使うからよ。
今気付いたけれど乙女ゲームでよくある馬車を降りて・・・なんて無理ね。
ヒロインは男爵令嬢が多いイメージだけど私の居る場所から男爵の馬車寄せも結構離れているわ。それに校舎へは馬車を降りて真っ直ぐ進むから警備の前を通り過ぎて行くの?普通に止められると思うわ。とりあえず・・・乙女ゲームの可能性は低そうね。
「「お嬢様、御入学おめでとう御座います。行ってらっしゃいませ」」
「ありがとう。行ってくるわね」
サラと御者に見送られながら校舎へと向かう。
何だか前世の教会っぽい。先の尖った屋根とかのせいかしら?事前に読んだ資料だと屋上にも庭園があるとか。学園の色々な所に庭園やガゼボがありお茶会やパーティが出来る。
そんなの社交だけで十分だわ・・・。
「リリ、おはよう」
「ティナ、おはよう。早かったのね」
「混むかと思って早く出たの」
「私もよ。一緒に行きましょう」
お喋りをしながら入学式の行われるホールに向かう。まだ来ている人は少ないわね。クラス発表の紙を受け取り中に入る。私達の学年はA~Fの6クラス。1クラス20人程。
「ティナ、同じBクラスね」
「本当?嬉しいわ」
「私達のクラスは伯爵位だけね」
「じゃあ、トラブルの心配は無いわね」
「ええ。そうね」
入学式は普通だったわ。少しだけ期待したけど校長先生は白いお髭の某先生風じゃ無かったわ・・・。
*****
クラスメイトは社交でほぼ顔見知り。仲良くなったご令嬢達も居るから1年楽しく過ごせそうよ。
入学式の後はそのままホールで注意事項や諸々の説明を受ける。クラス毎に担任の先生に移動授業で使う各教室を案内され自分達の教室まで移動する。校舎内の迷いやすい所に案内があって親切だわ。
ただ制服も無ければ学年を示すものも無い。友人や知人以外は学年も爵位もわからない。どんな相手にもマナーを守って接する為らしいわ。
学内での行動は節度を持つ様にと再度注意を受け、午後の試験まで一旦解散となった。
「リリ、カフェテリアに行きましょう」
「ええ。どんな感じかしら」
カフェテリアは前世のホテルのティーラウンジを思い出す。学食っぽさは無いのね。席に着くと給仕が来てメニューを見せてくれる。軽食とデザート等を注文する。
「ここはご令嬢ばかりね」
「男の人はダイニングが多いみたいよ。美味しくて量が多くて良いってお兄様が言ってたわ」
「美味しいなら1度食べてみたいわね」
「リリと2人なら食べ切れるかしら?」
「残したら悪いから、誰かに聞いて大丈夫そうなら行ってみましょう?」
「そうね」
お喋りをして食後にゆっくりお茶を飲む頃には丁度良い時間だった。
「ティナ。そろそろ教室に行きましょうか?」
「試験は難しいのかしら・・・」
「学力を見る為でしょ?基礎じゃないかしら」
3時間の試験を受け学園1日目は終了した。馬車までティナと歩きながら。
「リリ、テストどうだった?」
「一応、答えは全部書けたわ」
「私は魔法の座学で書けない所があったわ・・・」
「実践授業になったら結構忘れちゃうのよね。復習すれば大丈夫よ」
「そうね。わからなかったら教えてね」
「もちろんよ。一緒に勉強しましょう」
「また明日ね」
「またね、ティナ」
タウンハウスへ帰ると執事のクリスが出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。晩餐は旦那様と奥様もご一緒されるそうです」
「わかったわ。ありがとう」
部屋に戻りクッションを抱きしめソファに深く沈み込む。リュドとメルの前でこういう格好はまだ恥ずかしいわね。サラがハーブティーを入れてくれる。
「ありがとう、サラ」
「学園は如何でしたか?」
「知り合いばかりだし、ティナと同じクラスで伯爵位だけだったわ。でも長時間一緒に居るのはティナ以外は疲れるわ」
溜息をつくと皆に笑われたわ。だって仕方ないじゃない?
「お茶会やパーティは時間が決まっていますからね」
サラがフォローをしてくれるけど他人と過ごすのは疲れるのよ。
「そうだわ、リュドはダイニングで食事をしていたのかしら?」
「はい。男子生徒は皆そうですね」
「ティナと2人なら食べられると思う?」
「無理だと思いますよ」
「そんなに多いの?メルは食べた事はあるのかしら?」
「御座います。でもクリスティナ様と2人では厳しいかと・・・」
「もしかして、昨日の晩餐2人分より多いのかしら?」
「そうですね」
「メル・・・小柄なのに食欲旺盛なのね・・・」
「私も2人で食べましたよ!でも、お腹が苦しくて医務室に薬を貰いに行きました・・・」
「えぇ・・・食べに行くなら3人かしら?」
先輩の体験談は参考になるわ。
サラに聞かないのは学園が15年前に大改革をしてカフェテリア等も変わったからよ。理由は貴族の質の低下。その時に王宮への就職も試験が設けられたの。
それまでは身元のしっかりした貴族なら簡単に就職出来てしまい教養とマナーの無い人達がたくさん城には居たみたいよ。優秀な人が国で働いてくれないって大問題よね。
学園内での揉め事も今は罰則があるわ。爵位に関係無く親が呼び出され加害側は1週間の謹慎。そして課題がたっぷり出るの。
罰則は色々あるけど非常識な行為が対象だから違反する方が悪いのよ。何回か違反すると留年や退学もありえるわ。
貴族として相応しくないとの烙印を押されるのよ。




