23話
結局リュドに褒めてもらい慣れる作戦はサラに禁止されたわ。良い方法だと思ったのに。
でも前世なら若い時は水着も着たし、夏にタンクトップにショートパンツで過ごしていた事もある。なのに何故こんなにも恥ずかしいの?
記憶だけで今世では経験していない事だから?
考えていると馬車が魔道具組合へ着いた。中へ入ると先日の魔道具士さんが出迎えてくれた。
「アルトワ伯爵令嬢、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
前回と同じ応接室に通され完成した魔道具が並べられる。家紋を入れてもらったからか銀の魔石が一回り大きくなっていた。
「今かられぞれの利用者設定をします」
「わかったわ。魔石は皆の瞳の色にしてあるわ」
「畏まりました。お嬢様のブレスレットが主となりますので初めに設定しますね。銀の魔石に触れて下さい。少し魔力が吸われますよ」
ブレスレットの銀の魔石に触れる。少し魔力が抜ける感じがして魔道具士が固定の詠唱をする。
「これで完了です。では、使用人の皆さんも順に利用者の設定をしますね」
皆の設定が終わると使い方の説明が始まる。
「最初にお話した様に銀の魔石に触れている間は対になる相手と会話が出来ます。会話を終わらせる時は魔石から離して下さい。
まだ魔力が補充されていないので出来ませんが、話したい相手の名前で繋がります。主となるブレスレットへの呼びかけは名前でも繋がりますが「お嬢様」でも繋がります。使用人の方がよく呼ばれる呼称がいくつか登録されていますから」
そうよね。主人を名前では呼びにくいわよね。
「では、こちらのブレスレットをお嬢様が、もう1つを使用人の方がお持ち下さい」
魔道具士から別のブレスレットを私とサラが受け取る。
「では、お嬢様テーブルを魔石で2度叩いて・・・」
テーブルをコンコンと叩くとブレスレットが温かくなる。サラが持っているブレスレットは赤い光が点滅している。
「通常この距離では発動しませんが、それが緊急事態の知らせです。その点滅したブレスレットをこの地図の上に」
サラが地図の上にブレスレットを持った手を伸ばすと。
「この様に光が場所を示します。もう1度お嬢様が2度テーブルを叩くと・・・緊急事態が解除されます。使用人の皆さんのブレスレットも同じ仕様ですし、互いに会話が可能です。
ただ同時に3人での会話は出来ません。会話はあくまで2人の間だけになります。何かわからない事はありますか?」
皆を振り返ると大丈夫そう。
「大丈夫よ。魔力はいつ頃補充が終わるのかしら?」
「1時間で最低限使える状態となります。十分補充されるには半日ほどかかりますね」
「わかったわ」
「説明書等はこちらに。何かありましたらいつでもご相談ください」
「ええ。ありがとう」
魔道具組合を出て馬車に戻りながら。
「基本的には皆いつも着けててね。湯浴みとか邪魔になる時は外して。寝る時も気になるのなら外してくれて大丈夫よ。夜中に無断で邸を出る事は無いから」
「畏まりました。本日もどこかに寄られますか?」
「邸に戻るわ。入学前に少し仕事を片付けてしまうわ」
「畏まりました」
*****
タウンハウスに戻ると手紙が来ていた。差出人は乗馬友達のご夫人とサミュエルお兄様からね。
「スカウトは断ったのに不愉快ね・・・」
サミュエルお兄様からの手紙はスカウトの件。ハッキリ断ったけどしつこいわね。学園に社交、領地の仕事、そこにスパイごっこ?忙しさが増すだけで私に何の得があるのかしら?
それに・・・いくら親しくとも仕事を頼むのなら礼儀があるわ。
上からの手紙でも持って来たのなら考えなくはないが・・・継ぐのは先でも私はお兄様達と違って早ければ卒業後すぐに結婚する。
この3年は貴重なのよ。何だかイラッとするわね・・・。
仕事用の家紋の入った白いレターセットを出し、適当に時候の挨拶を書き断るとハッキリ書いた。蝋封を押すとベルを鳴らす。
「お嬢様、お呼びですか?」
「メル、これをすぐに届けさせて頂戴。返事は不要と伝言を」
「畏まりました」
ご夫人の手紙は読むだけで返事は明日にし、領地の仕事に手をつける。
*****
数年分の資料と照らし合わせ領地と領民の為となる最善を探す。
「はぁ・・・前世より真面目に仕事をしているわね・・・」
勉強を兼ねているからか、私の所に来る仕事は判断が難しいものが多い。2時間ほど資料に没頭していたら少し頭痛がするわ・・・。
休憩しようかと思っているとノックの音と少し慌てたサラの声がした。
「お嬢様、お仕事中に失礼致します。サミュエル様が至急お会いたいとお越しです。会えるまで待つと・・・応接室にお通してありますが如何致しますか?」
「わかったわ。すぐに行くわ」
「畏まりました」
ドレスを着替えていなくて良かった。でも先触れすら忘れるなんて・・・。応接室の扉をノックもせずに開け向かい側に座り人払いをする。
「先触れもなく失礼ですわね。仕事が忙しいのですけど?」
「上に会って話だけでも聞いてくれないか?」
「お断りしますわ。会ったらそのまま便利に使われそうですもの」
「そんな事は・・・」
「無いと言えますの?仕事の話をしたいのなら手順を踏むのが常識ですわ。違うかしら?主人の名も告げず手紙の1つも持たない使者を信用出来まして?」
「それは・・・・・・どうしても駄目か?」
「非常識で不愉快ですわ。それに・・・同じ後継でも私にお兄様達の様に卒業後も時間があると本気で思っていますの?」
「そうだな・・・すまない・・・」
「ご理解頂けた様で。話は終わりですわね」
立ち上がり扉を開け外の使用人に声をかける。
「エノー伯爵令息のお帰りよ。今後は先触れを出してからにして下さいませ。では、ご機嫌よう」
見送らずにさっさと部屋に戻った。
イライラして仕事をする気になれず、スキルで前世の鎮痛剤を出して飲むとベッドに倒れ込んだ。
明日からは10時と18時に更新します




