22話
入学祝いに父方のお爺様から私専用の4人乗りの馬車が送られてきたわ。内装はお祖母様が決めたそうよ。
残念ながらお母様のご両親は私が小さい頃に亡くなっているの。
「上品な馬車ね。内装はお祖母様らしい品があるわ」
「何かお礼の品を送られますか?」
「そうね。お2人に会いに行くのが1番だけど・・・少し考えるわ」
ちなみに今日のコーディネートはメルよ。落ち着いたピンクのドレスに白い毛皮のケープ。
リュドは御者台でサラとメルの3人で馬車に乗った。
「全然揺れないわね。座面も柔らかくて座り心地がいいわ」
「最新式でしょうか?」
「多分そうね。お爺様達には感謝ね」
*****
「お嬢様、魔道具組合に到着致しました」
リュドにエスコートしてもらい馬車を降りる。こうして見るとリュドって背が高いわね。
「ありがとう。リュドは思ったより背が高いのね」
「186ありますね」
「羨ましいわ」
「お嬢様もまだ成長されますよ」
ドアを開けてもらい中に入る。
「予約したアルトワ伯爵家です」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
応接室に通され魔道具が並べられる。
「どういった状況を想定していますか?」
「わたくし乗馬が趣味なの。遠乗りなどに出掛けて何かあった時に連絡が出来る物が欲しいわ。会話も出来たら良いのだけど」
魔道具士さんが1つの箱を開ける。
「1番小さいのはこちらの最新式のブレスレットタイプですね。紐まで全て魔石で出来ていて身につけているだけで魔力を補充します」
紐に通した魔石は3つ。これなら普段から身につけても邪魔にはならないわね。
「対になるブレスレットとは銀の魔石に触れている間10分程話せます。数分なら間をあけ何度も話せます。魔力が切れるまで話すと再び会話出来るまで補充に1時間かかりますね。
話せる状況じゃ無い時は2度魔石を打ち付けるか、紐を切って下さい。物理的にも切れますし魔力を込めても切れます。どちらも緊急事態と場所を知らせる事が出来ます。
発動すると少し温かくなるので発動の有無も確認出来ます。触れていれば魔力が補充されますから場所を伝え続けます」
この小ささでかなり便利ね。
「魔力が切れた時に魔力を込めては駄目なのかしら?」
「小型になった分、急激な魔力補充は負担が大きいのです」
なるほど。メリットがあればデメリットもあるのね。
「どうやって場所を知らせるの?」
「魔石を混ぜた紙で出来た地図の上にブレスレットをかざすと相手の場所を示します。この手の魔道具はどれも同じですね」
「魔石は色が選べるのかしら?」
「はい。銀の魔石以外、2つの魔石と紐の色が選べます。利用者を設定すれば他人には使えません」
「じゃあ、4つ制作をお願いするわ。家紋は入れられるの?」
「銀の魔石に刻印しましょう。配色は如何しますか?」
見本の魔石と紐が並べられた。
「1つは黒い紐に青い魔石、3つは金色の紐に明るい緑の魔石、緑の魔石、明るい青い魔石でお願いするわ」
「畏まりました。2日後にお渡し出来ますが」
「じゃあ週末に取りに来るわ。その時に利用者の設定もお願いね」
「畏まりました。地図は如何されますか?」
「お父様が持っていそうだけど・・・無かったら購入するわ」
「では、週末お待ちしております」
魔道具組合を出て馬車へ向かう。
「とても良い物があって良かったわ」
「どこかに寄られますか?」
「そうね。皆でカフェに行きましょうか」
*****
お気に入りとなったあのカフェに来た。
「ここが昨日のブレンドティーのカフェよ」
中に入ると結構混んでいるが、2階のテラス席に案内された。テーブルは4人掛け。
「あら?今日はついてるわね。皆も座って好きな物を頼んでね。私とお茶をする時は休憩時間よ」
苦笑いしながらも席に着いてくれた。注文した品が揃い食べ始めるが・・・メルがとっても嬉しそうで可愛いわ。
「2人も学園を卒業しているのよね?」
「「はい」」
「先輩に聞きたいわ。社交と学業の両立って大変かしら?」
「私は子爵家の三男でしたから、入学前から働く事を考えて社交は必要最低限だけでしたね」
「リュドは先を見据えて堅実だったのね。メルは?」
「私は子爵家の次女で3年のハイシーズンまでは出ていました。大変なのはハイシーズンだけですね。学園のある日も関係無く招待状を頂きますし、午前中授業を受けて支度をするのが大変で。帰りが遅くなると次の日起きるのも辛くて・・・」
「そんなに出席するの?」
「両親から出来れば結婚相手を見つけて欲しいと言われてたので」
「ご両親の意向もあったのね」
「着飾るのは嬉しいんですけどね」
あの露出にはいつ頃慣れるのかしら?
「メルはイブニングドレスの・・・肌の露出にいつ頃慣れたのかしら?」
後半声が小さくなっちゃったわ・・・。
「はい?」
「だって・・・急に肌を出すなんて恥ずかしいわ・・・」
「ふふ、恥ずかしかったのはデビュタントくらいです。それ以上にハイシーズンは勉強と社交で忙しくて。気が付いたら慣れていましたね」
「そういうものなのね・・・」
リュドが微笑ましそうに見てくるわね。あっ!良い事を思いついたわ。
「そうだわ。リュドで慣らせば良いと思わない?」
「私ですか?」
「ええ。サミュエルお兄様にお願いしようと思っていたけど・・・でもリュドは昨日会ったばかりで慣れていないし、見目も整っているから私も褒められたら恥ずかしいと思うの。リュドで慣れたら誰に見られても褒められても平気だと思わない?」
「お嬢様?」
あら?サラの顔が笑顔で怒っているわ・・・どうしてかしら?
「おかしな噂が立ったらどうするんです!」
噂なんて立つのかしら?リュドもメルも笑っていないで助けて欲しいわ。




