20話
本当に仕方なくサミュエルお兄様を邸に招きましたわ。何の話かわかりませんからね、念の為に人払いをしましたわ。
「あのご令嬢はサミュエルお兄様の「婚約者候補」かしら?」
「まだ候補ではあるな・・・」
「そうですの。お姉様となる方かと思いましたのに・・・それで何のご相談でしょうか?」
「あの証拠の事を聞きたい」
未亡人様の話でしたか。終わった事は興味がありませんわ。
「もう興味が無いのですが」
「どうやって入手した、リリ」
「拾いましたと申し上げましたが?」
「上司が出来れば入手経路を知りたいと言っているんだ」
面倒くさいですわね。サミュエルお兄様の上司なんて知りませんし、その仕事にも興味が無いのよね・・・。
「私はその方がどなたか存じませんし、興味もありませんわ」
「今は教えられないだけだ・・・」
「そうですか。名乗らぬ方に従う義理もメリットもありませんね」
サミュエルお兄様、そんなに眉間に皺を寄せたら取れなくなりますわよ?
「そもそも、2人が未亡人様の恋人などという噂が、ティナの耳に入ったら可哀想だから手を貸したに過ぎませんわ。ティナに害が無ければ、お兄様達や未亡人様など放っておきましたもの。でも・・・来年はデビュタントですからやはり駆除してたのかしら?」
「リリ、お前はどうしてティナが絡むと過激になるんだ・・・」
「幼馴染で私の大事な親友ですもの。雌雄どちらでも害虫に容赦はしませんわ。虫は嫌いですもの」
どうして溜息をつきますの?ティナを守っているんだから褒めてくれても良いじゃない?
「リリ、あまり過保護にするとティナが社交界でやっていけなくなるだろ・・・」
「ティナは愚かではありませんわ。それに卒業後は本格的に2人はこの謎のお仕事をされるのでしょう?私がティナを守りますから安心してお仕事に邁進して下さいませ」
「あ~・・・上は将来お前をスカウトしたいそうだ」
「残念ですわ。私はティナの為にしか無駄働きはしませんの。こう見えて後継として忙しいんですの」
「だろうな・・・」
答えがわかっていたのに聞いて溜息をつくとか失礼ね。
「そうそう、サミュエルお兄様。何度も言いますが外では愛称で呼ばないで下さいね」
「わかってる。でもリリは嫡女だろ。それに幼馴染ってよりもう1人の妹みたいなものだし、愛称で呼ぶくらい普通だと思うぞ?」
「わかっていませんわね・・・。愛称は特別ですのよ?幼馴染だからと愛称で呼ばれて、気さくに話しているのを生意気って方もいらっしゃるの。ご令嬢に人気のある2人と仲が良くて睨まれているのに面倒事はごめんですわ」
「女ってほんとめんどくせぇ・・・」
「まぁ、見当違いの醜い嫉妬をしている時点で選ばれませんけどね」
「当たり前だろ。馬鹿は嫌いなんだよ」
「わかりますわ。話が通じませんものね・・・ティナを睨まれると駆除したくなりますわ」
「駆除って何する・・・・・・いや、いい・・・」
何ですの?別に消しはしませんわよ?忍者みたいな部下も居ませんもの。
弱みを収集していますけど使った事は1度もありませんわ。スキルを使えば何でも出来ますけど・・・それは最終手段ですからね。
*****
湯浴みの後、髪を梳いてもらいながら。
「クラスメイトの方は候補から外れるそうよ」
「サミュエル様も基準が厳しいですからね」
「仕方ないわ。害虫を家に入れる訳にいかないもの」
「お嬢様・・・そういう考えだから調査書が増えて、どんどん分厚くなるんですよ!」
「だって情報は大事よ?外面じゃわからないもの」
この世界にパソコンなんて便利な物は無いもの。地道に情報収集するしかないわ。
「でも使用人の情報網って本当に凄いのね。私の噂って無いのかしら?」
「御座いますよ」
「どんな噂かしら?」
「エノー伯爵令嬢を溺愛しているとか、ほぼクリスティナ様関連ですね」
「事実ね。悪い噂は無いの?」
「ありますが・・・」
「どんなの?」
「エノー伯爵令嬢に手を出すと消されるなど・・・こちらもクリスティナ様関連ですわ」
「消しはしないわ。多分」
「そう願っております」
私ってそんなに誰かを消しそうに見えるの?
「そうだわ、話は変わるのだけど」
「何でしょう?」
「私の胸って大きい方なのかしら・・・?」
「はい?」
「イブニングドレスは胸の大きさとかスタイルがわかるじゃない?自分はどうなのか気になって・・・」
聞きておいて恥ずかしいわ。乗馬のお陰か年齢の割にスタイル良く育ったと思うのよね。でも他の女性の体なんて見た事ないし。アフタヌーンドレスじゃよくわからないもの。
「ふふ、お嬢様にも年頃らしいお悩みがあって安心致しました」
「それで・・・どうなのかしら?」
「まだ成長途中ですが大きい方かと。お嬢様の大好きな乗馬で体が引き締まって腰もくびれていらっしゃいます。デビュタントされる頃には更に女性らしい体型になれると思いますよ」
「将来はお母様みたいなマーメードラインのドレスが似合う様になるかしら?」
「奥様が目標ですのね」
「ええ。子供の頃から憧れはお母様だもの」
「奥様が聞かれたら喜ばれますね。きっとなれますわ」
サラに言われるとほっとするわ。
「ただ胸は大きく見せようと布を入れている方もいらっしゃいますわ」
ブラパッドの変わりかしら?どこの世界もやる事は同じなのね。
「それはどうなの?」
「まぁ、やり過ぎると後々惨めかと・・・」
「そうでしょうね。自然が1番よね」
「そう思いますわ。さあ、終わりましたわ」
最後に火と風の混合魔法で髪を乾かされる。
この魔法があるからドライヤーの魔道具は生まれないのかしら?




