01話
今は王都のタウンハウスに滞在していますわ。
6歳の頃から社交のハイシーズンにあたる4月~6月まで王都で過ごしていますわ。両親は仕事や社交の関係で私よりも長い期間王都に滞在します。長く離れて暮らすので寂しいと感じる事もありますわね。でも、この3ヶ月は両親とたくさん会えるので毎年楽しみにしていますの。
移動は楽なんですよ。王都と各領都に転移塔があり転移魔法陣で一瞬で移動出来ますから、長時間何日もかけて馬車で移動する事はありませんわ。
将来的にはタウンハウスとカントリーハウスに転移陣を設置して簡単に行き来が出来るようにと魔術師さん達が研究中だそうですよ。両親と会える時間も増えますから頑張って頂きたいですわね。
そうそう、この世界の文明は発展し過ぎないよう調整がされているような気がしますの。色々な魔道具があり便利なのに、ある部分は進化せず不便。
その最たる物が乗り物かしら。馬車の乗り心地は魔道具で各段に良くなっていますが車や鉄道には進化しませんの。前世の記憶があるせいか「進化しない部分」がとても気になりますわ。
この世界は遥か昔に戦争で文明が亡び人類滅亡寸前まで行ったそうですから、それが関係しているのかしら。
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私にとっては今年で5回目の社交シーズン。正式なお茶会やパーティは親しい家の主に祝い事しか出た事がありません。そもそも王都も領地も邸からほぼ出た事はありませんの。
私が社交シーズンに王都に来る理由は、両親の親しいご友人と気軽なお茶会や食事の席に出席してマナーの実践練習と社交に慣れる為ですわ。
マナーを守りながらも会話を楽しみ飲食するというのは思った以上に難しいものですから。いきなり社交デビューとか正直無理ですわ。
この練習を通して出来たお友達もいますのよ。一緒に頑張っていますわ。
前世から考えたら年齢の割に、とても狭い交友関係と行動範囲ですが、この世界の貴族令嬢なら普通ですわ。
本格的に社交に出るのは新年に12歳になっている年から。日中のお茶会やパーティに12歳から出席します。15歳でデビュタント。前世で言う成人式の様なもので王城で開催されますわ。女性にとっては初めての夜会となります。男性は嫡男だと12歳からご両親と夜会に出席される方も居るそうですよ。社交はお仕事とお見合いの場ですからね。
でも15歳からは学園に3年間通いますから、楽しみですが勉強と社交で忙しそうですわね。入学まで家庭教師から学びますが前世から考えたら3年しか学校に通わないのは楽なのかしら?
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今日はセギュール伯爵家の皆様が我が家へいらっしゃいます。お父様と学園の同級生だとか。初めてお会いしますから少々緊張しますが、お子様も居らっしゃるそうなので仲良くできると良いですわね。
そして今はお母様と侍女達の着せ替え人形になっていますわ。気合いが入り過ぎでは無いでしょうか?あと何着着たら決まるのかしら?
「お母様、まだ着替えますの?」
「だって、リリアンヌは何を着ても可愛いから迷ってしまうわ」
可愛らしく首を傾げて言われても疲れましたわ。
「わたくしは今着ている淡いラベンダーのドレスが好きですわ。お誕生日にお母様達から頂いた髪飾りにも合うと思いますの」
「そうね。リリアンヌがそう言うのならドレスはこれにしましょう」
にこりと微笑み次の指示を出すお母様にほっとしながらドレッサーに座り、専属侍女のサラに髪を梳いてもらいます。お母様はご自分の支度の為に部屋を後にされました。
「今日はいつもより準備が大変ね。セギュール伯爵家ってどんな方達なのかしら?」
「旦那様の学生時代のご友人だそうですよ」
「それは知っているわ。伯爵様は装いとかにうるさい方なの?」
「ご子息をお連れになるそうですから奥様も張り切っているのではないですか?」
「そう・・・」
ご令嬢では無いという事はお友達ではなく将来の「婿候補」という事でしょうか。子供は私だけですからね。
そう考えたら会うのが面倒になってきましたわ。
昔は早くから婚約者を決めていた様ですが今は違います。こんなに早く打診してくるなんて・・・何か怪しいですわね。
早くて社交に出る12歳だと思っていました。せめて学園に通われていて成績と素行調査が出来る方が良いですわね。勉強の出来ない方も素行の悪い方も我が家には必要ありませんもの。
私は将来「女伯爵」となりますが、当たり前ですが後継を作らなければなりません。出産など領地経営から離れる期間がありますわ。産後の体調によっては旦那様に任せる事になります。
旦那様には「代理」もしくは「後見」以上の権力は与えたくありませんの。お相手にもよりますが共同経営のパートナーより優秀な部下が欲しいのです。この辺りの考え方は前世が影響しているのかしら?
簡単に言ってしまえば領地は会社。私は将来は「領主」つまりアルトワという会社の社長ですわ。私の経営手腕に領民という名の社員の生活がかかってくるのです。顔と家柄しか無いような婿など断固拒否ですわ!




