遠雷
武 頼庵(藤谷 K介)さま主催「恋の詩企画」参加作品です。
かすかに、雨の匂い
遠くで雷の音がした
アスファルトを歪める熱は鎮まるだろうか
運動場の土を乾かし、舞い上がらせるあの熱風は
ひときわ強い涼しい風が吹いた
もうすぐ梅雨が来る
降り続ける雨は熱を奪っていくだろうか
過去に二度と浮かされぬよう
あなたは
白球を追いかけるのに夢中で
わたしは
そんなあなたを見ないふりで
熱などないふりをして
校門までのわずかなあいだ
他の何かに気を取られた顔をして
こっそりあなたを盗み見た
幼い頃からの熱は下がらず
いつかこの道は分かたれる
わたしは今日も強い雨を待つ
硬球を打つバットの音に気を引かれたふりで
遠くの空に、雲からの落雷を見た
雨はまだ来ない
校庭の紫陽花が、水を求めるように震えた
わたしは、今日も熱に浮かされて