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【夢小説】よるのばけもの エピローグ ―いつかの花の夢― 

作者: 星那 和花

夜休みは意外と長い。

学校に行けばいじめられ、家にいてもいじめられ―

いつから両親を呼ばなくなっただろう


子どもの頃、テレビを見ていただけだったのに、殴られ、蹴られた。

無表情になって、口を利かなくなって、やっと、解放される。

そんな日々が続いた。


父親がいれば、良くしてくれたけれど、母親から殴られることに誰も気づいてくれなかった。


ろくに風呂に入れてもらえなかったせいか、あまり身なりを整える習慣が残っていなかった。


もう、中学生だというのに、髪の毛はボサボサのまま登校していた。


しゃべろうとすると、母に殴られた記憶が蘇って、区切りが可笑しくなってしまった。


「はじ、めまし、て矢野さ、つ、きだよ。」


「何コイツ、怖。」


「気味悪い。」


「ニタニタすんな!」


男子から罵声を浴びせられる始末―

中学に上がった境に母は私を殴るのをやめてくれたけど、父親と口論になってしまった。

養育費がどうのこうの・・・あの子を見ていたらイライラするだの・・・

だれも見てくれない

だれも尊敬していない


いつからだろう、口のへの字から半月を横に描くような形になったのは―


動物だって餌さえ与えていれば、死ぬことはない。今の状況によく似ている。


息を殺して毎日を送るようになった。

今日は殴られないかな、今日はだれかに悪口を言われないかな・・・

もう疲れてしまっていた、疲れていた自分にも気づかないでいた。


いつか、名前の由来を無くなった祖父母に聞いたことがあった。

5月生まれにも由来するらしいけれど、花の名前らしい。


誰かに気付いてもらいたくて、クラスで誰構わずイタズラをしたことがある。


あの子の本を投げたのは、なんとなく。

図書室にいたから、なんとなく ムカついた。


それが尾を引いて、クラス中からずっと、いじめられ続けている。


まぁ、仕方が無い。いつものことだ。


学校に馴染めない、夜になると悪いことを思い浮かぶ。


夜の学校にたまたま忍び込んでみたことがあった。

その日は警備員さんに見つかったけれど、身なりや雰囲気から察してくれたみたい。

緊張も静かな教室でたたずんでいると、落ち着いていろいろ考え事が出来た。

学校が昼のときに、いじわるされたことをひたすら、頭の中で処理していた。


夜休憩


怖くない。学校の怪談なんて、よく言えたものだとさえ思った。


家よりも、昼の学校よりも、夜が一番落ち着く。


そんな日がいつか終わりを告げる。


その日もいつものように夜の校舎に忍び込んで教室にいると、バケモノが現れた。

馬のような足に、何個もある目玉・・・。


でも、どことなく、見覚えがある。


「あっちー、君、だよ、ね?」


バケモノは後ずさって、驚いた様子だった。

バケモノは同じクラスの男子だった。その席は、その男子しか座らないけど、当たったことにもびっくりした。

子どもの頃、よく虐待を受けていたせいか洞察力が働いたのかもしれない。


「だれ、に、も言わな、いよ。」


せめてもの気配りを見せる。昔、母親が優しかった頃、こうやってくれた気がする。

今でも尚、娘が夜の学校を出入りしているのに、ネグレクト気味だ。まぁ、それを利用している自分も自分なんだろうけど。


今まで、他の男子や女子と一緒にいても居心地の悪い関係だった。なのに、あっちー君だけは特別だった。自分でもよく分からない。


心の中は怖くて怖くてたまらない、なのに、ニヤニヤしてしまっている。こんな心の持ちようを気が知れる相手と話せたらどんなに楽だろうか。


+++


寂しい気持ちも忘れてしまっていた。友達が欲しい気持ちも置き去りにしていた。

すべてを諦めていた。だらだらと学校に通って、いじめを受け続けた。

分かっていたけれど、あっちー君からもいじめを受けて、少し辛かった。

夜になったら話し相手になってくれる。なんだか、卑怯、みじめになった気分だった。

あっちー君のことも秘密にしないといけない。


あっちー君 


バケモノから解放されて良かったね。


バケモノはもういなくなったよ。だから、今度はね、あたしのことも見つけて欲しいな。


今日もクラスの男子とはしゃいだり、女子からいじめを受けていた。

いつか終わる、いつか、いじめは終わる日を信じている。


+++


矢野さつきはみんなから嫌われ者扱いだった。必死にいじめと戦っていた日々を送っていたが、自然といじめる側もいじめに飽きたみたいで、だんだんと少なくなっていった。

夜、バケモノが来なくなっても一人、夜の学校に忍び込む少女がいた。その子は優しくて天真爛漫で・・・。

自分で自分を守る為にニヤニヤする他なかった、それがバケモノ呼ばわりされたとしても、辛い気持ちをずっと無視し続けていた。

その子の春が訪れるのはもうすぐそこだというのに、まだ誰も知る由も無かった。


『よるのばけもの』を読破後、矢野さつきが報われないので、可哀そうで可哀そうでいろんな想像を元にしてみました。


中学時代、私も個性派で協調性が苦手だったので、この子に心情を重ねていました。


わかる・・・!わかる・・・!


と、節々に思う事もしばしばありました。もっと、最後は綺麗に終わるのを期待していましたが、主人公オンリーになっていたので、救ってあげたい気持ちに叶いませんでした。


どんな変な子でもこんな小説を書けるようになるよ!と言いたい。


いじめに耐えずに先生とか誰かに助けを求めるんだよ!


当時の自分と重ねていました、申し訳ございません。


それでは、お読みいただき、ありがとうございました。


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