表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さいごの言葉

作者:

水曜の午後に有給休暇を取得して自宅で過ごしていたら、事件は突然起こった。


血だらけの妻がパニックになっている。


「しっかりしろ」


妻の肩を掴むも、彼女の瞳は俺なんか映していない。


強盗犯に腹部を刺されてから、どれほど時間が経過しただろう。


本当に刺すつもりは無かったのだろう、昼寝をしていた息子が目を覚ます前に犯人が逃走したのは不幸中の幸いだったと思う。


犯人にとっては俺が在宅だったのが想定外だったに違いない。


もしも俺がいなかったとしたら、妻と息子だけなら一緒に昼寝をしていて怪我をせずに済んだかもしれない。


「ごめん」


俺が謝ると、妻は無言で首を横に振る。


為す術なくタオルで抑えている傷口から血がどんどん溢れてくる。


人間の体内にどれほど血液があるのか分からないが、全体量の30%以上を失うと生命に危険を及ぼすと聞いたことがある。


救急車が到着するまで意識がはっきりしていることを願う。


ペタペタと足音がして、息子が起きてきた。


寝起きで頭がぼんやりしている様子だったが、妻の様子を見て大きな声で泣き始める。


「しっかりしろ、母親だろ」


妻に対して声を荒らげたのは初めてだった。


びっくりしている妻の頭を撫でると、ようやく彼女の瞳に俺が映った。


「手洗って、オムツ換えてあげな」


床に倒れている俺から離れたくないようだったが、少し考えて息子を抱きに行った妻を見て安心する。


痛みを感じなくなってきた。


息子の泣き声が聞こえなくなり、ほっとして目を閉じる。


遠のいていく意識の中で救急車のサイレンが聞こえた。

妻が刺されたと思いきや、実際に怪我をしているのは主人公という話に挑戦しました。


視聴者や読者を誤解させて最後にネタばらしするのは映画でも小説でも大好きですが、自分で書くのは難しくて、上手につくれる方に憧れます。


尚、タイトルの「さいご」は、最後にも最期にも読めるように平仮名にしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 妻じゃなく、主人公が刺されていたんですね。 チャレンジして書こうと思うだけで、ぼくは好きです。 発想は面白いですよ。ミステリーの手法ですよね。
2021/12/08 22:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ