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コロナ禍の日々の断片  作者: KATARA
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コロナのせいで

収録した電子書籍は Amazon Kindle で発売中です。ぜひ。


https://novelsofkatara.web.fc2.com/amazon/corona.html

●オフィス・廊下


杉崎笑美(26)が郵便物の束を手に来る。コロナ禍前でマスクはしてない。


エレベーターの場所に来るとラフな服装の男、新井が扉を入りかけていて笑美に気づく。笑美が急ぐ。




●エレベーター内


笑美「(入って)すみません」


新井「いいえ。お疲れさま(開のボタンを押していて7階のボタンを押し)何階です?」


笑美「あ、7階で」


新井「そう(扉閉まる。笑美が胸に抱いた封筒の束を見て)郵便」


笑美「ええ、発送の受付が新館で」


新井「あぁ、なるほど」


笑美「あの渡り廊下によくいらっしゃいますよね」


新井「え、なんで」


笑美「いつもいらっしゃるなーって」


新井「バレてるじゃん、ともだちいないの(笑顔)」


笑美「フフフ、ともだちいないんですか?」


新井「うーん、休憩時間まで別にね、あそこの休憩室にいるのもなんか(上を指さす)」


笑美「へぇ」


新井「みんな俺なんかと話したくねーだろうとか」


笑美「なんでー」


新井「気ぃつかわれるのもナンで」


笑美「あぁ」


新井「(7階に着いて扉があき)どうぞ(開のボタンを押す)」


笑美「ありがとうございます(出る)」




●7階の渡り廊下


廊下の片側に休憩や打ち合わせ用のテーブルが並んでいる。


笑美「(来ながら振り向き)眺めいいですよね、ここ」


新井「(続いて来て)そう。たまに船も見えて」


笑美「へぇ、船通るんだ」


窓の外には海。波の輝き。


新井「じゃあ(とあいたテーブルの1つを指さす)」


笑美「あ、はい、失礼します」


新井「お疲れさまです」


笑美「お疲れさまです」


新井はテーブル席に着き、笑美は渡り廊下を歩いて離れる。


N(笑美の声)「あれがはじめて話した日。ちょうど1年ぐらい前。それまでは廊下で会うと挨拶をするぐらいだった」




●オフィス・廊下


別日。笑美と新井がお互いに正面から来るのに気づく。


N「彼は隣りのオフィス、クレーム対応の部門にいる人で、私は庶務の派遣社員」


すれ違う時に「お疲れさまです」と微笑で声をかけ合う。


N「仕事で接点はないし、それ以上はおかしかった。でもあれから少し打ち解けた」




●7階の渡り廊下


笑美がエレベーターから来ると、新井が正面から来る。お互い気づき、


笑美「お疲れさまです」


新井「お疲れさまです。終わりですか?」


笑美「はい、これ手続きしてそのまま(胸に封筒の束)」


新井「そう。あ、雨降りだしたけど(と窓を指さす)」


笑美「あ、でも、傘あります。折りたたみ(私物のバッグに手をやる)」


新井「そう、よかった(微笑)気をつけて」


笑美「ありがとうございます」


新井「お疲れさま(とエレベーターの方へ)」


笑美「お先に失礼します(逆方向へ)」




●オフィス・廊下


開け放したドアから新井のいる部署が見える。電話対応などをしているスタッフたち。重クレームで平謝りの女性スタッフがいる。新井はアドバイス役で横に座り、同じ電話を聞きながらパソコン画面を指さしてサポートしている。


N「彼のいる部署の人たちとはたまにトイレや給湯室で話したけど」




●給湯室


前シーンの女性スタッフと笑美が立ち話をしている。


N「世間話ぐらいで彼のことを聞いたりは無理。どんな人なのか、何歳で、結婚してるのか、何も知らなかった。唯一知ってるのは名前ぐらい」




●オフィス・廊下


笑美が角を曲がる時に出会い頭ぶつかりそうになる。相手は新井。


新井「(驚いて)ああ、ごめんなさい」


笑美「(驚いて)すみません」


新井「お疲れさまです(微笑ですれ違う)」


笑美「お疲れさまです(微笑ですれ違う)」


N「新井さん。IDカードを見て」




●反復・ぶつかりそうになった瞬間


新井の首から下げたIDカードがスローで揺れる。




●オフィス・廊下


N「でもそれだけで」


笑美が退勤時間で来る。


N「彼は私の名を知ってるのか、それさえわからなく、積極的な感じはなかった」


新井のオフィス内を通りすがりに見る。働いている新井。笑美には気づかない。


笑美「(寂しい気持ちでエレベーターへ)」




●新型コロナ関連のニュース映像


春節の訪日客、クルーズ船、東京五輪の延期決定、志村けん死去、緊急事態宣言などが短くモンタージュ。


N「そしてこのコロナ禍」




●エレベーター前


笑美がマスク姿でエレベーターを待っている。


「お疲れさまです」と声をかけられ、振り向くとマスク姿の新井が来る。


笑美「あ、お疲れさまです」


エレベーターがあく。誰も乗ってない。笑美が先に乗って新井が続く。扉が閉まる。




●エレベーター内


笑美「――(言い出さないと、と思っている)」


新井「お仕事大変?」


笑美「え」


新井「忙しいですよね」


笑美「あぁ――私、今月いっぱいでここ終わりなんです」


新井「ウソ。なんで?」


笑美「契約で、派遣で、もう3年経って」


新井「そう――そうなの」


笑美「いつの間にか3年いちゃって」


新井「えー寂しいじゃん」


笑美「え」


収録した電子書籍は Amazon Kindle で発売中です。ホームページでは全話の試し読みができます。ぜひ。


https://novelsofkatara.web.fc2.com/

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