古代の護者
サルランタの都から南へ数キロ離れた岩場に存在する古代遺跡。殺風景な岩場のど真ん中にあるその遺跡の外見は永い年月を経ている為に損傷が激しく入口付近は完全に崩れて、調査隊によって調査し易いよう補装されていた。
そしてその遺跡に一歩踏み入れると中は地下深くへと続く迷宮の様なダンジョンとなっており、外からは想像できない程に広々とした空間が続いている。
「はぁ……はぁ……ッ!! 急げッ!!」
そんな古代遺跡の地下第六層では現在、複数人の冒険者である調査隊が石造の通路を全速力で駆け抜けていた。まるで何かから逃げるかの様に走る彼等の表情には皆一様に恐怖の色が浮かんでいた。
「畜生ッ!! ギルドから支給された対ゴーレム用砲弾が効かないなんて聞いてないぞッ!?」
「それに応援に来てくれたハンター達も皆んな逃げ帰っちまったッ!! もうこの遺跡からは一度完全撤退した方がいいッ!!」
「とにかくベースキャンプまで戻るぞッ!! 今後の事はそれからぁ……ッ!?」
一人の調査員が走りながらそう話していると突然、脚に鋭い痛みが走りバランスを崩してその場で倒れ込んでしまう。必死に痛みに耐えながら脚元を見ると自身の脹ら脛に一本の矢が刺さっていた。
「ぐ……ッ!!」
「おいッ大丈夫かッ!?」
傷口を抑えて苦悶の表情を浮かべながら地面に倒れ込む調査員を救おうと足を止めた他の者達は慌てて駆け寄る。
だが彼等が足を止めた事で先程まで騒がしく響いていた足音が聞こえなくなりダンジョン内が静寂に包まれ、その瞬間にある事に気付く。
逃げる様に走って来た薄暗い通路の奥深くから鳴り響く、石同士が擦れ合うかの様な乾いた摩擦音と重量感のある鈍い足音。その音を出す存在に心当たりしかない調査隊達は奴が追ってきたのだと冷や汗を流した。
そしてその足音の正体はゆっくりと姿を表す。
現れたのは人型のゴーレムであった。一般的な人の体格よりも二回り以上も巨大なソレは全身が無骨な石造りで形成されており、動く度に関節部が擦れて乾いた摩擦音を響かせる。頭部には怪しく光る単眼が調査隊達をジッと見詰めており、左腕にはボウガン、右腕には古びた剣が備え付けられていた。
このゴーレムこそが調査隊による遺跡調査を何度も妨害している古代の護者であり、ギルドの掲示板でハンター達に依頼されている討伐対象であった。
「くそッ!! もう追い付いてきやがったのかッ!?」
古代の護者の姿を確認した一人が驚きと焦りの表情を浮かべる。すると古代の護者は左腕のボウガンを構えると調査員の一人に標準を合わせる。そして発射された矢が調査員の右肩を射抜いた。
「ぐわぁぁぁッ!!?」
「ーーーッ!? この野郎ッ!!」
矢で撃たれた調査員は仰向けで地面に転がり落ち、激痛でのたうち回る。その姿を見た他の二人が仲間が傷付けられた事に激昂し、腰に携えていた剣を抜くと古代の護者へと同時に斬り掛かる。
「おい止せッ!? ソイツに歯向かうんじゃないッ!!」
それを見兼ねた者が仲間を制止する為に叫ぶが、その声も届かず調査員の二人は刃を振るった。しかし古代の護者は片腕で刃を難無く受け止めると、思い切り腕を振るって二人を吹き飛ばした。二人はそのまま壁に衝突し、意識を失ったのか地面にぐったりとしたまま横たわる。
そして大の大人二人を軽々と吹き飛ばし、圧倒的な腕力の差を見せつけた古代の護者はゆっくりと調査隊達に歩み寄って来ると右腕の剣を振り上げる。その姿はさながら獲物追い詰める狩人の様であった。
「ーーー畜生ッ!!」
攻撃を防ぐ術が無い調査員達は最早これまでかと覚悟を決める。だがその時であった。
「ウォォォオオオオオラァァァアアアアアッ!!!」
突然ダンジョン内に女性らしき力強い声が響き渡ったかと思えば通路の奥から何者かが全速力で駆け抜けて来る。そうかと思えば調査員達の頭上を飛び越え、古代の護者の頭部に強烈な蹴りを叩き込んだのだ。
頭部を蹴られた古代の護者は頭部の砕けた破片を散らしながら仰向けに倒れ込む。あまりにも唐突な出来事に調査員達は目を見開いて驚いていると次第に古代の護者を蹴り飛ばした者に視線を向ける。
そこに立っていたのは華麗ながらも勇ましさを感じさせる顔立ちの女性だった。サイドを刈り上げて剃り込みの入った金髪のショートヘアに黄金色の瞳。胸元が若干開けた狩猟服に肩や腕に金属製のプロテクターを身に付けている。
「おうおうッ!! 来たぜッ来たぜぇッ!! 『ジーニアス・ワイルド』のレオナ様のお出ましだぁッ!!」
第二級ハンターチーム『ジーニアス・ワイルド』の一員であるレオナはそう高らかに宣言した。




