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デザート・バジリスク

 数分後、無事に崖の上まで引き上げられたエアリスはロゼと共に再び目的地へ向かって出発した。しかし先程の崖での一件でエアリスは完全に意気銷沈しており、一方のロゼは少し揶揄うだけのつもりがここまで凹むとは思っておらず、少し意地悪が過ぎたと反省して微笑みながら掌を合わせて謝っていた。


「うぅ……酷いですよロゼさん……確かに崖から落ちたのは私の所為ですけど、何もパンツを見る為に暫くあのままにするなんて……」


「ごめんごめん、悪かったよ。お詫びにアタシのも見るかい?」


「いえ結構です!」


 するとロゼは自分の袴の裾を摘んで少しだけピラりと捲り上げる。それを見たエアリスは顔を背けてバッと右手を出しキッパリと断った。


「そうかい? まぁ昨日のアタシの服を剥ぎ取った件もあるし、今回でお相子って事にしようや」


「う〜ん……これってお相子になるのかなぁ……?」


 確かに昨日、エアリスはロゼの服を無理やり剥ぎ取った。しかしそれは治療を行おうとした故の行動であり、ましてやその時点でロゼが不死身だという事をエアリスは知らなかったのだ。それに比べて先程のロゼの行動は明らかに彼女の悪戯心から出た行動であり、お相子と言うには少々釣り合わないのではないかとエアリスはイマイチ納得出来ずにいた。


「……っと、どうやら着いたみたいだぞ」


 だがそんなやり取りをしているとロゼは前方にある物を発見し、歩みを止めた。それに合わせて考え込んでいたエアリスもロゼの言葉を聞いて前を見る。するとそこには自然に形成されたとは到底思えないほど不自然で巨大な洞窟があった。二人はその入口付近まで近付くと、ロゼは洞窟の内壁をじっくり観察する。洞窟の奥は不気味なまでに暗く、吹き抜ける風がまるで唸り声の様に聞こえて来る。だが何よりロゼが気になったのは洞窟内の内壁であった。


「明らかに自然にできた物じゃないな……何かが岩壁を抉った痕がある」


 その洞窟内の内壁は不自然なまでに歪な形をしており、明らかに岩壁を抉って無理矢理作られていた。その証拠に内壁の一部には巨大な爪痕が残されていたのだ。そしてロゼは洞窟内を観察した後に周辺の地面を見渡すと、ある黒光りした小さな小石を見つける。


「すまないけど、その棒を貸してくれ」


「はい。どうぞ」


 ロゼはエアリスからここまで来るまでの道中で杖代わりに使っていた木の棒を受け取ると、その地面に落ちている小石に目掛けて棒を振り下ろす。すると棒の先端が小石と接触した瞬間、その場で炎が燃え上がり、近くで不思議そうに見ていたエアリスは突然の事に「キャッ!」と声を出して驚く。そして燃え上がった火はそのまま棒へと燃え移り、松明が完成した。


「凄いですね、何だったんですか今の石は?」


「これは発火石って言ってな。衝撃を与えたり、火を近付けただけで発火する石なんだ。このハイ・ウォール山脈からはこれが大量に採取できるんだよ」


「へぇ、便利な石ですね」


「でも取扱いに注意しないと危険な物なんだ。これくらいなら問題ないけど、もっとデカいサイズの発火石が大量に同時発火すると大爆発を起こすからな」


 ロゼは発火石の説明を終えると先導して洞窟へと入って行き、エアリスがその後をピッタリと付いて行く。洞窟内は松明の明かりが届く範囲以外は常に暗闇に包まれており、数メートル先がどうなっているかさえ分からない状態で、二人が歩く足音だけがこだましていた。だが暫くすると二人はドーム状のかなり広く開けた場所へと辿り着いた。そこは松明が無くとも岩壁の隙間から挿し込む陽の光で常に明るく、松明はもう不要だと感じたロゼは入口付近にそれを差し込んだ。


「何でしょうかここ……?」


「なんか嫌な予感がしてきた……アレを見てみな」


 ロゼはそう言うとある空間の隅にある場所を指差す。そこには大量の生物の骨が山の様に築かれていた。その骨の種類は様々で草食のモンスターから肉食の大型モンスター、更には人骨と思われる骨までもが確認できた。それを見たエアリスは急にただならぬ空気を感じて生唾を呑み、ロゼはある事を確信した。


「やっぱり……此処はモンスターの巣だな。しかも並のモンスターじゃない……危険度は間違いなくディアボロ・スコーピオン以上だ」


 その言葉にエアリスは冷や汗を流す。東の森で襲ってきたディアボロ・スコーピオン以上に危険なモンスターの巣の中に自分達は居るのだと思うと緊張と恐怖で足が竦みそうになった。


「で、でも留守にしてるみたいで良かったですね!」


「……」


 しかし、今は獲物を探しに出掛けているのかこの場所にはロゼとエアリス以外の生物はおらず、エアリスは少しだけ安心する。しかし一方のロゼは未だに嫌な予感が拭きれずにいるのか周囲を警戒し続けていた。


「あッ!! エアリスさん、あそこッ!!」


「ん?」


 すると何かに気が付いた様子のエアリスが突然声を上げたかと思えば二人のいる広場の中央部を指差し、ロゼはその方向に視線を向ける。


「アレは……」


 その視線の先には青白く輝く掌サイズの宝石の様な物が盛り上がった地面の中央に置かれており、それを見たロゼはアレこそが情報にあった宝石であると確信する。


「きっとアレがそうですよ! 私、取ってきます!」


「おい! ちょっと待て!」


 するとエアリスがその宝石の元へ走り出した。恐らく巣の主が居ないことで完全に安心しきっているのだろう、その足取りは軽やかであった。しかしロゼはその様な軽率な行動を見て引き留めようと声を掛けるが既に遅く、エアリスが広場の中央部に足を踏み入れた瞬間、突然大地が揺れ始めたと思えばエアリスの足元に亀裂が走り、大地が盛り上がり始めたのだ。


「キャッ!!」


 そして盛り上がってゆく大地の上でバランスを崩したエアリスはそのまま下へと転げ落ちる。するとロゼは身を案じてエアリスの傍らに駆け寄った。


「大丈夫か?」


「はい……何とか……」


 ロゼはエアリスを立ち上がらせるとその場から後退し、ひとまず安全な位置にまで下がると二人は同時に振り返る。すると盛り上がる地面の中からそれは現れた。ディアボロ・スコーピオンより巨大な30メートルはあろう四足歩行巨体に真っ赤で強固な鱗が全身を覆っている。両手両足には鋭利な爪。蛇の様に長い尻尾がゆらゆらと振れており、頭部には王冠の様な角が生え、二つの丸い目玉がギョロリと二人を見下ろしていた。


「おいおい……よりによってコイツかよッ……デザート・バジリスク!!!」


 ロゼはそのモンスターを見た瞬間、苦虫を噛み潰した様な表情となる。何故ならそのモンスターはロゼの故郷の国で知らない者はいないほど有名な存在だったのだ...もちろん悪い意味であるが。

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