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左耳は秘密の声を聞き逃さない  作者: 真里谷 紅緒
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5.二人の王子

読者様には続きを、読んでいただけて感謝。


引き続き、誤字脱字や拙い文章にお目汚しの部分はあるかと思いますが、ご容赦いただけますと幸いです。



「アナ……いい加減、機嫌直してくれよ」

王城に向かう馬車の中――マリウスは隣に座る妹を見て嘆息しながらも問いかけた。しかしアナは兄の方を見ようともせず頬を膨らませ、あからさまに不満といった表情を見せている。


「ちゃんと、断ったのに……」

兄の問いかけに可愛げのない返事をして、いっそう表情が険しくなるアナ。


「手紙には国王主催だから断れないって、書いてただろ?」

「そ、それは……そうだけど。でも、嘘をついてまで迎えに来なくても。それに、同伴者は私じゃなくても良かったと思う」

確かにエリックから渡された手紙には、国王主催でしかも王子の誕生日会も兼ねているから断れないと書いてあったことを思い出す。痛いところを突かれアナは一瞬言い淀むが、負けじと言い返せばマリウスが大きく嘆息した。


「はぁ……、僕が悪かった。多少強引な真似をしてしまった事、謝るよアナ。」

両手を軽く上げ降参のポーズをとったマリウスは、素直に謝罪する。

アナが舞踏会へ素直に出席しない事など、マリウスはお見通し。だから家令のウィリアムに頼み、舞踏会前日に彼女を迎えに行ってもらったのだが、結局アナの機嫌を損ねてしまったわけで。

それにしても、ウィリアムはどんな嘘をついたのやら……。


「………私の方こそ我儘を言って、ごめんなさい」

兄が素直に謝った事を切っ掛けに、アナも消沈し謝る。マリウスが騎士であり国王に仕える身だからこそ、今回の舞踏会は断れない事を頭では分っていた。本来は領主であるエリックも舞踏会には参加予定だったが、村の妊婦が産気づいたという事で急遽行く事が出来なくなったのだ。そのためクロスト子爵代理としてアナが、行かなくてはならなくなり益々断れない状況だった。

それに引きこもっていた時期に兄達には随分と迷惑をかけてしまった負い目があり、これ以上は迷惑をかけたくないという思いもある。それでも……本音ではやっぱり社交界に行きたくはないのだ。


一年前、アナは嫌々ながらも貴族社会の決まりに従って社交界にデビューした。

豪華な調度品に囲まれ、豪華な食事に、正装した男性達と華やかなドレスを纏った女性達、それはとても華やかだった。でもアナにとっては両親の死と左首筋の印を理由に、偏見の目を向けられ居心地の悪い場でしかなかった。それ以来、積極的に社交の場に顔を出す事を止めたのだ。

既に今期の社交界シーズンは始まっており、丁度今は盛期。

アナは招待状が来ない事を理由にして、このまま今期も社交界へ顔を出す気はなかった。

それなのに、ここにきて国王主催とは。


「僕だって、陛下主催じゃなきゃ、面倒な舞踏会なんて断ってるよ」

アナが社交界に積極的ではない理由をマリウスは知っている。そして彼も同じような理由で社交界など煩わしい集まりと、思っているからそこ出る発言だった。その言葉に少し救われた気分になったアナに、笑みが戻る。


「マリウス兄様、モテるのに……」

右腕に所属先の蒼い腕章、胸元には階級勲章を着け、騎士団の正装用軍服を違和感なく着こなす兄を見て、アナはポツリと漏す。平凡な顔つきのアナとは違い、マリウスは周囲に自慢したくなるほどの美丈夫なのだ。

清潔な短い茶髪、鼻筋のとおった中性的な顔立ちで一見華奢に見えたが、騎士をしているだけあって服の下は無駄の無い逞しい体躯をしていた。


「見た目だけにしか興味ない人達に、モテても嬉しくないよ。むしろ目障りだ」

ため息を零し悪態をつくマリウス。家令によるとご令嬢達の中には一方的な求愛する方もいるらしく、最近はそれがひどくなり困っているのだとか。兄のげんなりとしている様子にアナは思わず苦笑する。


「それよりも、アナ。兄さんからの手紙に書いてあったけど、森に出かけて手を怪我したんだって?」

これ以上は話す必要ないと判断したのか、さりげなく話題を切り替えるマリウス。問いかけられた内容に背中がびくっと、反応した。アナは動揺が顔に出ない様に必死に笑顔を作り答えた。


「え、あ……。そうなの。木の枝に引っ掻けちゃって。薬を塗ったら、すぐ直ったのよ?それに怪我したのって、10日も前の話だし。マリウス兄様が、心配する程のものじゃないから大丈夫」

しかし、誤魔化そうと意識するせいで緊張し多弁になってしまい、どこか不自然な造り笑いになった。さりげなく視線だけで横にいる兄の顔を伺うと、目を眇めてアナの顔を凝視していた。


「へぇ、そうなんだ。そう言えば、それくらいに狼に襲われて怪我人も出たって?」

更に聞いて欲しくない内容を重ねて聞いてくるから、アナの笑顔はいよいよ引きつったものになる。


「そう………。そうなの。エリック兄様とシシィが、怪我した人を手当てしたみたい。私は、屋敷に居たから知らなかったんだけどね」

マリウスから向けられる視線が痛い。目を合わさないように、視線を反らしあくまで()()()()()()()()()()()()()()()を話した。

馬車の中という狭い空間は居心地の悪さに拍車かけ、まるで尋問を受けている様な気分になりアナはどんどん落ち着かなくなる。


お人好しでどこか抜けている長男のエリックと違い、マリウスは物静で何を考えているのか分らない時があった。でも洞察力に優れており、感が鋭い一面を持っている。そのためマリウスには嘘をすぐに見破られてしまうのだ。


「…マ…マリウス兄様?」

反応なく黙ったまま、じっと凝視する兄の姿にアナも怖くなり、恐る恐る声をかけた。すると、大きくため息をついて……。


「はぁ……そうか、それならいい。……ただ、危険なことだけするなよ」

アナに何を聞いても本当の話をしない事と悟ったのか、マリウスは嘆息しそれ以上の追及めいた問いかけを止めた。だが、続けざまに一言――見透かした様な念押しに、アナは思い切り動揺してしまう。


「だ、大丈夫よ。危ないことなんて…しないわ」

あからさまに引きつった笑顔と、上ずった声で兄に向け宣言する。

しかし胸中では「既に人を襲ったと思われる狼を助けちゃいました。ごめんなさい」と、声に出せない告白と謝罪をするのだった。


アナが森で狼を助けた日から、10日経っていた。

傷の手当てを無事に済ませることが出来たのはいいが、気力が尽き眠ってしまった大きな狼をアナが抱えて屋敷に連れて帰るには無理があった。むしろ人を襲ったかもしれない狼など連れて帰れば、エリック達だけではなく村の皆も混乱する。そっちの方が問題だとエングースに指摘された。

仕方なく眠る狼をそのままに、傍に水の入ったポットを置いてその日は帰ったのだ。

現に帰宅してから猫のサンディには本当の事を話すと、厳しく怒られてしまう。

翌日狼の様子が気になり、早々に森へと向かったが既に狼の姿はなく、空になったポットが置いてあるだけだった。どうやら狼は水を飲んでくれたらしい。

水が飲めるくらいには、体調が回復したと思えばアナは少しは安堵できた。


それから何度か森に薬草を取りに出かけたが、狼と遭遇することはなかった。

次第に村の方でも目撃情報は聞かなくなり、新しく怪我人も出ないためみんな狼の存在など忘れ初めている。だがアナはふとした時に狼のその後や、怪我の具合が気になっていた。

思い返してみれば狼は変な事ばかり、口にしていた。それに本当に人を怪我させたのだろうか、狼だって酷い怪我をしていた。その理由を知りたいし、何よりアナは狼と約束した事を未だに守っている。だからこそもう一度、あの狼に会いたかった。


すっきりしない思いを抱えたまま日々は過ぎ、気が付けば舞踏会に出席する日となっていた。


 ――――※―――――――――※―――――――――※―――――――――


王城に到着しマリウスのエスコートで馬車から降りると、鳥の羽ばたく音がしてアナは思わず空を見上げた。一瞬だったが煌々と光る月に照らされた闇夜の空を飛ぶ、大きな鳥の姿を見た気がした。視線が空へと向いたまま今度は『チュチュ』と足元でネズミの鳴き声も聞こえると、胸騒ぎがして視線を素早く切り替えたが、声の主を捉える事は出来なかった。


「まさかね……」

心辺りがあるだけにアナは、周囲へとさらに視線を向け独り言ちる。でも左耳に彼らの声は聞こえてこない、という事は気にしすぎという事だろうか。


「アナ、どうした?……行くぞ」

周囲へと視線を巡らせているアナの様子を不審に思ったマリウスは、訝し気に妹の顔を横から覗き込み問いかけた。兄と視線が合いアナは何でもないと笑って誤魔化し、胸騒ぎは気のせいと自分に言い聞かせた。


マリウスの腕に手を掛けエスコートされるがままに王城内の広間へと入れば、装飾品や調度品の豪華さに目が眩む。そして人の多さにアナは圧倒され、その場で立ち止まってしまった。アナにはとっては苦い思い出がある場だけに、変な緊張に身体が支配され次の一歩が踏み出せなくなった。

そこへ拍車をかける様に、横を通りすぎていく貴族達の不躾な視線や、ひそひそ話をする声が聞こえ表情が強張り、アナは思わず兄の袖をぎゅっと握った。


「アナ、気にするな。大丈夫。左首筋はチョーカーと髪でちゃんと隠れている」

袖を握っている手の上に、マリウスの反対の手が重なり勇気づけるようにそっと耳元で囁かれ、いつの間にか俯いていた顔を上げアナは兄の方を見た。彼は笑顔で大丈夫と、頷く。


「マリウス兄様、……ありがとう」

感謝の言葉を口にしてアナは、今の自分の格好を思い出す。

舞踏会へ行くことに乗り気ではないアナを宥めすかしたのが、ハンナとタウンハウスの方で働くメイド達だった。ハンナはこんな時のためにと、アナの母親が娘時代に着ていたドレスを出してくれた。

爽やかなミントグリーンのドレスは胸元や肩の露出度は少なめで、リボンやフリルが重なり可愛く清楚な印象を持たせてくれた。そして他のメイド達の手で髪もただ三つ編みをするだけじゃなく、左首筋が隠れるような低い位置でひとつにまとめ上げ、白い花飾りやリボンで豪華に装飾してくれた。

念の為にとドレスと同じ色の幅広のチョーカーで、左首筋の黒蛇の印を覆い隠せばアナの憂いを緩和。そこに普段はしない化粧を施せば、少しは自信を取り戻す事が出来た。

”ちゃんと隠れているから人目を気にする事はない"と、自分に言い聞かせ顔を上げ、いざ広間の中へ。


(しぼ)んでしまった気力をなんとか取り戻したアナは、マリウスへ挨拶に来た貴族達や上官にあたる騎士に対し笑顔を意識して作り淑女らしく挨拶を返す。

途中、マリウスが令嬢達に囲まれそうになり、アナは令嬢達の勢いに弾き出されそうになったが、すかさずマリウスが「妹が、いるから…」と令嬢達を、さり気なく追い払ってくれた。おかげで兄からはぐれないで済みアナとしては助かった。それでも令嬢達の嫉妬めいた視線が、時折背中に刺さり疲弊感が募る。


「はぁ、サンディや、ミアに会いたい。モフモフに包まれたい……」

思わず、ため息と共に漏れ出る本音。サンディやミアのモフモフのお腹に顔を摺り寄せたり、撫で回したりして癒されたくて仕方がなかった。気力が萎えてきている妹の様子に隣に立つマリウスは苦笑し、もう少しだからと必死に宥めるのだった。


そんな時だった、広間の玉座がある方でワァと歓声上がり、拍手が鳴り響く。他の来賓達の視線が一斉にそちらへと向き、アナ達もそれに釣られ身体を向き直らせるとそこに王冠を被り、口髭を蓄えた国王が立つ。横の席には華奢な王冠を被った優しく微笑む王妃が立ち、続けて王族や、国の政治に関わる筆頭貴族らしき人達が順番に横並びになってゆく。

玉座の場所は壇上にあり離れた場所からでも、しっかり国王の顔が見えた。


「今宵は世が主催の舞踏会に…、()()()()の誕生日を祝いによく集まってくれた。感謝するぞ……」

国王が軽く右手を上げた瞬間、歓声と拍手がピタリと止み静けさが広間を支配した。

そして国王が威厳ある口調で主催者としての挨拶を始めれば、来賓達は国王の言葉に真剣に耳を傾ける。

今夜の舞踏会は王子の誕生日も祝う目的もあり、その主役である王子が国王から紹介され再び歓声と拍手に会場が包まれる。


「あの人が、第一王子のノア様?……すごく綺麗な人」

「そう。ノア・ベルフィールド殿下。今夜の誕生日会の()()()()()()()()

国王陛下の挨拶が続く中で、紹介された王子を見てアナは、思わず感嘆の声を漏らした。

領地に引きこもり社交界に顔を滅多に出さないため、国王と王妃以外の王族や、政治関わる上位貴族達の顔を知らないことはアナの弱点ひとつだった。

白地に衿、袖、裾などに金色の飾り刺繍が入ったフロックコートを着た王子は、艶のあるプラチナブロンドの長髪を革紐でひとつに纏めていた。線が細くスラっとした長身で、穏やかに微笑む面差しは見目麗しく、美青年呼ぶに相応しい容姿をしていた。


「もしかしてアナ……ノア様が好みのタイプとか?」

動物の世話や、森に出かけてばかりで人間の男に興味など見せたことの無い妹が、珍しく異性に興味を示した様に見えた。内心、嫁の貰い手があるのかと心配している兄としては、聞かずには居れず。


「ち、違う。そういうのじゃなくて………ただ、綺麗な人だなと思って。……そういえば、主役のひとり、ってことは、もうひとりいらっしゃるの?あれ、ノア様って双子だったかしら?」

どこか揶揄するように聞いてくる兄に、アナは顔を赤面させ動揺する。兄からまさか、異性の好みを聞かれる日が来ようとは。突然何を聞いて来るのだと、軽く焦りながらも変な所で違和感に気づき、それを声に出していた。


「双子じゃない。もうひとり居るだろ?一週間遅れで生まれた、腹違いの王子がさ……」

「え?…………それって」

アナは兄の言葉を聞き逃していなかったらしい、鋭い指摘にマリウスは引きこもりの我が妹ながら記憶力良いなと、感心する。そして答えの糸口を示すように言えばアナは一瞬戸惑ったようだが、記憶の底にあった人物の存在を思い出したと同時に、広間には国王の声が響きもう一人の主役を紹介した。


「そして今年はもうひとりの息子が病を克服し、ようやく王都に帰って来てくれた。良くぞ帰って来てくれた。ランバート」

ランバート・ベルフィールド王子。ノアとは腹違いの第二王子。

国王から紹介されたもう一人の王子は、濃い灰色のフロックコートを着て清潔感のある短髪の黒髪を後ろへと撫でつけていた。彼はノアとは対照的で野性みを帯びた精悍な顔つきで、どちらかというと眼つきが悪く強面に見えた。そしてかつて病人だったとは思えない、逞しい体躯の男性だった。

国王は病を克服した息子を、集まった来賓達へ紹介することができて嬉しそうだが、遠目に見えるランバートはどこか不機嫌といった様子で、アナには"誕生日を祝ってもらい、嬉しそう"には見えなかった。


『あれが噂の亡霊王子?』

『私は死んだと、聞いていたぞ…』

『騎士団の総団長になったというのは、本当だったのか』


こそこそと小声で周囲の来賓達が噂話をしている声が聞こえる。

拍手する中、一部ざわつく来賓達の様子にランバートは苛立ちを隠そうとはせず無言で睨んだ。

王子に睨まれた来賓達は動揺し怯え一斉に口を噤むと、素知らぬ顔をして逃げるように散っていく。


「一度お父様から、聞いた事あるわ。第二王子は難病を患い、幼い頃からずっと地方の離宮で療養されているって……」

アナが知っている第二王子の事はそれだけ。

公の場所に姿を見せる事はないため生死すら分からない。アナだって兄に言われるまでその存在を忘れていた。だから”亡霊王子”なんて呼ばれるのだろうか。


「あぁ、そうだよ。でも病を克服。そのあとに自ら遠征軍に志願し、デシエルトの侵略阻止に一役買ったそうだ。その功績が認められ、半年前に騎士団の総団長に任命。その時に王都に戻って来られたんだよ…」

小声で話すアナの言葉を引き継いでマリウスが頷くと、彼は妹知らない事を語り始めた。

王都から近いと言えど、クロスト子爵領は地方の農村。入ってくる情報など限られている、下手をすれば歪んだ形で伝わった情報の方が多い。

その点、騎士として王都で暮らすマリウスは世情に通じているからこそ、彼の話には信憑性があった。


「そうなの?半年前に戻られてるの?でもそれなら国をあげて盛大なお祝いとか、任命式とかあるはずなのに。そんなお祝いめいた事、最近なかった様に思う……」

ふと湧いた疑問を小声に出して、兄の方を見れば彼は嘆息して再び口を開く。


「ランバート殿下が体調が良くないからって、全部断ったそうだ。それに公の場は好きじゃないって噂がある。今夜の誕生日祝いは、体調悪くないみたいだけど。引きこもり好きの誰かさんと一緒だな、お兄ちゃんは本当に心配だよ」

疑問は兄の説明でそれなりに納得することができた。

しかし茶化す余計な一言にアナは頬を膨らませ、隣にいる兄を横目に睨み抗議。一方の彼は下手な泣き真似を見せ、妹が頬を膨らませ拗ねる姿を楽しんでいるようにも見える。


「もぅ、マリウス兄様。すぐそうやって茶化すんだか……から。………え?」

茶化す兄に対して文句を声を大にして言いたいのに、国王が挨拶中なだけに我慢を強いられた。

そんな中でアナは視線を感じ、周囲を見る。感じる視線の主を探していると、壇上にいるランバートと目が合う。遠目に見える彼は睨みつける様にして此方(こちら)を凝視していた。その視線の強さに背筋が震え、動揺する一方アナは既視感がある視線だと疑問に思う。


(な、……何故、私を見るの?)

疑問と不安が湧きあがったその瞬間、再び大きな歓声と拍手が広間に響き渡りアナはハッと我に返る。どうやら国王の挨拶が終わったらしく、来賓達が口々に国の安泰と国王を称えるえている。


「アナ、どうした?」

「え、あ。……なんでもない。ほら、他にも挨拶する方いらっしゃるんでしょ?」

「………ん、あぁ。そうだな」

マリウスから突然声かけられ、彼は怪訝な表情でアナの顔を覗き込こんでいた。アナは笑って誤魔化しマリウスを促しながらもこっそりと壇上の方をもう一度見たが、ランバートは既に此方を見ておらず側近らしき人物と話していた。目が合った事など無かったかの様子に、アナは”あれは偶然”と気持ちを切り替えるのだった。




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