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左耳は秘密の声を聞き逃さない  作者: 真里谷 紅緒
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3.迷いの森と、精霊

読者様には感謝(平伏)

引き続き、誤字脱字や拙い文章にお目汚しはあるかと思いますが、ご容赦いただけますと幸い。


 長く続く馬車道を風が吹き抜けると陽光を浴び透けた葉が、宙を舞い踊る姿はとても綺麗だった。小鳥の高い鳴き声が響くがそこに騒々しさはなく、長閑な景色が広がっている。しかし、そんな森も雨が降った後は必ず霧が濃くなり、長く続く一本道は姿を消す。白い悪魔に支配された森は、人を惑わし誤った道へ誘うことから『迷いの森』と呼ばれていた。


「本当に狼なんて出たのかしら……信じられない。そんな気配なんてないのに」

新緑が生い茂る馬車道を歩きながらポツリとアナが言い放ち、穏やかな辺りへ視線を配る。同じ歩調のミアが、その声に反応し地面の匂いを嗅ぎ続けて鼻先を上げ、周囲の匂いを嗅いでから感じ取ったことを呟いた。


『微かだけど、知らない獣の匂い残ってる……』

「……それってやっぱり?…、遭遇しなければ、いいけれど」

ミアからの返事に、彼女が何を言いたいのか察し嘆息するアナ。エリック達の前では大丈夫と、わざと呑気な返事をし出かけてきたが今更遅い。エリックの忠告を押し切った自覚はあった、でもアナにはそうしてでも森へ出かける理由が合ったのだ。

一行はバロス村から出て、森の馬車道を王都方面に向かって歩いていた。


『心配すんなー、がっちり、ばっちり俺様がハニーの事を守ってやんよー。任せな。』

「ギュールズ、ありがとう」

不安に駆られ難しい顔をしていたアナに左耳元で、明るく強気な声がする。

肩に留まっていたカラスがご機嫌で『カァ~』と鳴く。得意げな態度に思わず笑みを零しアナは感謝の言葉を口にする。彼女の笑顔と感謝の言葉にギュールズと呼ばれたカラスは照れに、照れ漆黒の翼を広げ有頂天となった。


『一番、信用ないわね』

『むしろ狼と遭遇したら、真っ先にギュズが逃げるだろ』

『あ゛?……もういっぺん、言ってみろ。ミア、エングース。その喧嘩買うぞ』

そんな有頂天になって居るカラスをミアが辛辣なひと言でばっさりと切る、続けてミアの反対側を手綱を引かれ歩く鹿毛の馬が、鼻を鳴らし冷やかに追い打ちを掛けた。ギュールズはアナの肩から飛び上り、馬の目ので羽をバタつかせ憤慨する。


目の前で騒々しく鳴くカラスなど、眼中にない様子で大人な態度を崩さないエングース。寧ろうるさいと言わんばかりの態度でふい、と顔を背けた。その態度が火に油だったのか、更に漆黒の羽をバタつかせギュールズは抗議を続けた。そこへ間延びした暢気な声が割って入ってくる。


『エングースの意見に、チーズひと欠片』

『僕もー』

『じゃあ、僕も』

『こら、食いしん坊三兄弟。それじゃ賭けになってねーだろーがッ』

エングースの背中。丁度、鞍の上に三匹のネズミがちょこんと座っている。『チューチュー』可愛らしく鳴きながらパン欠片を小さな手に持ち、頬を膨らませ咀嚼していた。三匹ともまん丸で可愛らしい姿だが、一匹だけぽっちゃりのネズミがおり、その姿はまさに毛玉だった。

緊張感ゼロの状態で食事をするネズミ達に、ギュールズが即座に苛立った声で突込みを入れたのは言うまでもない。


「ふふふ、本当にみんな、仲良しだね」

『アナ、これは仲良しと言わねーぞ。寧ろ俺様、いじめられている。可哀想な俺様を慰めてくれマイハニー』

彼らのやり取りを黙って見ていたアナは、我慢できずに吹き出し笑う。肩へと再び戻って来たカラスは芝居じみた態度で不満を漏らすが、ここぞとばかりに嘴でアナの三つ編みを軽く啄み甘える姿に、流石に苦笑した。右耳には彼らの賑やかな鳴き声しか聞こえないが、左耳には彼らの話し声がアナを和ませ狼への不安など消し去った。カラスの喉元を指先で擽りながらも、彼らの声が聞こえる様になった頃の事をアナは思い出していた。


あの頃のアナは両親の死を切っ掛けに好奇心旺盛で活発な少女は鳴りを潜め、常に陰鬱な表情で部屋に引きこもりがちになって居た。

両親の死を悼み、悪夢に魘され続ける毎日。左首筋に残る不気味な刻印を見れば、あの時の恐怖が蘇り悲鳴を上げ部屋の隅で体を丸め怯えていた。状況は良くないと分かっていても兄や使用人達は、腫物に触れる様な態度にしかならなかった。アナが痩せ細り体調を崩しだすと、命の危機を感じエリック達は本気で焦った。そんな時にエリックが親とはぐれた子犬と、アナを引き合わせたのだ。


それがミアだった。


小さなミアは初めは警戒し、怯えた目で此方(こちら)を見つめていた。一緒に生活する中でアナの存在が危険ではないと認識すると、指を舐めて甘え、顔をすり寄せてくる姿はとても可愛かった。初めて触ったミアの身体はフアフアで暖く、膝の上で眠る姿にアナはミアを守ってあげなくてはと庇護欲が溢れた。


以来アナがミアの世話をするようになり、一人と一匹はどこに行くのも一緒ずっと傍にいるようになった。そんな日々の中で突然、左耳だけに「アナ」と人の言葉で名前を呼ぶミアの声を聞こえたのだ。

初めは左右の耳で聞こえる声が異なる事に混乱した。でもミアに声を掛ければ彼女は返事し、会話を続けられるようになった。やがて左右で異なる声が聞こえる生活に慣れると、自然に聞き分けられるようになった。ミアの世話を切っ掛けにアナは引きこもりの生活から脱し、次第に健康を取り戻していったのだ。外へ散歩に出かける様になると、他の動物達とも会話するようになった。怪我をしていたり、行き場を失った子達と出会えば、知らぬ振りなどせずアナは積極的に彼らを助けた。助けられた彼らはアナに懐き、中にはアナの傍に居る事を選択した子もいた。


それが彼らである。

馬のエングース。

カラスのギュールズ。

ネズミ三兄弟のトト、ナキ、ケト。

そして現在は、屋敷で留守番中の猫のサンディ


動物達と一緒に生活する中でアナは自覚する、自分の左耳は秘密の声を聞ける耳になったのだと。

ただ秘密の声を聞こえる様になった原因を知った時は、酷く落ち込んでしまったが。


『ナ、……アナ、……アナベル!』

「えっ、あ……、なに?」

物思いに耽っていてるとぐん、と何かスカートを引っ張られ、自分を呼ぶ声に我に返る。


『…………――池に行くなら、こっちだ』

「ぇ、あ、そうだね。ごめん。ぼーっとしてた」

周囲を見ればミアがスカートの裾を引っ張りアナを先を進もうとしている引き留め、エングースはアナの顔を心配げに覗き込んでいた。ネズミの三兄弟はアナから貰ったパンに、未だ夢中のようだ。

エングースの言葉に自分が、どこにいるのかを思い出す。ふと、視線を上げ馬車道に向けるれば遠くの方にこの国の王が住む城が見え、今度は森の方へ視線を向け木の根元に目印のような、何かで傷をつけた痕を見つけると自分が別れ道まで来ている事に気づく。

一行は王都まで続く馬車道を進むのではなく、目印のある場所から道のない森の中とへ入っていく。


『俺様との甘いアバンチュール想像してたんだろ、ハニーは本当に照れ屋だなぁ』

「ちょ、ちょっとギュールズ、何言ってるの。変なこと言わないで、もぅ」

森の中を再び歩きだした瞬間――格好つけ自惚れた発言をするギュールズに、アナは変な羞恥を感じ慌てて彼に抗議する。それを見たカラスはアナが照れていると勘違いし、器用に小首を傾け自己陶酔する。


『馬鹿カラスと禁断の恋なんて、ありえないだろ。アナ気にするな』

エングースが即座に辛辣な言葉で、調子に乗るカラスをばっさり切り捨てる。


『エングース、てめぇ。今日こそ決着つけてやろーじゃないか』

再び憤慨したギュールズが肩から離れ騒ぎ出すと、対するエングースは相手にしないといった様子で顔を背けカラスの存在を無視。手綱を握っている主を先導することに専念しだした。

アナは苦笑しながらも一羽と一頭の争いにそろそろ仲裁に入らねばと思った矢先、代わりにミアが呆れた様子で一言放つ。


『ギュズ、静かにしないと後でサンディに、そのご自慢の羽むしり取ってもらうわよ』

『なっ、凶暴猫。…………すみません、静かにします』

効果覿面、ミアの一言で羽をバタつかせる動きを硬直させたあと、ギュールズは凄い勢いで近くの枝に逃げた。現在は留守番中のサンディに羽を毟られ丸裸になった恥ずかしい自分を想像したらしい。

殊勝な態度になったギュールズに苦笑しつつもアナは、ミアと目が合うと頷き感謝の意を送った。


 ――――※―――――――――※―――――――――※―――――――――


道なき森を奥へと進めば、苔やキノコが生えた倒木。

背丈が低めの木や、果実の実った木、そして足元には様々な草花が沢山自生している。

そしてその中から必要な薬草や、木の実に果実、キノコなど薬に使う材料や、自分達の食事の材料などを集める。一緒に付いてきてくれる動物達(みんな)も、率先して自分達の出来る事を手伝ってくれていた。

特にネズミ三兄弟は食いしん坊な性格を活かして薬草や、木の実を見つけるのが得意でとても助かっていた。瞬く間に持ってきた籠の中が薬草や、木の実で一杯になった。


「これでよし、っと。重いのに、いつもありがとうエングース」

エングースの鞍に採取した物で一杯の長籠を固定する。そして労う様に鼻筋や首筋を撫でた。


『これくらいは、大丈夫だ。問題ない』

『僕たちも頑張ったー』

アナに撫でられエングースが目を細め心地よさそうにしていると、のんびりとした声が聞こえアナが視線を向けると、鞍の上で今度は拾った木の実を食すネズミの姿が目に入る。食べているのはぽっちゃりしているナキというネズミで、残りの二匹のトトとケトは顔を洗ったり、毛づくろいしたりしてナキを揶揄う。


「ナキ、食べ過ぎよ」

『ナキ、たべすぎー』

『ぽっちゃりー、ナキ』

『わわ、くすぐったいよアナ。ぼ、ぼくまだ食べる』

困った表情で苦言を零しながらも、アナが指先でナキのぽっちゃりとしたお腹の分厚い毛皮へ指を埋め、こちょこちょと撫でる。まんまるで指先が毛皮に埋もれるこの感じが、堪らなく可愛いのだが…。流石に食べ過ぎなのだ。アナに指でお腹を擽られ、丸い体がころんとひっくり返っても手に持った木の実を離そうとしない所も流石だ。


それから一行は更に、森の奥へと足を進めた。

緩やかな登りの地面を茂みや木々の合間を縫って歩き進めると、水の流れる音が聞こえだす。そこには自然にできた小川が流れており、今度はそれに沿って上流へと進めば突然開けた場所で出る。

そこには切り立った崖の(ふもと)で小さな池があった。落石だろうか苔が貼りついた巨大な岩が池の周囲にあり、正面に見える岩と岩の間からは水が小さな滝を作り、池へ流れこんでいた。

綺麗な青緑色の水面には木々や、空が逆さに映り、葉の隙間から差し込む陽の光を受けてキラキラ輝いている。


「スイネ、遊びに来たよー」

池の水際に立ちアナは、大きな声を上げ名前を呼ぶ。

水面に紋が広がっていき水中に大きな影が見えた瞬間、突然巨大な魚が水飛沫をあげて高く飛び上がる。

水色の鱗に覆われ、尾びれ背びれはオーガンジーの透けた布の様に柔らかく、陽の光を浴びてキラキラと光沢を放っていた。そしてぽん、と小気味のいい音を立てると煙のようなものに巨体を包む。


「アナベルー、待ってたわー」

煙の中から声が聞こえたかと思うと水色の長髪が特徴的な、女性が飛び出してきて勢いのままアナに抱き着いた。整った顔立ちは美女と呼べるもので透き通る絹のような白い肌。しかし手足には水色の鱗が模様の様に点在しており、耳は魚の尾びれの様に尖っていた。

人の姿をしていたとしても、人と呼ぶには違和感がある姿だった。


「わ、来るのが遅くなってごめんね。スイネ」

「いいのよ。気にしないで。でも会いに来てくれて嬉しいわ」

突然飛び出して来た女性の熱烈な歓迎に、少し圧倒されつつもアナは彼女と顔を見合わせ軽く謝罪、そして久しぶりの再会を喜んだ。それは彼女も同じらしく、笑顔で応えてくれまたぎゅっと、アナを抱きしめてくれた。


「みんなも久しぶりね。エングース今日も男前ね、ミア…益々毛並が綺麗よ。食いしん坊さん達は相変わらずみたいね」

アナの頬に親愛のキスをひとつすれば、傍に動物達に気づくと順番にキスをしたり、モフモフの毛を撫でたり、三兄弟に至ってはまん丸な体つきを見て笑みを深める、指先でプニプニのお腹を突いた。それに応えるようにして動物達の方も目を細め、顔を摺り寄せたり、尻尾振ったりと愛想よく挨拶していた。


『おい、俺様だけ挨拶なしか。扱いが雑だぞスイネ』

「あら、ギュズいたの」

『むっきー、みんなして、か弱い俺様いじめて、楽しいのかー』

「楽しいに、決まってるじゃない」

木の枝と枝の間を器用にぴょん、と跳び移りながらも馬の鞍の上に辿りつくと案の定拗ねた態度で突込みを入れるカラス。スイネはしれっと、悪びれる事なく塩対応を続ける様子は、やはり彼の機嫌を更に損ね羽をまたもやバタつかせる。皆ギュールズの反応が面白いのかすぐに揶揄いがちなことに、アナ嘆息して。


「はいはい、ギュールズ。怒らないでね。スイネ、クッキー焼いてきたの。一緒にお茶しよう」

『ハニー。皆が俺様をいじめる』

「あら、素敵。アナベルの作った、クッキー好きよ」

仲裁に入れば、待ってましたとばかりにギュールズは機嫌を直し、アナの肩に飛び乗り嘴を摺り寄せてくる。そしてアナは馬の鞍に引っ掻けていた鞄の中から、用意して来た小さな金属製ポットや、木の器などお茶セットを取り出し、更にクッキーの入ったバスケットをスイネに見せれば彼女も笑顔で頷いてくれ場の雰囲気を切り替る事が出来た。


アナが兄の忠告を押し切り森に来た理由が、彼女……スイネに会うためである。

そしてスイネは『精霊』と呼ばれる存在で、代々クロスト子爵家と契約を交わしている水の精霊だった。


先の大戦において――長期化した争いは、多大な犠牲を生んだ。

弱い者は死に倒れ、発展し築きあげたものは破壊され荒廃、『神獣』『精霊』は住処を失い人との共存に疑念を持ちだす。争いばかり繰り返す人が住処を奪ったのだと憎悪しだす者が現れ、人の前から少しづつ姿を消していった。同時に人は『魔法』が使えなくなり、再び豊かな生活を取り戻すのに、かなりの時間を費やすこととなったのだ。年月が過ぎていく中で『神獣』『精霊』といったものを目にした人は減り伝説のような存在となり、逆に『神獣』や『精霊は』化け物と恐れられるようになった。また『魔法』を扱う者は異端者として忌み嫌う風潮が今では強くなってしまった。


そんな中でスイネは、変わらずクロスト子爵家の人間と契約を交わし続けてくれていた。

クロスト子爵家が彼女の住処を守り、彼女は『水の精霊』の力を分け与えるという持ちつ持たれつの関係。

母という契約者を無くした彼女は、次の契約者としてアナを指名したのだ。

亡くなった両親の思いに報いる事が出来ると信じ、迷った挙句アナはスイネと契約交わすことにする。

そしてアナは母が受け継いでいた薬師しての豊富な知識以外にも、『精霊』と契約を交わしたことで彼女の力の一部を使うことを許されたのだ。


倒木を椅子の代わりにして、腰かけながらも木の器に入れたお茶を飲みクッキーを食べささやかなティータイムを過ごした。動物達も池の水を飲んだり、草を食べりたり、お昼寝をしたり自由に過ごしていた。

スイネと他愛無い話をし、笑い合い、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


「そうだ。スイネ……。今日も、お水分けてもらってもいい?」

「もちろんよ、アナベル」

鞄の中からコルク栓が付いた空っぽの瓶を持ってくる。そしてどこか申し訳なさそうにアナが、スイネに手渡すと彼女はコルク栓を抜き、人指し指を空っぽの中へと差し入れ目を閉じ集中しだす。すると、何もない瓶の底から澄んだ水が沸きだし空っぽだった瓶を水で満たした。


「さぁ……どうぞ、アナベル」

「いつもありがとう、スイネ」

感謝の言葉を口にしアナは頭を下げ、それに対しスイネはにっこりと微笑み返す。

そして最後に彼女は、必ず確認の言葉を口にする。


「いいのよ。貴方は私の契約者なんだから、()()()()使う権利がある。でも、約束は忘れないでアナ」

「ええ、大丈夫。忘れてないわ」

スイネの力の一部――それがこの水『生命(いのち)の水』だった。

薬草から薬を作り出す時にこの水を使って作れば、薬草などの効果を高め傷や病気の回復力が増すというもの。母・マリナが慈善活動の際に使っていた『魔法』の正体は、水の精霊であるスイネから授けられた『生命の水』だった。ただ使用する時に忘れてはいけない約束がある、それは人に『生命の水』を直接飲ませない事。

なぜ人が『生命の水』を直接飲んではいけないのか、理由をスイネに尋ねると「毒になるからよ」の簡素なひと言だけ。つまり『生命の水』は使い方次第で、薬にもなり、毒にもなるという二面性を持っていた。


(今度こそ、約束は守られければ…)

アナは胸中で呟き、自分に言い聞かせた。

『約束』という言葉は、アナの中で未だに癒えない心の傷として残っていた。


それからしばらくすると太陽が西に傾きだす。

森が暗闇に包まれ帰り道を見失う前にアナ達は帰らなくてはならない。

名残惜しいが今日の楽しいティータイムはここまで。

手渡された瓶にしっかりとコルクで栓をして、再び鞄の中へと戻すとアナはスイネに別れの挨拶と再会の約束をして池を後する。帰るアナをスイネの表情はどこか寂しそうに見送っていたが、一緒には行けない。

彼女の本当の姿は巨大な魚、この池から離れて生きることは出来ないのだ。


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