第三章1 『使用人の朝は遅く』
ファントから帰還した翌日の朝。ユーキはあるものと戦っていた。
実体のないそれ。言い換えれば自分との戦いだ。弱い自分を押し殺し、打ち勝つ勝負。
普段は起こらないのだが、今日は体が疲れていたのだろう。久々に感じたそれだった。
「……眠すぎる。……布団から出たくねえ。あと五分どころか一時間でも寝れる。……寝よ」
長くもない葛藤の末、自分に屈したユーキ。再度寝る為、自分の身を布団に包む。
まだ目が覚めきっていなかった為、直ぐに眠りに入るユーキ。だが、それを遮る声がユーキの鼓膜を震わせる。
「……ユーキくん。物凄い体たらくですよ」
「仕方ないだろ……って、居たのかよ!? デジャブ!?」
自身のプライベート空間を見られたことによる恥ずかしさと共に、跳ね起きる。その姿は外敵から身を守る為に布団を両手で手繰り寄せ、身を包んでいた。
「朝の給仕の為に呼びに来ました。と言ってもこの時間だと遅れていますけど」
「じゃあ俺なしで進めてくれよ。どうせいけるんだろ?」
ユーキの問いかけにコクっと小さく頷き、即答するシオン。普通ならこれは悲しむべきことなのだが、今のユーキにとってはそっちの方がありがたい。
シオンに自分の不要さを訴えたユーキ。もう大丈夫だろと眠りにつく姿勢をとる。
「ですが、それとこれとは別です! 姉様に連れてこいと言われたので! 早く行きますよ!」
眠ろうとするユーキを包む布団を捲るシオン。
「俺は疲れてるんだよ! 眠いんだよ!」
「駄々こねないで下さい! もう無理矢理連れていきますよ!」
守るものを失ったユーキ。その無防備なユーキを担ぐシオン。
シロが鬼族ということはその妹であるシオンも鬼族だということ。その姿からは想像できない程の力を有しているシオンは軽々とユーキを持ち上げる。
「やめろ! やめてくれ! 行くから行くから! 自分で行くから下ろしてくれ!」
「駄目です。ユーキくんは信用できません!」
女の子に持ち上げられている恥ずかしさから自分の足で向かうことを懇願するユーキ。だが、時すでに遅し。ユーキの信用度の低さも相まって、その願いは叶わなかった。
じたばたと力ずくで抜け出そうとするがそれすらも叶わなかった。
シオンに担がれたユーキは厨房ではなく食堂に連れていかれる。
食堂に着くといつものメンツが座っていた。
「あれ? 朝の給仕って言ってなかったか?」
「あんなやり取りをしている間に姉様なら終わらせていると判断したのでこちらに連れてきました。ユーキくんが居ないと食べられませんから」
シオンのシロに対する信頼はユーキの比ではなく、実際にその判断は当たっていた。
ユーキとシオンが着いて早々、そのようなやり取りをしていると他の声が飛んでくる。
「……ユーキ、おはよう。それで一つ聞いてもいい? ……何でそんな格好なの?」
食堂に入ってきたユーキたちの異様な姿とそれを何とも思わない平然な姿に質問をするのを抑えられなかったシルヴァがユーキに問いかける。
ユーキが小さく頷いたので、本題である疑問を投げかける。
「それはもう慣れた」
「へえー、慣れたの……って質問と答えが噛み合ってない!?」
返ってきた答えに最初はへえー、と頷いたが、話の食い違いに気付き、珍しくツッコミを入れる。
ツッコまれたユーキは何も言葉を返さずにいると、シオンがユーキを下ろす。
やっと下ろされたユーキは大きく欠伸をしながら、自分の定位置に座る。
その間、誰も言葉を発さず、誰もこの場にツッコむ者もおらず、その異様さにシルヴァはただただ心の中で首を傾げるのだった。
「それではユーキ君も揃ったところだし、朝食としようか」
ロアノスのこの言葉で皆の手が動き出す。相変わらずラックは机の上に座っており、衛生上どうなのだろうかと疑問を持つ。
食事が始まって一番最初に言葉を発したのはロアノスだった。
「シロから聞いたけどもユーキ君、ファントではいい活躍っぷりだったそうだね」
「まあ俺も頑張ったけど、セルピアいわく一番はシロらしいぞ」
ユーキは苦笑いで返す。
自分は頑張ったつもりだが、セルピアの目にはそれら全て映らなかったようだ。
「そのようだと彼女からの評価も得たようだね。しかし、大罪衆の司教を撃退したそうじゃないか。それもかなりの深手を負わせて」
ユーキの苦笑いに微笑みで返すロアノス。そして、ユーキのファントでの行動を賞賛する。
「そういえばユーキ君。司教撃退に貢献したという例の剣は?」
ファントであったことは恐らく昨晩にシロから伝えられている為、おおよそ把握できているロアノス。
ファントでの戦いに話が向いた為、思い出したかのようにロアノスが口に出す。
「魔剣のことか? それなら今は持ってないよ。剣持ち歩くような物騒な奴にはなりたくないからな」
ユーキは首を横に振りながら、おおよその自部屋の場所を示す。
日頃から剣を差しながら過ごすのは少し抵抗があるのは事実であり、なおかつ生活において魔剣が邪魔になるのは明白である。
なので、基本屋敷での生活では持ち歩くのは止めようと昨日の竜車内で決めた。
しかし、それに首を傾げ、食事の手を止める少女が一人。
「あれ? ユーキって鞄の中に何か持ち歩いてなかった?」
「……痛いところを。でも、あれはノーカンってことで。不慮の事故なんで」
シルヴァの指摘に返す言葉がないユーキは素直に認め、ただ忘れてくれと頼む。
「魔剣を得て、司教に勝利。そして、ファントを救ったとなると、ユーキ君、もしかすると王城にお呼びがかかるかもね」
ユーキがシルヴァに懇願していると、横からロアノスが口を挟む。と言うより、話を戻した。
ユーキは「なぜ?」と、首を傾げる。大まかな予想はつくが、一応問いかける。
「この頃、大罪衆の襲撃が激化している。その中で司教らと対峙した者は能力などの情報を知る手がかりとなる。だが、実際には生還した者が少ないからね。君は重要な情報源となる」
「まあ、そんなことだろうとは思ったけど。ならシロの方が情報源としては優秀じゃないか? 大罪人って人相は分かってないんだろ?」
「シロもそこまでちゃんと見た訳じゃないよ。まあまだ記憶にはばっちり残ってるけど」
基本のスペックは十分高いシロ。記憶力もその例外ではない。
「ユーキ。色欲において外見の情報は意味を成さないよ。彼女の能力はそういう系の理を全無視する力なんだから」
ユーキとシロの会話内に補足するラック。ラックに言われて図書館での説明を思い出したユーキ。
色欲の大罪人の能力の一つは自身の外見の変化。それにより惑わされたのは言うまでもない。
なので、シロの証言はなんの情報にもならないということになる。
「ならシロより俺の方が情報的価値はあるってことになるのか。納得納得!」
ユーキは頭を上下しながら話の結論に達した。
内容を全て理解できたユーキは別の話に路線を変える。
「そういえば、ファントの結界だったっけ? あれの件はどうなったんだ?」
朝食を食べ終わったユーキが出した話題は大罪衆の襲撃の際に消滅した結界について。
外からの侵入者を防ぐ為の結界がなくなってしまったのはセルピアたち、漆黒の城の住人にとっては大きな損害だろう。しかも、それを直せるのはロアノスだけだと言うのだから早急に向かう必要があるだろう。
「近々向かおうと思っているよ。あの街には私の大事な友人たちもいることだから、私にとっても早いに越したことはない」
「友人いるなら今度はちゃんとした結界張ってやれよ」
今回、城の敷地内に司教の侵入を許したのは結界の特性故だった。その為の忠告。だが、ロアノスはそれに難しい顔をし、カトラリーを置く。
「結界とはそう簡単なものではないんだよ。結界とは特性の足し引きを考えて十を作り出す、一種の魔術。だから、あれもこれもなどとは言ってられない」
「そうなのか。だから少しセキュリティ甘かったのか」
「だから、結界にあれ以上の性能を求めることはできないよ。まあ、私が組んだものだから王国一の結界だとは保証できるけどね」
ロアノスは誇らしげにする様子は一切なく、そう断言する。魔法関連に対しての絶対的自信が見える。
結界についての説明が終わり、ロアノスは再度、料理に手をつける。
「まあ何にしろ、今のファントじゃ襲撃に耐えられる気がしないから良いの張ってやれよ」
「誰目線で言ってるの!」
ユーキがロアノスに贈った言葉に口を慎んでいたシロがツッコミを入れる。
別にボケたつもりはなかったユーキは、シロがやっと喋ったことも相まって驚きの表情を浮かべる。
「そういえば、ユーキ。あの時言ったこと覚えてる?」
しばしの沈黙の後、ユーキに問いかけるラック。
ユーキは「あの時?」と首を傾げ、分からないことを伝える。
「ほら、あの時だよ。あの時! 覚えてないの? あ・の・と・き!」
執拗に、あの時のみを連呼し、重要な情報は一切与えないラック。
ユーキはその間、どの時だろうかと自分の記憶を辿っていた。
「ああ、あの時なあの時! あの時だよな!」
思考の結果、行き着いたのはオウム返しで話を合わせ、詳細をラックの口から聞き出す方法だった。
「もう! 思い出せてないでしょ!」
ユーキの画期的な策。だが、その思惑はあっさり見透かされる。
ラックはユーキの下に飛んでいき、耳元で囁くように言葉を続ける。
「あの夜、月下で交わしたじゃないか。二人だけの約束を」
「約束……あっ、交わしたな。ああ、確かに交わした!」
耳元で囁かれたのはユーキの身に覚えのないこと。少し反応が遅れてしまったが、ラックのボケがまだ続いてることに気付き、ユーキはその流れに乗る。
ラックの囁きが周りにも聞こえていたのか、ユーキがラックの言葉に頷いた後、シルヴァが反応する。
「いつの間にそんな約束してたの!?」
「シルヴァ様、これらは恐らく狂言です。でないと二人だけ、の部分に矛盾が生じます」
シルヴァの反応に即座に、的確に指摘し、ユーキとラックで作った流れを断ち切るシオン。
「いいや、彼らの言っていることは本当だよ。私は昨晩、廊下で足音がしたのを聞いたからね」
「そうだったのですか。では、先程の発言は取り消させてもらいます」
だが、ここでエアがユーキたちの助太刀をする。
エアもおおよその予想がつき、茶番側に乗ることにしたのだろう。その証拠に顔が嘘くさい。
エアの助太刀の甲斐あって、シオンは引き下がる。そうなると残るのはユーキたちがした約束の内容だ。
それに興味を示し始めたシルヴァとシオン。そして、これら全てが茶番だと気付いているロアノス、シロ、エアは彼女らの反応をただ楽しんでいる。
「それでどういう約束をしてたの?」
「シオンも気になります!」
ここまで興味を示されると後に引けなくなってくるユーキ。舵取りは全てラックに任せる。
だが、この流れを作り出したラック自身、ここまでの話になるとは予想はしておらず、オチを考えてなかった。
外野もこの流れの最後を楽しみになりだしており、「嘘でした!」のみで終われる時期はとうに過ぎていた。
ラックはユーキに目配せでSOSを送る。だが、ユーキにも打つ手がない。
ユーキは先程よりも更に思考を巡らせ、この場においての対処法を模索する。
しかし、対処法は思い浮かばなかった。だが、他のことを思いついた。いや、思い出せた。
ユーキはそれと同時に「あっ」と小さく声が漏れた。
「ユーキ、どうかしたの?」
「いや、思い出せたんだ」
シルヴァの声に明確な答えは示さずに答えるユーキ。それに首を傾げざるを得ないシルヴァとシオン。
この時点でこの二名以外はユーキが何を思い出したのかを理解した。そして、この茶番にオチが訪れないことも理解した。
「あの時のお詫びのことか。魔法関連とか何とか言ってたやつ」
「そう。それのこと。僕が君に伝えたかったものだよ。これを知れば戦いも楽になる」
ラックが先程から連呼していた、あの時を思い出せたユーキ。それに乗っかり今の流れから逃れるラック。
「えっえっ、さっきまでの約束の話はどうなったの!?」
「そうですよ! 月下に二人で何を交わしたのですか!」
ラックが逃れた流れにまだ乗り続けるシルヴァとシオン。
だが、ユーキとラックはもうそれに触れたくはない為、無視して話を進める。なので彼女ら二人は悶々とするのだった。
「ユーキに教えたいのはさっきも話に出てた魔術について」
「魔術?」
聞いたことはある言葉だが、ユーキの中では魔法と同義だと勝手に解釈していた為、首を傾げながら問いかける。
この辺りで全員が朝食を食べ終わっており、エアが椅子から立ち上がる。
「私はもう失礼させてもらうよ。茶番も楽しませてもらったし」
言葉とは裏腹に顔はご満悦ではないエア。彼女は金髪のサイドテールを揺らしながら、食堂を後にする。
エアが退出し、話が一度途切れてしまった為、ユーキが再度質問する。
「で、魔術ってのは?」
「それについては僕よりロアノスの方が説明に向いてると思うから、ここはよろしくー」
ユーキの質問の解答権を即座に放棄するユーキ。
解答権を丸投げされたロアノスは顔色を変えることなく、述べ始める。
「魔術とは例えると編み物のようなものだよ。攻撃を防ぐ効果や魔法を反射する効果、その他数多ある特性を付与した糸を編み込み、一つの布を仕立てるようなものなんだよ。先程話に出た結界も魔術の一種だと確か話したはずだね」
「確かに戦闘楽になりそうだし、なおかつ俺が好きそうな話題だ! ……でも話聞く限り難しそうだな」
ロアノスの説明を受けて、魔術に興味を示し、興奮するユーキ。だが、その反面、説明から難しさを察する。
「何もそんな顔をする必要はないよ、ユーキ君。私からすればあんなもの、ちょちょいのちょいだ」
「こういう時に擬音語使う奴の言うことなんて信じられっかよ! これだから感覚派は……」
おおよそロアノスの顔立ちからは出ることはないだろう擬音語にユーキは肩を落とし、落胆する。
かくいうユーキも感覚派だが、同族嫌悪というものだろう。相手が自身と同じだとしても、ため息をつくのはまた別の話。
「ため息ついても仕方ないわよ。ロアノスには異能があるんだから」
「シルヴァ君の言う通り! 私には生まれ持った魔法の才があるのだから、そう見るからに落胆するのではないよ。しかし、君も持っているのだろう?」
ユーキに対するシルヴァの慰めにより、ロアノスの口ぶりが少し軽くなったように感じる。
その口ぶりのまま、ロアノスは問いかける。
始め、ユーキは「何を?」という感じで返したが、その際にシロと目が合い、この問いかけの意味を理解した。
「ああ、持ってるよ。創造をな」
ロアノスの待っていた答えをカミングアウトしたユーキ。
特に隠す必要はなく、元より話そうと前から思っていた為、すんなりと口に出す。
しかし、これを話していいのかの判断をエアの顔色でしようとしていた為、エアが先に部屋から出たのは誤算だった。
「えっ? 創造ってどういうこと?」
ユーキのカミングアウトは分かる人にしか分からず、詳細を掴めないシルヴァは首を傾げる。シオンも内容は理解できていないようだ。
「これはつまりあれかな? ユーキは加護だけではなく、異能まで有していたってことかな?」
娘とは違い、察する能力が高かった父。ほとんど情報を与えなかったユーキの言葉で内容を全て理解できていた。
「そういうこと! セルピアとシロには話したんだけど、いっそのこと全員にってことで」
ラックの言葉に指を鳴らして、指し示すユーキ。
シルヴァとシオンは内容をまだ落とし込めておらず、困惑した表情でフリーズ状態。
先に拘束が解けたのは金髪の少女だった。
「加護も異能もって……なんで早く言ってくれなかったの!」
シルヴァの第一声はユーキの予想通りであった。
ユーキがそれに返答しようとすると、硬直していたもう一人の少女も声を上げる。
「そうですよ! 異能について話してた時に言えば良かったじゃないですか!」
これも予想できた反応。ユーキが相手の立場なら口に出していた台詞だ。
「機会を伺ってたんだよ。ちなみにあの時は加護同様知らなかった。隠すつもりなんてなかったよ」
ユーキは用意してたかのように返答した。言及に慌てる素振りすらなかった為、ユーキの言葉は二人に信じられた。
「それでどのような異能なんだい? おおよその検討はつくけども」
「俺自身よく分かってねえよ。ファントの戦いでも使いもんにならなかったし」
二人に続き、ロアノスからの言及。
ユーキ自身、それについては一切情報が与えられていない為、お手上げのポーズを取り、首を振る。
ロアノスはそれに「そうかい」と小さく返事をした。
「そんなことよりさ! 俺は魔術について知りたい! 教えてくれるんだろ? 先生」
異能について中身のない説明を終えたユーキは目の色を変えてラックを見る。
ユーキはすでに新しい知識を取り込みたい、新しい技術を学びたい、という好奇心に駆られており、目はキラキラと光を帯びていた。
魔術という単語はそれ程までにユーキの興味を引いていた。
「お礼だしね。魔法の時よりもちゃんと教えるよ」
「自分でちゃんとしてないって認めちまったよ……」
ラックの言葉にため息混じりのツッコミをしているが、頭の中は魔術一色。今のユーキにとって過去のことなどどうでもいい。
「ということでロアノス。今日一日、もしかしたら明日もするかもしれないけれど、ユーキを借りてもいいかな?」
自分から日にちが延びるかもしれないと言うラック。そこから今回は真面目に教えることが伝わる。
ロアノスは自身で答える前に両脇に座るシロとシオンと顔を見合わす
ロアノスと顔を合わせた姉妹は次に姉妹で顔を見合わせ、そして頷く。
「別に問題ありません。ユーキくんが抜けたところでそれ程大差はありませんしね」
頷きの後、シオンが口を開く。予想だにしなかった突然の戦力外通告に悲しさを露わにするユーキ。
シロはユーキに同情するように小さく苦笑を零していた。
「ほらユーキ。元気だして! 何はともあれ、教えてもらえることになったんだから!」
「あ、ああ。教えてもらえるんだもんな。そうだよな!」
すかさずユーキのフォローに入るシルヴァ。ユーキの慰め役が板についてきたようだ。
ユーキは気を持ち直し、テンションを上げていく。
「じゃあ、教えるのはこの後ねー。屋敷の前集合で」
ラックが集合場所の指定をする。前回と全く同じの場所と時間だった。
必要な情報を聞いたユーキは立ち上がり、急いで食堂の扉の方へ走っていく。
「じゃあまたな! 先生にシルヴァ!」
「またねー」
「そんなに急いでも! ……行っちゃった」
早く授業を受けたい為、食堂を後にしようとするユーキ。部屋から出る際、ラックとシルヴァに別れを告げる。
ラックは体ごと大きく手を振り、それに応える。
シルヴァはユーキに忠告しようとしたが、それが彼の耳に届く前に扉は閉ざされてしまった。
「こっちが急がないと意味ないのにねー」
「そう思ってるならちょっとは急いであげましょう?」
シルヴァは自分のペットの怠惰な姿にため息をつくしかなかった。




