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新たな世界でニューライフ  作者: 黒夜叉
第一章 始まりの一日
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第一章1  『右も左も分からない』

実際の用事で投稿が遅れました。最初からすみません。

この話から友貴の表記をユーキにします。(例外有り)

「俺は、ここからどうすれば良いんだぁー!!」


 周りを気にせずに言い放たれたその言葉は近くの大通りを歩いている人や人に似た者達の鼓膜を震わした。そして、その声はユーキの今いる場所から遠く、遠く広がっていった。


 なぜユーキがこんなことになったのか、この世界に来てからのことを見てもらったら分かるだろう。


✤ ✤ ✤

 扉を開いたことにより、放たれた光によってユーキは、目を閉じた。そして、次に目を開けたとき、ユーキは目の前に広がる景色に驚いた。


「まさか、本当に行けるとはな、異世界に。信じて無かった訳じゃないけど、あいつならやりかねないからな」


 ユーキが言ったあいつとは、異世界に行く前まで一緒にいた友人達のうちの一人だ。彼の名は倉科くらしな 和也かずや。親が有名な会社の社長で俺みたいなのがなんで友達になれたか分からないとユーキ自身よく思う。ユーキは、和也とは違い平凡な家庭で育ち、一般的な生活を送るごく普通の高校生だ。


 彼とはたまたまゲームで知り合い、そこから関係を深めていった。最初は、その金持ち具合に驚いた。そのレベルは夏休みに島で無人島生活をしないかというレベル。しかも、島の持ち主は和也の家だから、実質貸切状態。当然それは二人ではなく共通の友人も合わせてだ。


「あれは、楽しかったなぁ」


 最近の思い出を懐かしむユーキ。そして、その帰りにあんなことがあったので、ユーキは和也のドッキリだと最初疑ったのだ。和也の家の財力があれば、その程度造作もないはずだからだ。


「そう言えば、帰れるか聞くの忘れてた! いや、倒したら帰れるか。それよりも、どんな力を渡してくれたのか早く知りたいな」


 思い出したように出てきた疑問に対して、直ぐに答えを出し、自称『神』が言っていた力がどんなものなのか期待し、胸を高鳴らせた。そして、辺りを見渡し頭の中に新たな疑問が浮かんだ。


「なんか周りの視線を感じるな。不審なやつを見るような感じの……、そうか! 服装か!」


 周りと自分の直ぐ分かる違い。そう考えると、答えが出るのに時間はそうかからなかった。周りを歩く人達はユーキの気付きの発言により一層、不審な目を強め、ユーキは、より一層視線を集めた。


「まぁ、異世界って聞いた時から予想はしてたけど……、俺からしたら、お前らのほうが目を疑う存在なんだがな。」


 ここは異世界。多種多様な種族が生活しており、普通の人間と獣人などが共存している。


「多分、動物部分が目立つのが獣人で、耳や尻尾だけの人間部分が多いのが半獣人かな?」


(おそらく、他にも鬼や竜人、妖精なんかもいるんだろうな)


「服装が問題だったとして、どうやって解決しよう。変に悪目立ちして、警察的な組織に通報でもされたら面倒だしなぁ……、普通なら、そんなことないだろうけど、常識が通じるとは限らないし」


 ユーキの今の外見は、現実世界では普通だが、この世界の住人と比べると少し異様だった。ユーキの服装は、長袖に長ズボン、そして、薄い上着を着ている。この世界の人達は、ほとんどが半袖であった。しかも、デザインもユーキの上着は、赤と黒のチェックなのに対し、周りはとても質素なものであった。


 ユーキは服装だけでも視線を集めるのに、背中に斜め掛けするタイプのバックを持っている。周りを見渡した限り誰もバックを持っていない。それも自分に視線が集まる理由だとユーキは考える。


「ていうか、このバックの中見られたら、余計注目されるだろうな」


 そう言いながら、ユーキは肩に掛けていた自身のバックを下ろして開ける。その中には、鞘付きのサバイバルナイフ、発電式ライト、スマホ、スマホの充電器、辛いスナック菓子、そして、財布が入っていた。


「和也からサバイバルナイフとライト貰ったけど、そのまま持ってきちゃったな。ライトは発電式だし、それに、これでスマホ充電出来るから良いけど、ん? ――スマホ使えねぇー!!」


 和也から貰ったライトからスマホが使えないことに気付いたユーキだったが、その声もまた、注目を集める理由となった。


「これ以上、注目集めるのも、サバイバルナイフ持ってるのもやばいな。このお菓子も帰りに買ったけど、はやめに食わないとな。まぁ、取り敢えずここから移動しよう」


 ここにいると、周りの視線が気になるので、ユーキは人気の少ない路地のようなものを探しながら歩いた。そして、目的のものを見つけた。


「おっ!! ここなら人目を気にしなくても良いし、もし、誰かに襲われても、大通りに直ぐ逃げれるな」


 路地には、木箱が数個置かれており、ユーキはそれに座って考え出した。


「よし、今の状況を整理しようかな。敵を倒せばいいってのは分かるけど、どうすれば良いのかは分からない。ここがどれくらいの時代なのかは、建物の外観からたぶん元の世界でいう中世。どこかも分からないけど、これも外観から元の世界でいう西洋の方。つまり、場所の情報はほとんど分からなくて、どうすれば良いかも分からない……、詰んでないか? これ。」


 状況を整理することで、どうすれば良いか分かると思ったユーキだったが、結果は虚しく自分が今、どれだけ窮地に追いやられているかを確認することになってしまった。


「まぁ、ここで悩んでても仕方ないし、服を買いに行くか。お金使える確率凄い低いけど」


 心配なことはあるが、動き出さないと仕方ないと思ったユーキは服を買いに行くために大通りに出て、店を探し始めた。


「と言っても、たぶんこれ、字があっちと違うな。」


 周りの店についている看板のようなものに書かれている字のようなものを見ながらそう言うユーキ。そして、字が違うことからまた、別の疑問が生まれる。


「字がちがうなら、言語ももしかしたら……、お金使える可能性低いどころじゃなくて、1%もないな」


 言語が通じないという新たな不安が出てきたとき、服を売っているであろう店を見つけた。


「字が読めなくも、見た目で分かって良かった。それに、あの路地からそんなに遠くなくて良かった。……よし、入るか」


 ここは異世界。ユーキにとって、元の世界では難なく入れる服屋でも、異界の地ではそんな些細なことでさえ、ちょっとした覚悟が必要である。さらに、言語が通じない可能性もある。なので、この行動はユーキにとってとても大きなものだった。


 店には扉のようなものは付いておらず、外から店の内装が伺えた。これが理由でここが服屋だと分かったのだ。


 一歩、また一歩と店の入口に足を進めた。そして、店内に入っていった。店内を見た感想が脳内を回る前に、店側から


「「いらっしゃいませっ!!」」


 と、数人の店員の元気な歓迎の挨拶が飛んできた。それと同時にユーキはさっきまで考えていた店の感想を考えるのを一旦止めた。店員の歓迎の声があまりにも大きかったため、その気迫に押され、ユーキは少し首を曲げ、小さく返事をした。そして、あることに気付いた。


「言葉が聞き取れた!?」


 通じないだろうと思っていたが、通じた驚きによって心の声が漏れてしまっていた。その言葉を聞き、店員は頭にはてなマークを浮かべ、首をかしげていた。だが、次のユーキの言葉でその疑問は、さらに深まるのだった。


「俺が何を言ってるか分かりますか?」


(もしかしたら、こっちの言葉は通じないかもしれない)


 気になったことを確かめるためにユーキは、近くにいた半獣人の女性店員に問いを投げかける。


「はい?」


「だから、俺が何言ってるか分かりますか?」


「は、はい、何を言われているかは分かりますよ。ですが、何故そんなことを聞いてくるかは分かりません」


 二度目のユーキの問いに半獣人の店員は少し後ろに身を引き、答えた。


「そうか、何を言ってるか理解出来るか。まぁ、流石にあの神もそんな世界に送ったりしないか」


 そう、独り言をしているユーキは、ひと通り考えたあと自分に集まる視線に気づき、あることを思い出した。


(人の第一印象って確か3~5秒で決まるんだったよな。じゃあ、今の俺って……超やばいやつじゃん)


 店に入ってからの行動を思い出し、自分がどれだけ異常者なのかを確認したユーキは、一旦考えるのをやめ、自分は普通の客だとうったえるように振るまい、服を見始めた。


 店は落ち着いた雰囲気で派手さは無かった。そして、服はオシャレさというよりは利便性を重視した作りだった。動きやすそうなものや肌触りが良いものなど色々なものがあった。


(やっぱりさっきの場所でオシャレな人が居なかったのは、オシャレをするのが一般的ではないからかな。この辺、見た感じ平民街だし、貴族はたぶん着飾ってるだろ)


 気に入った服が見つかったので、値札を見てみると、案の定読めなかった。


「一番の問題はやっぱこれだよな。値段が分からない。そして、お金が使えるかも分からない。聞くか」


 さっきとは別の店員を呼び、聞いてみた。今度は人間の男性店員だ。


「すみません。この服っていくらですか?」


「こちらに書いてありますが……」


「そうですか。しかし、俺少し目が悪いもので……」


 変な誤解をされないようにアドリブで上手く返したユーキ。


「そうでしたか。こちらの商品は銀貨2枚になります。お買い求めになりますか?」


「少し待ってください」


(やっぱりか。お金が全く違ったな。これじゃ、買うのは無理だけど、一か八かやってみるか)


「このお金って使えますか?」


 そう言いながら、バックから財布を取り出し、中身を店員に見せた。中には硬貨各種と紙幣も三種類全てはいっていた。ユーキは、中を見て、


「結構入ってたな」


 と、一言漏らした。店員は、財布の中を見てあっさりと一言。


「使えません」


「店長に聞くとかは……」


「私が店長です。なので、そのお金は使えません。お金がないのならお帰りください」


「やっぱり無理か。分かりました。帰ります。」


 ユーキは肩を落とし、店を後にしようとした時、店長が、その背中に向かって、


「服を売ることは出来ませんが、他に何か困っていることがあったら何でも言ってください」


 と、慈悲をかけたが、ユーキは、


「いや、気持ちだけで良いよ、ありがとう。また、何かあったら助けて貰いに来るよ」


 そう言って、店長に別れを告げるように店に手を振り、元いた路地に帰っていった。


「はぁー、そんなに時間は経ってないけど、久しぶりに帰ってきた感があるな。……帰ってきたって言えるほどちゃんとした場所じゃないけど」


 そう言って、ユーキは木箱に座って考え込んだ。


「服屋に行って分かったことは、元の世界とこの世界の言葉は確実かはまだ分からないけど会話が出来るぐらいには同じ。でも、文字とお金は違う。お金は銀貨って言ってたから他にも金貨とかもあるはず。」


 ユーキは新たに分かったことからこの世界のことを推測する。


「ここまで分かったことまとめても解決策は一切出てこないな。それに今はまだ明るいけど、何時ぐらいか分からないから早めに行動しないと。最悪、店長に泊めて貰おうかな」


 勝手に泊めて貰えると思っているユーキだったが、流石にこの状況は不味いと思ったのか頭を抱え、俯き、そして、勢い良く上を向いて、


「俺は、ここからどうすれば良いんだぁー!!」


 ユーキのこの声は遠く、遠く広がっていった。

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