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新たな世界でニューライフ  作者: 黒夜叉
第二章 亡霊だらけの冥界
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第二章5  『予想できた才能』

「それじゃあ、今からラック先生の魔法授業を始めるよ!」


「はーい! 先生。シルヴァは何してるんですか?」


「初めから話を逸らすとは……。まあ、良いけど。君がルアのこと、気にするのも分かるし」


 ユーキのテンションの上がりようを感じ取ってかラックもテンションを上げている。

 今二人は屋敷の庭園にいる。庭という言葉ではこの広さを言い表せないので庭園。端から端が見渡せない程の広さだがこの屋敷にはちょうど良いぐらいだと思う。

 ユーキは部屋に戻った後、直ぐに部屋を出た。外へは迷わず行けた。と言っても下に降りるだけなので当然だが。

 外に出るとラックのみの出迎え。そこからラックと二人きり。なので先程の質問が一番に出た。


「ルアは微精霊とお喋り中。ほらあそこ見て」


 ラックの指す方向を見るとシルヴァが座っていた。


「なんであんな遠くにいるんだ? そんでもって微精霊とお喋りってのもなんだ?」


「質問が多いねぇ。まず、遠くにいる理由だけど君が魔法を失敗したら危ないから。次に精霊と契約した者を精霊使いって言うんだけど、精霊使いは契約した精霊以外からも力を借りるからそれの更新中」


 確かにシルヴァの周りに何か浮いているように見える。それが微精霊だろう。


「ラックは確か大精霊ってやつだろ? 微精霊ってのは?」


「微精霊ってのは大精霊からしたら赤ん坊みたいなものだよ。あそこから長い年月をかけて僕みたいな大精霊になっていくんだ」


 ロアノスなどが言うラックが偉いの意味がようやく分かった気がした。精霊界で言えばラックのような大精霊は少なく珍しいのだろう。


「あっち行ってきていいか?」


「だーめ。そもそもこれ、君がやりたいんでしょ? 今、ルアのとこ行ったら今後、教えないから」


 シルヴァの方を指すユーキ。ラックはそれを止める。

 シルヴァの方へ行きたいという願いもあるがこの機を逃せば魔法使いへの道は絶たれる。

 ユーキは魔法を取った。


「まず最初はなんだったけ? ……適性審査か!」


「ユーキ、よく覚えてたね」


「俺、もしかしたらお前の三人目になれるかも」


 朝も言った通り、ユーキは自身の興味のあるものへの記憶力は凄まじい。

 ラックはユーキの額に掌を当てる。適性審査が始まったのだろう。

 この審査にユーキは自信があった。昨日、エアから告げられた加護の一つ、適性の加護。これが気になっていたのだ。そして、思い出した。竜車でのラックとの会話にマナと魔法への”適性”という言葉に。つまり、


「僕の恋愛対象はメスだよ。君は……えっ!? そういう事か。なら、君は三人目だよ」


 三人目を何と勘違いしたのかラックが答える。だが、後に意味に気付く。三人目の意味に。

 ラックの驚きが大きかったのでシルヴァが気になり、走って近づいてきた。


「あれ? シルヴァ、お喋りは?」


「ユーキの魔法の練習、ラックだけでも心配じゃないけど、一応、私も見たいと思って早めに切り上げたの。それでこっちに向かってたらラックの声が」


 ユーキの問いかけに答えるシルヴァ。だが、その興味の矛先はラックの驚きに直ぐに変わった。


「ラック、どうしたの? ユーキがどうかした?」


「今、ユーキのマナと魔法の適性調べてたんだけど、凄いよ…ユーキ」


 シルヴァとラックの会話を横にユーキはニコニコする。自分の診断結果がなんとなく分かっているからだ。


「もしかして二、三個あったの!? それは――」


「その程度じゃないよ。ルア、彼は…全属性適性者だ。それに魔法使いの素質もある」


 ラックの言葉にシルヴァも驚きを隠せないようだ。ユーキの笑みはまだ剥がれない。

 ユーキはラックの中でのこの世界の三人目に入ったのだ。加護のおかげだとしても喜びは隠せない。


「多分、俺に適性があるのって加護の力なんだよ」


「えっ、でも、ユーキ、加護について何も知らなかったじゃない」


「俺も自分が持ってること知ったのは昨日の夜で。エアに教えられたんだよ」


「そんなこともあるんだね。でも、エアか…それなら気にしなくてもいいか」


 ラックの言い方、エアを特別視する言い方に気付くユーキ。だが、今それを聞いても、さっきのように魔法教えないやら言われ、言い逃れられると思い追求は保留。

 今は追求など置いておき楽しい楽しい魔法レッスンに力を入れようと考えるユーキ。


「さあて、まず何からしようか? ユーキは魔法使いの素質があるから、多分、僕の助けがなくても感覚でいけると思うよ」


 ラックが説明を始める。

 シルヴァは授業を行う二人の横側に座っている。教えるのはラックに任せ、自分はただ見守るだけらしい。


「まず、自分の中にマナがあることをちゃんと理解する。それから、ルートを通るイメージでマナを体外に出す」


 ラックの説明を聞きながらユーキは自然と右手を前に出す。そして、言われた通りイメージする。

 自身の中にあるエネルギーを。それがルートという器官を通り手から放出する。


「出た! けど、これ魔法か?」


 ユーキの手から放たれたのはユーキのイメージする魔法ではなくエネルギーのようなものだった。それが手を覆っている。


「これは魔法じゃなくてマナ。初めてでここまで出来れば魔法を使えるのも直ぐだね」


「ユーキ、凄い! ほんとに魔法使いの素質あったのね!」


 ユーキがマナで手を覆うとラックは褒め、シルヴァはパチパチと拍手。

 ユーキは内心泣いていた。悲しさではなく嬉しさで。まだ魔法ではないもののその片鱗に触れることが出来たと感じたからだ。


「このマナだと何が出来るんだ?」


「マナはねー、ちゃんと操れれば身体強化とかに使えるよ。まあ、魔装の方を使うのが主流だけどね」


「魔装?」


 聞きなれない言葉に反応するユーキ。

 それと同時に手を覆っていたマナが消える。意識の集中がマナから魔装に変わったからだろう。


「そう、魔装。武器や体に魔法を纏わせて戦う手段。魔法の使い方には三つあって、武器は使わず魔法を放つのが一般的な魔法、武器や体に魔法を纏わせるのが魔装、武器そのものを魔法で創るのが魔創」


 魔法には使い方が三つあると言うラック。

 シルヴァは、またラックの説明を聞くだけになっていた。


「魔法が一番簡単だから、ユーキはまず、それから。一週間以内でそこまでいけたら魔装、魔創の順で教えてく。分かった?」


「分かったよ、先生。若干、不安だけど……」


 魔装と魔創、読み方が同じで面倒だと思うユーキ。だが、現代社会では言葉の勘違いなどが多いので、そこを生き抜いてきたユーキは大丈夫かと一人安心する。

 ラックはマナ放出の次のステップ。つまり、魔法の練習に入る為、先程の様にユーキに右手を上げるよう促す。


「マナは特に考えなくても出来るけど、魔法は変換が要るからね。僕が君のルートに干渉するよ」


 ユーキが右掌を前に開き、右手を上げるとラックはユーキの肩に乗った。

 肩に動物を乗せるとあるアニメのワンシーンを思い出す。

 肩に乗る動物はユーキの耳元で囁く。耳に多少の違和感を感じ、こそばゆい。


「最初はどの魔法が使いたい? 君ならどれでも使えるよ。火、氷、水、風、雷、土、光、闇、どれがいい?」


「俺はなぁ、雷とか氷も好きだけど…やっぱり火かな。オケ! 火にしてくれ」


 各種の属性から選び抜い…た訳ではなく、最初からなんとなく決まってあった。なのに、ちょっと選んでる感を出したのは選択肢を出してくれたラックへの気遣い。必要度はなかったかもしれないが。

 ユーキが火を選んだのは好きな色からきている。昔から赤が好きでそこから転じて火。子供なら誰しも昔、赤が好きだった頃があるはずだ。多分。恐らく。


「オケってのは了解で良いんだね?」


「ああ、それでオーケーだ。ちなみにオーケーってのはオケの原形な!」


「オーケー、火でいくよ!」


 新しい言葉への順応度はラックが一番高いと思う。まあ、一番高いのは自分だろうが。少ししたユーキの自画自賛。

 ラックが自身の肉球でユーキに触れる。その肉感が服越しからでも気持ち良い。


「3・2・1」


「えっ! 待って待って! ちょっ――」


 肉球の心地良さに浸っていると急に始まるラックのカウントダウン。

 そんな簡単に打てるのか? と思える程に始まったそれはユーキに準備をさせる猶予を与えなかった。


「ドッカーン!」


 ラックの発射音を合図に上げた掌からユーキお望みの火の玉が放たれた。

 大きさは直径三十センチ程。これが大きのか小さいのかは分からない。速度はあまりない。ラックが遅めたのかもしれない。

 シルヴァは横で火の玉を目で追っていた。ユーキのこの短時間での成長を喜ぶかのように。


「なあ、ラック! もうちょっとあるだろ? 人には心の準備ってもんがいんだよ!……って、あれ、屋敷に……」


 ラックに急な魔法発射の件で怒りながら、火の玉の先を見る。

 玉は遅いがその弾道の先にあるのは屋敷の壁だった。もし、当たってしまったらただ事では済まないだろう。

 その時はラックのせいに…と事後処理について考えていると、この件の当事者が笑って言った。


「大丈夫だよ。あの魔法には僕のマナも入ってるからね。僕なら操れる」


 もうちょっと危機感持った方がいいのでは? と思うがシルヴァも何も言わないということは大丈夫なのだろう。

 最初から気をつけろよと思うユーキはおかしいのだろうか。否、正常だ。

 ラックが小さな右手を上げ、下に勢い良く下ろす。それに合わせ魔法の軌道が変わり、進行方向が下に向く。

 そして、それは地に辺り無事爆発。着弾地は抉れていた。


「……なんで下に向けた!? 今の上に向けたら被害なかったじゃねえか!」


「そうよ! 態々、当てる必要なかったでしょ!?」


 ユーキとシルヴァの集中砲火。当然だ。意味なくラックは地を抉った。

 ラックはいかにも真面目な顔で責める二人に答えた。


「これは先生としてやったことだよ。ユーキに魔法の威力と危険性を知ってもらって、間違えても人に撃たないようにと……」


「あっ、そういう事だったのね! それだったらまだ分かるかな」


「分からねえよ! 俺、そこまで頭、イカれてねえよ! あんなの人に向けるなんてこと好奇心旺盛な俺でも流石にしねえよ!」


 あんな火の玉、威力を確認しなくてもなんとなく分かる。人が当たれば怪我するくらい。いや、怪我だけで済むかは分からない。

 それより、気になるのはラックに対するシルヴァの甘さ。義理ではあるが親が親なら、子は子なのだろうか。この優しさとも言える甘さがユーキに向くかは分からない。


「まあ、まあ、そんな怒らないで。結果良ければ全て良し。なんでしょ? それじゃあ、次で教えることは最後。属性ごとの魔法の詠唱について。ちなみに基本だけね。火 バーン、水 ピュート、風 ウェード 、土 チャーク、光 ラート、闇 ナート。副属性も一緒だよ」


 最初の方に得意気に言うラック。そこに少し怒りを覚える。

 まず、使い方が違う。確かにその言葉は言ったが…地を抉った結果のどこが結果良ければなのか。


「その詠唱ってのは別に慣れればやる必要ないんだよな? 多分、イメージしやすいようにだろ? さっき、火を屋敷に放った時、ラック言ってなかったし」


 最後の一文だけ見ると、完全に放火魔のそれだ。まあ、ユーキには関係のないことだが。火を放ったのはラックなのだから。

 ラックはユーキの質問に答えると同時に先程の話を続けた。


「確かにそうだよ。ロアノスとかだったら詠唱の必要はないし。属性の他に威力でも詠唱があって、上から

 ラール ミール スール なしの順だよ。例えば、スール・ウェード」


 詠唱はイメージ出来ればなんでもいいらしい。慣れてきたら技名などの方がやっていて楽しいだろう。

 威力の説明後、例としていきなりラックが右手を上げると風が吹く。シルヴァと出会った時、路地裏から感じたぐらいの。


「こんな感じ」


「だから、急にするなって言ってるだろ! そうバンバン撃つな! こっちは慣れてないんだよ!」


 表ではこう怒ってはいるが、内では嬉しがっている。少ししたツンデレとも言える。いや、デレはない。

 マナの放出と言い、火、風の魔法と言い、ユーキの思い描いていたもの楽しみにしていた魔法だ。昨日から楽しみにしていたのだ。嬉しいのも無理はない。


「じゃあ、次からは一人で撃てるように。基本、集中を切らしたらダメだよ。慣れない内にそんなことすると最悪……」


 無言で合掌するラック。その仕草が全てを物語っている。

 そこから昼までユーキはラック指示、シルヴァ見守りの元、魔法の練習に励んだ。

 たった数時間ではあったがラックの言う通りユーキには魔法使いの素質があり、明日にはある程度ものに出来るだろうと思える辺りにはなった。

 美味しい昼食含む昼休憩後、魔法は一旦止め、次はシオンの戦闘訓練。


「なあ、あそこにいる白髪のメイドもとい姉様は何してんの? まさか一対二!?」


「姉様が言うには、しーちゃんとあれを二人きりにするなんて出来ない! だそうです」


 シオンが声真似して現状説明。その現状とは……。


 ロアノスの指示通り、シオンと庭園で戦闘訓練を行おうと外に出る。その時から謎の視線を感じてはいたが、庭園に出た後、屋敷の入口を見るとシロの監視の目がこちらを向いていた。


「シスコンも度が過ぎると怖いな。てか俺、あいつに裏であれって呼ばれてたのか!? 信頼あると思ってたのに……」


 この屋敷でエアを抜き、一番楽に話せそうだったシロにそんな言い方をされていたことを知り、少しショックを受けるユーキ。

 まあ、男はみんな狼みたいな認識がこっちにもあるなら仕方ないが……。

 だが、ユーキは別にそんなことは思っていない。絶対だ。神に誓えるぐらいは。

 キリスト教徒ではない無宗教のユーキが神に誓ったところでなのだが。


「姉様、早く仕事に戻って下さい! ユーキくんはシオン一人で見れますから!」


「ぐぬぬ、しーちゃん! もし何かあったら呼んでね! もしくは実力行使でもいいから! ユーキは変な気、起こしたらダメだからね!」


 シロはシオンに対処法を言い、ユーキに忠告をし、仕事に戻った。シオンとユーキはそれを見送った後、向き直った。


「あいつ、サラッと恐ろしいこと言ったな。俺がそんなことする訳ないのに、多分」


(さっきのあれ、シスコンって訳じゃなくて嫉妬かもな。俺にシオン取られた、みたいな)


 先程の神への誓いに少し揺らぎが出てきた。シロにあんなに言われると逆にそうしろと言われてる気がしてきたからだ。


「実力行使って普通じゃないですか。姉様が何を言ってるのかは分かりませんでしたが、早速始めましょう」


 姉様の忠告の意味を履き違えているシオン。それに少し不安を覚える。

 戦闘訓練をスタートさせようとしているシオンにユーキが考えを元に質問する。


「なあ、シオン。実際、ただの人間が出来る範囲にも程度があるだろ? そこんとこどうする気ですか? シオン先生」


「先程の話が本当だったら、マナか魔装で対応出来ると思いますよ。鍛錬でもいけますがユーキくんはユーキくんですからね」


 昼食時にラックとシルヴァがユーキの魔法の出来を報告したのでこの屋敷の住人はユーキの素質を知っている。

 その時エアと目があったのだが、少し微笑んでいたので適性の加護のおかげ説は正しいと思う。

 最後が少し辛辣なコメントだったが、もとよりユーキは魔装主体の戦い方が良かったのでむしろ好都合。ユーキの提案が通りやすくなる。


「それじゃあ、どうします? 戦うにしても色々あるじゃないですか? 武器ありかそうでないかとか」


「じゃあ、剣が良い! 魔導剣士って憧れだったんだよ!」


 魔導剣士。それは剣による近距離、魔法による中距離、遠距離とどんな状況であっても有利に戦える。更に補助系魔法も存在するのでより臨機応変に戦える。

 魔法と剣のいい所取り、魔導剣士という存在を知ってたから憧れを抱き続けた。実際にそんな都合良くいくかは分からないがユーキは即答だった。


「剣術ですね、分かりました。使ったことはあまりないですけど頑張ります!」


 やる気満々と見て分かる。

 じゃあ、普段はどんな武器使ってるんだという疑問が湧いてきたが、シオンのその姿を見ると水を差すのが申し訳なく思い、疑問は自然消滅する。


「それでは剣を取ってきますので、待っていて下さい」


 それを目で追い、そのまま屋敷の窓を見るとシロの姿が。ずっと見ていたかは分からないが、どこまで心配なのだろうか。

 ユーキはシロに向かって右手でしっ、しっ、とするとシロは不満そうにその場から離れる。ジェスチャーは伝わったようだ。

 シオンが帰ってくる間、ユーキは昼前にやっていた魔法の練習をする。感覚を忘れない為にも体に覚えさせる。


「お待たせしました、ユーキくん。これぐらいので良かったですか?」


 シオンが持ってきたのは木剣。通常サイズの西洋剣。初めから真剣なんて物を持ってこられてもどうしようもないから良かった。

 シオンから手渡しで渡された木剣は思っていたよりも重く、軽々と片手に一本ずつ計二本を持ってきたシオンに驚く。


「よく持てたなこんなの。そんな体で」


 シオンの体格からこんな物を持てる力があることを想像出来ないユーキ。


「まあ、持てるんですよ」


「理由になってねえよ! けど、いいや。早く進めよ」


 シオンからは剣の振り方、体の使い方を習った。剣を振ると言ってもただ振るわけでは駄目なことを知り、体の使い方は単純に筋力がない。反射神経は自信があったので避けることは出来た。


「ユーキくん、それでは仕事に戻ります。それは渡しておくので素振り頑張ってください! 後、筋力も」


「あ……ああ、…ありがと……」


 シオンが仕事に戻ったのを見届けた後、その場に大の字で倒れ込む。疲れが全身に巡っていた。

 空が綺麗だった。紅く染まっていく空を見ていると疲れが込もった息が漏れる。


「魔法より短かったのにこっちの方が断然、疲れた。無人島で遊んでたのがせめてもの救いだな。あれでも体力がついてた」


 もし、遊んでなかったらもっと前で落ちてただろう。

 だが、ここで終わったのはシオンの優しさ。ユーキの疲れを察し、止めたのだ。これを知るのは夕食の時だった。


「お疲れ様、ユーキ。どうだった? シオン、ああ見えて凄かったでしょ?」


 疲れていたので近づく足音に気付かなかったが、声に反応し隣を見るとシルヴァが足を伸ばし後ろに手をつき、座っていた。

 たった一言、お疲れ様だったがユーキの疲れた身体には凄まじい程に染みた。


「ああ、あのスパルタは身に染みたよ。それと今のシルヴァの言葉も」


「えっ! 今、私そんな酷いこと言った? 」


「いや、そういう意味じゃねえよ」


 シルヴァがユーキの言葉の真意を分かっていないのが、面白く感じユーキは笑ってしまう。

 シルヴァが恥ずかしさからかそれとも単に空に照らされたか頬を紅く染める。


「な、なんで笑ってるの! 私、そんな変なこと言った?」


 そんな反応を見ると、余計に笑いが止まらない。そして、同時に心の奥から何かが込み上げてくる。


「いいや、変なことは言ってないよ」


「じゃあ、なんで笑ってるのよ! ほら、また!」


 この感情がなんなのかはまだ分からない。だが、この時間が続いてほしいと思う気持ちは確かだと感じた。

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