プロローグ 『始まりの物語』
初めて小説を投稿するので、誤字脱字などがあるかもしれないことをご理解しただいたうえでお読みください。最後に、楽しんで頂けたら幸いです。
「今年の夏休みは充実してるなぁ」
そう言いながら少年は体を伸ばしながら、自宅への帰路に着いていた。
時刻は午後6時ごろ、夕陽に照らされ、少年の胸元の勾玉型の透明な翡翠色の石が輝く。そのまま、歩いていると、とある家の前で石から先程の光とは別の光が発せられた。
「ん? なんだこれ?」
突如、発せられた緑色の光に疑問を抱きながら歩く足を止め、胸元の石を手に取る。そして、横の家に目線を変える。何気なくとった行動だったが、その家は不思議な雰囲気だった。
「こんなところに家なんてあったっけ?」
そんな疑問への好奇心とどこか引き込まれるその家の雰囲気からか、少年の足は自然と家の前の門まで進む。
近くまで行くと、その大きさに圧倒される。赤い屋根の洋風の建物、一度見たら忘れることはないはずだと自負できる程の外観を持つ建物だった。
進む足が大きな扉の前で止まる。ここで進むことを止めようかと考えさせるほどの存在感を放つ扉がそこにはあった。そして、少年は息を呑み、扉に手をかける。
しかし、その期待とは裏腹に音はほとんど立たず、少年の緊張は解かれた。そして、緊張が解かれたのと同時に、少年は自分が今、何をしているのかに気づいた。そう、少年は今、不法侵入という罪を犯したのだ。それに、気づいた少年は大きな声で、
「すいません!つい、開けてしまいました! 」
許してもらえるはずのない弁明を述べながら、何もない空間に頭を下げた。だが、その声に反応する声はなく、それどころか物音ひとつしない家の中に不気味さを覚えた。それから、少年は確認を取るために一歩家の中に進み、もう一度、
「すみませーん。誰か居ませんか? 居たら返事して下さーい!」
二度目の少年の言葉にも家の持ち主は何も反応を示さない。誰も居ないことが分かった少年は更に足を進ませる。大きな扉から少し離れた位置まで歩いたとき、扉が勝手に『バタン!』と大きな音を立て、閉まった。さっき扉を開けたときでは考えられない程の大きな音と急に閉まったことへの驚きによって、少年は、
「びっくりした! なんで急に閉まるんだよ!もしかしてなんかのドッキリか? 」
と、返ってくるはずのない質問を誰も居ないであろう家に投げかけた。少年も返ってくるはずはないと思っていた。しかし、その考えを裏切るかのようにその声は家の中に響き、少年の鼓膜を震わせた。
「やっと来てくれたね。私はここで君のことをそこまで長くはないけれど、待っていたんだよ」
女の人の声が何処からともなく聞こえてくる。それと同時に辺りが光に包まれていき、家の中ではない何もない空間に変わった。声の主は少年のことを知っているようだが、少年は声の主に心当たりがないようだった。だから、少年は謎の声に対して、
「お前は誰だよ! 俺はお前のことなんて知らねーぞ! て言うか何処からこの声、聞こえてんだよ! あと、ここ何処だよ!」
と、大声で聞くと、また何処からともなく、
「質問が多いわね。それよりも君、今自分がどういう立場か分かってる? まず、不法侵入している時点で君がそんなことを聞ける立場かということと閉じ込められていることをもう一度、考えてみるんだね」
それを聞いて、少年は自分が今置かれている状況を考え、立場を弁えて、もう一度、
「あなたはどなたですか?僕のことを知っているのですか?」
先程の聞き方とは真逆で丁寧に声の主に問うと、
「まあ、べつに聞き方なんてどうでも良いんだけどね」
「じゃあ、言い直させ――」
「ん?」
「すいません」
謎の声の反応に反論した少年の言葉を遮るように声の主は少し怒りを含んだ反応をした。その少しの反応でも少年を黙らせるのには充分だった。謎の声はそれから、会話の続きを始めようとした。
「話が逸れちゃったけど、さっきの続きを話そうか」
「お前のせいでな」
「君は私が誰かと聞いたね? その問いの答えは、神だよ」
「無視するなよ!……はぁー!?」
少年は途中までそこまで集中して聞いていなかったが、謎の声から突如発せられた新事実――声の主が神だということ――によって驚き、話に興味がでてき、そして、その話に釘付けになっていた。
「神ってお前がか?じゃあ、姿を見せてくれよ」
「済まないけどそれは出来ないんだよ。けれど、直ぐに姿を見せることになると思うから安心してくれて構わないよ」
「それだったら、俺に用ってなんだ?」
「驚かずに聞いてくれ。私は、君に異世界に行って欲しいんだよ。」
少し声のトーンを暗くして放たれたその言葉に対して、少年は、驚かずに気になることを質問して行った。
「なんで、そんなことしなくちゃいけないんだ?」
「理由はある者を倒して欲しいんだよ。誰を倒して欲しいかは自然と分かるはずだよ。」
「俺が居ない間、この世界はどうなるんだ?」
「私は神だよ。そんなことは力を使えばどうとでも出来る」
「俺みたいなやつが行っても、直ぐに死んじまうんじゃねえか?」
「大丈夫だよ。君には使い方によっては強くなれる力を与えてあげるよ」
「普通に強い力が欲しいんだけど……。最後に、なんで俺に頼んだんだ?」
「この家に入って来てくれたからだよ。そして、その緑色の石を持ってるから」
「この石、何か特別なのか?」
「君はまだ知る必要はないよ」
それを聞いたあと少年は少し考え、
「分かった。俺が行く理由があるなら行く。それで、どうやって行くんだ?」
少年がその言葉を言い切ると、辺りの景色が元に戻った。
「扉を開けて、外に出たら異世界に着くよ。出来るだけ早く会えるようにお互い頑張ろうね」
その言葉を聞き、少年は扉に手をかけた。扉を開けると向こう側は眩い光で包まれていた。そして、前に進む足を止め、
「あぁ、また会おうぜ!」
そう言って、光の先へ進んで行った。
――ここから俺のニューライフが始まるんだ。
そう、ここから少年<空閑 友貴>のニューライフが始まる。
✤ ✤ ✤
誰も居なくなった家の中に声が響く。
「大丈夫。あの石を持っているということは間接的にだけれども君は私に選ばれた人だということ。だから、君はきっとあの世界でも生きていけるはずだよ。」
その言葉に反応するものは誰も居らず、そして、聞いている者も当然、誰も居なかった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。出来る限り、週一投稿を心がけていくので、次回が気になる!という方は読んで頂けたら幸いです。