第一章第一幕~始まりの青薔薇~
幽牙です。本編一発目です。宜しくお願いします。
「ふう...」
ため息をつき、本を閉じる。もうこれで何冊目だろうか。かつて読み漁った幾千の物語を思い返しながら今読んだ内容を反芻する。何の変哲もない物語。
遥か昔、大きな戦いがあった。異能を持った五人の少女を筆頭に五つの勢力に分かれて戦った。五人の少女は争い、助け合い、最後は全員で大きな敵に向かう。そんな在り来りな物語。自分でも、何故この本に惹かれたのか分からなかった。唯一言える事は、この物語の主人公は俺に似ていた。孤独で、頑固で、意地っ張りで、それでいて...
「あっ!幽牙こんな所にいた〜。もう下校時間過ぎてるよ!定時の人も来るんだからさっさと帰るよ!」
「霊那。何度も言ってるだろ。図書室で騒ぐな。後、何でそんなに俺に構うんだよ。評判落ちるぞ、お前の。」
「もう!すぐそうやって自分を卑下にして〜。何度も言ってるでしょ。私は評判なんて気にしないの。それに、ほら」
そう言って出てきたのは1枚の紙切れ。
「なんだこれ」
霊那から受け取るとそこにはこんなことが書いてあって...
『霊那ちゃんへ
うちの愚息の面倒を見てやってください。
幽牙パパより』
「.......。あんのクソ親父〜」
「だから私は公認なの。ほら!分かったらさっさと行くよ。さあ動く!」
「あーもう分かった。分かったから押すなって。」
年寄りの様に重い腰を上げる。大きく伸びをして1つため息。また今日も騒がしくなりそうだ。霊那に手を引かれて図書室を後にする時、ふと目に付いたのはさっきの本。閉じた本の表紙には古い書体でこう書かれていた。
【星運戦記① 流星と青薔薇】
出版社も筆者も書いてない本がなんでこんなに気になるのか...
「どうかしたの?」
「い、いや。何でもない。行くぞ」
始まりかけた思考を振り払う様に俺は歩き出した。何故かそれ以上考えては行けない気がしたから。
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その日はその後もいつもどうりだった。霊那に振り回され多少疲れていたがいつもと変わらない時間だった。これでまたいつもどうりの明日が来るだろうと布団にはいったのだが...。
その夜はいつもならありえない時間に覚醒した。意識がまとまっていき、思考がクリアになっていく。それでも目は開けられなかった。目の前に明らかな光源があるからだ。目を閉じていても分かるほどの明るさ。俺だって恐怖はある。このまま気づかないふりで誤魔化すことも出来ただろう。しかし人間とは難儀なもので、好奇心が勝ってしまう。恐る恐る目を開けるとそこには光を纏った少女がいた。翼を生やし黒と青を基調とした衣を纏っている。年は俺と同じ高校生ぐらいだろうか。目を見張るとはこの事だろう。驚いて声も出ない。いや、本当に出なかった。
『ごめんなさい。声は出せないわ。貴方に色々話してあげたいけど時間が無いの。私は貴方の望みを1つだけ叶えてあげられる。あなたの望みは何?』
「望み...俺の、望み.....」
明らかにおかしいのはわかってる。現実な訳がない。ならば、いや、だからこそ考える。記憶を遡って、過去を超えて考える。思い出すのは同じ風景。いじめの集団、いじめられる俺、そして毎回間に入るあいつ。霊那の背中。諦めてた。こんな容姿だから、こんな性格だからと、いじめられるのも守られるのも仕方ないと。でも本当はいつも憧れてた...。物語に出てくる英雄の様に、勇者の様に強くなりたかった。多くを守れなくて良い。世界を救う力なんていらない。ただ、ほんの少しで良い。世界でたった1人、大切な人を守れる小さな力が欲しかった…。もし、もしも許されるのなら、こんなに醜く、こんなにも愚かな俺が願っていいのなら、俺は...俺は!
「変わりたい!いつも守られて、いつも助けられる俺じゃなくて、前を見て、大切な人の隣にいたい!」
「そう...。その願いは叶えられるわ。でもその前に貴方に聞きたいことがある。」
「な、なんだよ」
「貴方のその願いに、貴方の命も、貴方の夢も、全てを賭ける覚悟はある?」
覚悟、か.....。そんなもの昔からあった。なかったのはほんの少しの力と、小さな勇気だけ...。
「ある!もう、背中だけ見て歩くのは辞めるんだ!」
「フフ。良い覚悟。さあ手を出して」
そう言うと、彼女の手から光が放たれた。言われるがままに右手を差し出すと手の甲に光が集まり、炎の様に燃え上がりながら1つの紋様を描き始めた。
「それは紋章。貴方が変わる為の力よ。」
「紋、章...力って」
「今は詳しいことは言えない。でも私は信じてる。貴方ならその力を使いこなせる。私のように孤独の闇に堕ちることもないと。」
俺がさらに質問を重ねようとした時、彼女の後ろに人影が見えた気がして...。
«**さんそろそろ時間です。»
«*〜*!ほら早く行かないとお客さん待たせちゃうよ»
«**さん今日は私達の最高にカッコイイとこ見せてあげましょうね!»
«**さん。が、頑張りましょうね。»
「ごめんなさい。仲間が呼んでる。そろそろ行かなくちゃならないわ。」
「最後にヒントをあげる。もうすぐ星の契約者が目覚める筈よ。紋章を集めなさい。そうすれば貴方は変われるわそれじゃあ頑張って。」
光の中に少女は消えていった。残ったのはまだ暗い外の月明かりが照らした剣に青薔薇が巻きついた様な紋章だけだった.......。
お疲れ様でした。如何でしたか?話が急すぎて付いてこれてないと思います、すいません。そんな文ですがこれからも宜しくお願いします。感想、ご意見、アドバイスなどお待ちしております。