真・人喰い穴の恐怖
『人喰い穴』と聞くと何を連想するだろうか?
約30年ほど前に放送された、たけしの『風雲たけし城』に出て来た「人食い穴」を思い出す人はかなりのお歳をめした方だとお見受けするが、実はこの番組は海外で人気があり、リメイクされたりイギリスではそのまま流されたりしている。
体を張ったこの手の番組は海外では大ウケで、『サスケ』も同じく人気が高い。しかし、今から話すのはバラエティー番組に登場した『人食い穴』ではなく、本物であり実在した人間を喰った穴の事だ。
その穴はいったいどこにあるのか?
それを語る前に穴の正体を教えておこう。
今より39年前、つまり1979年の夏の事だ。
アフリカ奥地の未開のジャンルに生息していた特殊な種類の『連鎖球菌』がアメリカ・カルフォルニア州大学の薬物研究機関に持ち込まれた。その菌は『溶血性レンサ球菌』の変異体で、現在"人食いバクテリア"という呼び名で知られている菌の元になったといわれている。
何の目的で持ち込まれたのか?
それは当時、年々増加傾向にあったサシ処分されるペットや野生化した犬、猫などを重油などの燃料を使って焼くのではなく、バクテリアを使って分解し、しかも有機肥料として再利用出来ないかという研究の為に持ち込まれたのだ。
よく畑や住居の裏手にある、生ゴミを有機肥料に変える緑色をした容器を見た事はないか?アレと似たようなモノだと思えばいい。
当時、遺伝子組み換えで効果を増幅させた変異菌は人には感染しにくいものであったらしい。有機肥料化施設が実用稼働されると、薄暗い縦穴の底で培養された苗床には、毎日のように犬や猫の死体が大量に投げ込まれた。そして、清掃局員の一人が誤って穴に落ちた事が不幸の始まりだったといわれている。人を喰ったその菌は変質し、人に感染するようになったのだ。
『A型溶血性レンサ球菌』は1時間に約2~3cmという驚異のスピードで細胞を破壊し、皮膚や内臓を壊死させていく。『劇症型溶血性感染症』の患者は、1987年にはじめて米国で発見され、やがて日本へと上陸する事になった。
1992年夏、ついに日本初の症例が報告された。
その致死率は30%以上と極めて高く、症状が悪化すると急性腎不全や多臓器不全に加え、ショック状態を併発することもある。
2014年以降、日本での患者数は増加傾向にあり、2017年には過去最高となる492人が報告されている。患者数急増の背景には、温暖化により菌が繁殖しやすくなっていることも挙げられるが、発端があの処理施設で人が喰われた事件にある事はほとんど誰にも知られてはいない。
そんな中、海外ショッキングニュースサイト「Best Gore」に、人喰いバクテリアに顔面を侵食された女性を収めた動画が公開された。女性の顔には大きな穴が開いており、目や鼻、口といった顔のパーツ全てを失っていた。
皮膚の侵食部分は緑色に変色し、顔の内部も壊死し黒ずんでいた。女性は残った舌を使って辛うじて言葉を発せられる状態だったというが、この女性が今も生きているかは不明である。
人喰いバクテリアは他にもある。
「ビブリオ・バルニフィカス」と呼ばれる菌に感染すると、数日で命を落とすと言われている。報告されている患者数は、年間平均20人と多くはないが、その細菌が血液中に侵入しようものなら半数を超える患者が死に至る。昨年、米国でビブリオ・バルニフィカスに感染した男性が、患部を切除したにもかかわらず約1カ月後には死亡している。
昨年6月にプロ野球・西武の森慎二コーチが42歳の若さで急逝したのも、「人食いバクテリア」と呼ばれるA型溶血性レンサ球菌ヘの感染による多臓器不全だった。
この菌は「人食い」などと呼ばれているが、正確に表現するなら食うのではなく人を溶かす。毒素を出して組織を液状化し「壊死性筋膜炎」を引き起こすのだ。
A群溶血性連鎖球菌とは聞きなれない名称だが、実は決して珍しい菌ではない。子どもの咽頭炎などを起こすごくありふれた細菌であり、健康な人でも5~10%は喉や皮膚に保菌している常在菌である。
ところが、このA群の病原性が変化して「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」を引き起こすことがある。実はこれが「人食いバクテリア」の正体だ。なぜ劇症化するかは解明されていない。
「解明されていない」と公にあるが、わたくし個人が入手したある筋からの情報によると、ソレはあの穴で生まれた初代人喰いバクテリアの細胞ひとつが混じる事により起きる性質変化だという。
初期症状は、発熱、筋肉の痛み・腫れ、喉の痛み、傷口の激痛など、風邪と似た症状で非常に判別しにくい。しかし、ここで誤った判断をして治療が遅れると、大変なことが全身に起きてとりかえしがつかぬ事になる。
劇症化した「人食いバクテリア」は、病気の進行が極めて速く、一気に症状が広がるケースがある。菌が急激に増殖し、通常は細菌のいない筋肉や筋膜までを壊死させてしまう。壊死の速度は1時間に約2~3cmと、信じられないスピードだ!
体の奥深くで組織が破壊されるために激痛が走り、そのとき既に肉体は深刻なダメージを負っている。菌は血流に乗って全身に回り、数十時間で多臓器不全を引き起こす。
1~3日で死亡。その死亡率は30%にも達する。
最悪、数十時間以内にショック状態で死亡することさえある。また、妊婦が罹ると発病から1日以内に死亡する例が、厚労省の調査で明らかになった。
実際にあった症例を紹介しよう。
ある50代の男性は、足に何の変哲もない「水ぶくれ」が出来た。気にも留めず放置しておくと、やがてその「水ぶくれ」は次第に大きくなり不気味に黒ずんで来た。
そして突如、急激な悪寒が彼を襲った。
床に就いたものの高熱にうなされ、体温は41度近くになった。翌朝に意識は朦朧となり、病院をたずねると即入院となった。
全身に腫れが広がり腎臓や肝臓にも炎症が現れ、2日後には多臓器不全の危機に陥った。入院は3週間に及んだが、治療が功を奏し、何とか一命は取り留めたそうだ。
現在は治療法も確立している。
溶レン菌に良く効くペニシリンを大量投与し、血中に一定量の濃度を保つ。ただし、壊死性筋膜炎を起こしている部分は、血液の循環が悪くペニシリンが届きにくいため、切開して壊死している筋膜を除去する必要がある。しかし、治療の効果が菌の増殖スピードに追いつかないケースもあり、医師が診察している最中にも皮膚が紫色に変色し、壊死部分がみるみる広がっていった例もある。
壊死が加速度的に広がる場合は、その部分を切断して止めるしかない。その50代男性も「もう少し遅ければ右足を切断せざるを得なかった」と言われたそうだ。
海外では、生命を救うために四肢を切断した実例もあり、治療は時間との勝負である。どんな病気も同じだが、早期に治療するほど生存率も高まる。
とにかく手足の傷には要注意だ。
感染ルートについては、解明されていない点が多いと曖昧な事がどの医学書を見ても書いてある。咳などによる飛沫感染、傷口からの感染が有力とされるので、簡単に言えば保菌者がいて君達の周りにもいる訳だ。
手足の傷や水虫にかかっている場所からも感染しやすいとされているので、特に免疫力が低下している糖尿病患者や高齢者は、傷が化膿したらすぐに受診することを心がけた方が良い。
最後に、この文章の信憑性であるが、医学書にも書いてある内容については全て間違いなく真実だ。しかし、アメリカのサシ処分した死体を処理する施設で産まれた細菌が引き金である!という部分については調べようがないので、残念ながら絶対に真実とは言えない。
既に証拠となるモノは隠蔽され、処分された39年も前の外国の資料を日本で調べるのは不可能に近い。薬科大学を卒業した同級生で、現在名古屋で薬局の店長をしている友人がその大学の先輩から聞いたという情報なので、怪しいと言えば怪しいかも知れない。
しかし、それが27年前に私自身がその耳で聞いた情報であり、日本初の「人喰いバクテリア」被害者を診察した病院関係者の言葉だったと言えばどうだろうか?
信じるか信じないかはあなた次第である。
外出したら手を洗う習慣をお子さんにも徹底させて下さいね!
(終わり)