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ぶっちゃけ、なろうは感想欄を読んでいる方が面白い

作者: 十日兎月

あくまでもこのエッセイは個人的な意見を述べたものです。


それを踏まえた上でお読みくださいませ。



 現在(2016年八月)、四十万以上の作品が掲載されている大手小説サイト、「小説家になろう」。

 今では出版作品も多数あり、アニメなどでその名を知った方も少なくないだろう。ユーザー登録者数も八十万人以上を超え、今最も熱い小説サイトと言っても過言ではないと思う。

 だが大抵の小説サイトがそうであるように、偏ったランキングやテンプレートな内容の作品ばかりを見て、こう思った利用者も多いはずだ。



 なんだか「なろう」って、思っていたより面白い作品があんまりねぇよなあ、と……。



 かくいう私も、お気に入りの作品は過去に多々あれど、毎日のように更新をチェックしている作品なんて、今や一つぐらいしかない。もう「なろう」を利用(元は二次専門)するようになってからかれこれ六年近く経つが、好みの作品を探すのは未だに苦労する。はっきり言ってランキングに乗っているような作品はあまり好みに合わないものばかりなので、好きなジャンルの新着順などをよく漁っているが、それでもこれは面白いと言えるような作品に出会えるのは極々稀だ。

 どうしても好みの作品を探したい場合は、お気に入りの作者の作品欄から探す事もあるが、それも今となっては漁りつくした後で、登録したばかりの頃と比べて、めっきり「なろう」の小説を読む事が少なくなってしまった。

 そんな私ではあるが、昔と変わらず続けている習慣がある。それは、



 お気に入りの作品、またはランキング上位に上がっている作品の感想欄を閲覧する事、である。



 感想欄――皆さんも一度や二度、お気に入りの作品から、それとなく覗いた事ぐらいはあるはずだ。中には感想欄を見てから作品を読むかどうか決める方もおられるだろう。御多分にもれず、私も感想欄を読んでみてブックマークに入れた作品が割とあったりする。

 そんな感想欄ではあるが、これがなかなかどうして、そこらの小説を読むよりずっとバラエティに富んでいて面白いのである。

 単純に同じ感性を持つ読者と楽しみを共有できるとか、小説を読んでいるだけではわからない細かな設定や裏話、または読者なりの推察や雑学などが見れるといった良さもあるが、何と言っても特筆すべきは、やはり読者と作者のやり取りにこそあるのではないかと、私は考えている。

 誤字脱字報告はともかくとして、キャラクターのブレや設定の矛盾、はたまたストーリー性の無さや過剰なご都合主義展開などに対する指摘。

 そして、それに対する作者の返信。

 作品によっては返信が無かったり、そもそも感想欄が閉じられているケースもあるが、大抵の感想欄には読者と作者によるやり取りがそこに記載されているはずだ。

 純粋に作品に対する好意的意見とか、作者の小粋な返信を読むのも一興ではある。私も作者の返信などを見て「この人の書く作品は、なかなか面白そうだ」と興味を抱いた事も何度かあるくらいだ。

 だが先にも記した通り、感想欄は時に議論の場として盛り上がりを見せる場合がある。ランキング上位作品などはその最たる例だ。

 特に総合日刊ランキングに載っているような作品は、その殆どが今の時流に乗った、換言すれば似通った内容ばかりで固まってしまうため、自然とそういったものに反するコメントが目立つようになる。中には荒らしと呼ばれる、誹謗中傷を目的とした悪質な感想すら書かれるケースも多々ある。

 まあ、後者に関しては論ずる価値すらないが、前者に関しては、なかなか的を射た意見もあったりして、一概にバカにできないものがあったりする。



 そこで試されるのが、作者の文章力――というわけである。



 別に誰しもがプロというわけではないし、その殆どがアマチュアだとは思うが、さりとて作品をこうした場で発表している以上は表現者の一人であるはずだ。つまり表現者として、必然的に返信にもそれなりに文章力が求められるのである。

 そして返信の仕方によっては、その作品の良し悪しも左右されてしまう。返信一つで、読者が付くか離れるかが決定してしまうのだ。

 たとえば、設定に対する矛盾。

 それを素直に認めて大幅な修正作業に入る作者もいるが、中にはおいそれと認めるわけにはいかなかったり、重要な伏線を潜ませていて詳細を明かすわけにはいかない場合もあるはずだ。そういった鋭い感想に対し、いかにして上手く説明して相手を納得させるか。ここが最も重要となってくる。

 もしもここで納得のいく説明ができなければ、小説を書く才能が無いのではないのかと疑われかねない。最悪、そこで読者が離れる事だって覚悟しなければならない時すらある。意外とここで物書きとしての質が問われるのだ。

 その代わり、そういった点を懇切丁寧に、かつわかりやすく書ける作者というのは、総じて好感を持たれやすい。私も親切に返信している所を見ると、なんだかこの人の作品を読んでみたいという気分にもなるし、気にいれば、他の作品や活動報告も試しに覗いてみようという気にもなる。

 また、そういったやり取りは、客観的に物事を見る目を養う事ができる。私もたびたび感想欄を覗いては、色々と勉強させて頂いている。

 つまり感想欄という場は、作品の魅力を語るだけでなく、書き手の成長にも一躍買う重要なファクターとなっているのである。

 ただ一つ注意してもらいたいのは、そこにはネタバレという危険性も孕んでいるという事だ。特に推理ジャンルのネタバレは、もはや致命的と言ってもいいくらいのショックが待ち受けている。よってネタバレを忌避する読者は、感想欄を覗く際はある程度注意を払った方がいいだろう。

 そんな中、ネタバレを一切気にしなくてもよいジャンルがある。特に他者が議論を交わしている様子を見るのが好きな方(私もそうだ)には是非にオススメしたいジャンルがある。それが、



 エッセイ、である。



 特に「なろう」のエッセイは、自伝や私生活を語るものでなく、主に評論が多いので、必然的に読者や作者、はたまた読者同士の衝突がよく見られる。今なんてかなり香ばしい事(上位ランキングが)になっているので、個人的に必見だ。

 中には「他人が言い合いをしているところなんぞ見て、一体何が面白いんだ?」と眉をひそめる方もおられるかもしれない。そう言われてしまうと私としても好みの問題としか言い様がないのだが、まあ単に議論好きでなくとも、いつも返信に困るという方にとっては良い参考になると思う。

 なんと言ってもエッセイジャンル(主に批判ものになるが)ほど厳しいツッコミが来る小説はない。そういったツッコミをやり過ごすための技術がエッセイの感想欄には溢れている。まあどれも的確とは限らないし、苦笑せざるをえない幼稚なツッコミや返信もあったりするが、悪い見本という意味でも参考になるだろう。

 さて、ここまで読んだ方の中には、

「感想欄だけで作品の良し悪しを決めるなんてとんでもない!」

 と憤慨する人もおられるかもしれないが、少し待ってほしい。その意見は一理あるかもしれないが、そもそもの話、興味がなければ感想欄なんて読まないのだ。むしろ感想欄だけでも読んでもらえるだけ――たとえそれがアクセス数に繋がらなくとも――ありがたいくらいなのである。

 あらすじとキーワードだけ読んで興味を失った読者、はたまたタイトルだけを見てスルーされた作品なんて、この「なろう」にはごまんとある。そういった作品の中で感想欄に興味を持ってもらえるなんて――ましてそれがきっかけで作品を読んでくれる方なんて、書き手にしてみればとてもラッキーな事なのだ。

 だからこそ私は声に大にして言いたい。ここ最近「なろう」の小説がつまらないと思っているそこの貴方、是非とも感想欄を覗いてみてほしい。そこにはきっと、タイトルやあらすじだけではわからない良さや、読者と作者の秀逸なやり取り、小説を書くのに参考になりそうなネタなど、面白いものや価値観が広がるような話がたくさんが詰まっているはずだ。これを読まずして「なろう」を利用するなんて、大きなお世話かもしれないが、個人的にはすごく勿体無い事だと思う。

 そして偏った意見になるかもしれないが、作品は読まず、感想欄だけを読むという楽しみ方があってもいいと私は思う。



 何故なら感想欄は、広義の意味で小説とも言えるのだから。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ・なろう小説の楽しみ方にあらすじの次に感想欄を読む、という方もいると言うのが分かってそんな楽しみ方が……と目から鱗が落ちました(私は本文読んでから感想欄だったので) ・そしてこのエッセイ…
[一言] 感想欄面白いですよね。 自分も作品を読み漁って新作を探す気力が失せた時は、さくっと覗ける感情欄をよく徘徊します。 当たりか外れかわからない新作を読むのって結構エネルギーを使う気がするので…
[一言] 自分も感想欄はよく見ますね~。 単純に他の読者はどう思ったんだろう?と半ば某掲示板やまとめスレを覗く感覚に違いのですが、作者さんの人柄も伺えて、中々楽しいですよね。 この内容だと、きっと賛…
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