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アリエスの願い?

「ね、ねぇ…アリエスたん…?あちらに見える黄金の光は何ですか?」


「ハマルの腕の事ですか?」


「何か腕が左の拳よりも3倍くらい右の拳が大きくて甲冑みたいで、なおかつ眩しいんですけど…」


「あれは、ハマルの能力ですよ。ハマルの全身にはもちろん追加価値は発動していますが、右腕はその200倍の力を出せる仕様になっていますね。」


「に、にひゃく!!??…でも星霊と人間の契約でしか能力は最大限に引き出せないんじゃ…?」


「それは違うぜ!」

茶髪のポニテを揺らしながら、威勢良く割って入ってきた。


「ウチは牡羊座を司る星の1つだ。牡羊座という星座はウチらが構成要素になってるんだ。」


「ふむふむ…それで?構成要素だから?」


「うーんと…構成…ようそ?があってだな…」


「さてはハマルたんバカだな?」


「な、な訳ねぇだろ!ぶっ殺すぞ!」

右腕がさらに眩く光る。


「あぁタンマタンマ!!ごめんって。」


「人間が創造した牡羊座は4つの恒星によって構成されています。その1つがハマルです。そして、現星霊王…つまり私のお父様と契約しています。ですのでこのような力を使えるというわけですね。」


「さらっと大物を出してきたね。」


「私のお父様は前回の星霊祭にて優勝者となったんですよ。」


「まじかよ。王の娘が…一般人の俺と契約して、そんでもって優勝しようと?」


(とんでもねぇな)


「ちなみに…なんでこの城には、ハマルたんとメサルたんとダル爺しか居ないんだ?」


「そ…それは…」

珍しくアリエスが寂しい顔をした。

ハマルも少し元気が無くなった。


何か嫌な事を言ってしまったのだろうか…


それに、アリエスの寂しがる顔はどこかで見たことがある。


俺は記憶を探る…


(もしかして)

アリエスが人間界に来た目的…それを話してくれた時にも同じような顔をしていた…


「な、なぁ…もし言いたくなかったら言わなくていいんだけどさ。他にはこの城には居なかったのか…?」


黙り込むアリエス。


触れてはいけなかったのかも知れない。


すると、透き通った声が小さく話し出した。


「正確には…居ましたよ。或る日いなくなってしまいましたけどね。」


「それは…お前の『願い』と関係が有るのか?」


「はい、私の『願い』は…家族を…取り戻すことです。」


一瞬空気に緊張が走った。


「隠していたつもりではありません。ただ、言いにくくて…言い出せなくて…言う勇気が出なくて…黙っていただけです。ごめんなさい。」


「いいよ。どこかに行っちゃったの?」


「いいえ、そうじゃなくて…その…」


アリエスは小さな肩を震わせながら

言葉に詰まりながらも、俺に伝えようとしてくれた。


「以前…母と妹、そしてシュラタンというダル爺の前の執事とテインという使用人が居ました。

 

 私たちは平和に暮らしていました…しかし…ある時、突然私達の領土へ侵入してくる輩が居ました。その人に今言った4人は殺されました…


私は過去の平和を取り戻したくて…

家族を取り戻したくて…」


小さな肩は震えが止まらない。


青空に似合わない雨が降る。


俺はそんなアリエスを抱きしめた。



「……」


「ありがとう、話してくれて。


 …俺…こんな時…どうしたらわからなくてさ。俺がアリエスたんの立場だったらこうして貰いたいって、思ったから。


 俺はついさっきまで高校生だったけどさ…俺も、アリエスも強い願いがあって…


 もう何言ってるかわかんねぇけど


 俺はアリエス…お前と願いを叶えたい。


 俺はそのためだったら何だってする。


 な?だからそんなツラは、可愛い顔に似合わねぇから…顔あげなよ。


 急な話でびっくりだったけど、俺にも覚悟ってもんが出来たかもな。」



アリエスが俺の胸で顔をこすった。


「離してください…変態。」


「へ、変態って…」


俺の腕を振り払った。


アリエスの目は赤くてすこし雫が見えて。


恥ずかしがるような顔をして、上目遣いで話す。


「分かりました。特訓は厳しくなりますが、弱音とか吐かないでくださいね。弱音よりも違うものを吐くかもしれませんが。」


「聞く限りヤバそうなんだけど!」


先程までアリエスと共に寂しい表情をしていたハマルが、突如定位置から俺にタックルしてきた。


また俺は芝生に大の字になる。


「お、重たいんだけど?」


「ウチには星霊祭に参加出来ないんだ。だから…その…優勝して欲しい。ウチとアリエス様の願いは一緒…多分メサルもダル爺も同じなんだ。だから…よろしくな。」


ハマルも寂しさを振り払って言ってくれた。


「あぁ、ハマルたんの頼みじゃあ仕方ねぇな。頑張るよ。」


そう言って俺の腹に座るハマルの頭を撫でた。



俺は今日…いろんなことを知った。


無知だった俺は…知って決意した。


必ず星霊祭で優勝すると。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぷはぁ~いい湯だなぁ。」

初めて入る1人だけの大浴場。


学校のプールの半分くらいのサイズはありそうな大きさに、天井と床をつなぐ、白くて大きな柱が4本…四角い大浴場から生えている。


俺は今日の出来事やら…家のことやら…いろいろ振り返っていた。


(いろんな事…ありすぎだろ。)

そうやって出来事にツッコんだ。


「おほほほほ、アツキ様湯加減はどうですか?」


「うわぁぁぁぁあ!!びっくりしたなぁ。」


「アツキ様がアリエス様を思い出してニヤニヤしていると思ったので、私も分かち合おうと…」


(1番ニヤニヤしてんのはダル爺だろ。)


「ってか前隠せ!!」


「おっと失敬失敬。アリエス様の話をすると私の男が漢になりかねませんので隠しませんと…」と言って風呂のドアから裸で歩いてきたダル爺が前を隠して浴槽に浸かった。


(とんでもねぇエロジジイだな。爺さんになっても下ネタ キレッキレじゃねぇか。)


「それで、アリエス様とはうまくいっていますかな?」


「そうだな、少しだけだけど…分かり合えた気がするよ。願いも聞けたし、すこし過去の話もしてくれた。辛い話だったけど…話してくれて嬉しかった。」


「おほほほほ、そうでしたか。それはよかったですなぁ。」


「ダル爺は、その…誰かがこの城を襲った時…どこにいたんだ?」


「…あの日は辛い…凄惨な日でしたね。私は星霊王直属の警護におりまして、アリエス様方とは顔見知り程度でした。しかし、母や王とは常に一緒に同行しておりました…」


「そうだったのか…攻めてきたのは誰なの?」


「隣の領土に居る牡牛座タウロスですよ。普通絶対に開けられない領土の仕切を持ち前の力でこじ開けて侵攻してきたと聞いております。」


「牡牛座…牛?」


「はい、その名の通り見た目は二本足で立つ牛…巨大な斧を振り回す厄災です。牡羊座、牡牛座とは他に残り10人の星者が居ます。黄道十二宮は12人で構成され、それぞれが占星術(サイン)により領土分けされているんですよ。」


「知らない事ばっかりだな。知ってるのは星座くらいだよ。毎日今日のラッキー占いとか言って、星座それぞれが順位付けされてさ。」


「人間界では黄道十二宮は毎日順位付けされて遊ばれていると?なんたる無礼な。」


「いやいや、遊びじゃないよ。占い。人の心を保つ指標、未来の指針、そんなものを見るのが占いだよ。当たるかは分からないけどね。別に優劣とかじゃなくて…強弱とかじゃなくて…ただ単にそういうのもなだけ。」


「おほほほほ、なるほどなぁ。人間は実に面白いものだ。」


そうダル爺は大きく笑った。


「で、どこにカメラ設置しておくかの?」


「出ていけエロジジイ!!!」



そうやって

そうして


今日の俺の決意は揺るがぬものとなった。





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