2回戦
1分1秒って、こんなに長かっただろうか。
入場から試合の開始コールまでの約3分程度が、途方も長く感じた。
心臓にまで響く、周りの歓声が緊張を駆り立てる。
「アリエス様!アツキ!!絶対勝てよー!!負けたら招致しねぇかんな!!」
「お二人とも頑張ってください。勝利を祈っています。」
「おほほほ!アリエス様の御有志!このレンズでしかと受け止めるぞぉ!!」
ハマルやメサル、ダル爺も…歓声に紛れて声は届かないけれど、必死に気持ちを届ける。
そして、2回戦の幕は開ける。
『これより!試合を開始します!!』
勢いの余った号令とともに、試合開始のゴングが降りる。
「アリエス!!行くぞ!!」
試合の開始と同時に、自分に喝を入れる思いで相方のアリエスと協調を諮る。
「はい!」
透き通っていて、尚且つ力強い声が返ってくる。俺はその返事とともに、周囲に10の分身を展開する。
アリエスも同じく分身を10展開し、フィールドには22人になった。会場のドヨメキと共に俺は自軍に黒光りした長い鎌、さらには剣を持たせる。
アリエスも武器を、生成し臨戦態勢に入る。
始まった瞬間というのに、汗が頬を伝う。俺はそれを肩で拭いながら相手の動向を伺う。
「天秤、我が名により汝はこれより具現化せし確率の傀儡となれ。」
気高い女性の声。その声の主はライブラだ。
差し出された右手の手のひらの上には、黄金に輝く天秤が出現する。
「カルラ、準備だ。」
ライブラが、力強くパートナーのカルラを呼ぶ。
「あいよ。」
だらしない感じで、身動きを始め出すカルラ。白い大きな布をゆっくりと剥いでいく。
まるで、マジックショーで隠れていた布のように、中身は正体を表す。
「鏡?」
反射して眩しいが、約1メートル程ありそうな大きな鏡が現れる。
「アツキ!焦らず、行きますよ!」
横目でチラッと覗かせるスカイブルーの瞳に俺はコクリと頷き、地面を蹴った。
相手まで約20メートル。#追加価値__エンチャント__#を施した足なら約2秒ほどで到達する。
「確率操作!!転倒確率大幅up」
俺はそれを見越して、右手に持った大鎌を振りかぶり地面を蹴った…はずだ…
しかし、俺の想像とは違った視界を見ることになる。それは…俺が地面を間近で見ているということだ。
いきなりだが何が起きたのか分からない。
俺が状況を把握するためには、数秒時間を取られた。分身も同じく倒れたらしい。
「転けた?」(転けさせられたのか?)
確か、アリエスが言っていた。ライブラには確率を操作できる力があると。
もしそれが予想どうりであれば、今のは転けさせられたという他ない。
「アツキ!」
アリエスの分身6体程が、具現化させた大砲を、よいしょと配置している。本体は、駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫だ。こんな大観衆の中で転けるとか、恥さらしも良いとこだな。」
そう言って俺は態勢を立て直す。
明らかに、転けるなんておかしい。地面には転ける要素もないし、転けさせる障害物もない。しかし転倒した。
「アリエス、気をつけろ。多分能力の予想は的中だ。」
「なるほど。こちらも、あのカルラという女に、一発入れるところです。あの鏡の能力も知っておかなければ…」
「行くわよ!」
「ええ!」
「行くぜよ!!」
「あ…はい…」
アリエスの分身がそれぞれ声をかけながら大砲を準備した。微笑ましい光景ではあるが、それも一瞬で目を丸くすることとなる。
「うてぇぇぇぇえい!!」
指揮する分身のアリエスが号令と共に、他の分身がスイッチとなる紐を力強く引っ張る。
黒く、太陽に光って光沢を増した大砲は、爆音と共にビーム砲を発射した。
空気を切り裂くような轟音と振動。直視できないほどの光線がカルラを襲う。
俺とアリエスはそのビーム砲の行方を追った。ライブラの天秤は消滅した。しかし、2人はそれを知らない。
光線のごとく放たれたビーム砲は、カルラの持つ鏡の中心を射抜いた。約5秒ほど放射されたビーム…それは全て鏡が受け止めた。さらに数秒後…カルラは鏡を本体のいるこちらに向けてくる。
そして…
「逃げろぉぉぉお!!!」
鏡が、受けたビーム砲の光線を俺とアリエスの居る方向へ撃ち放った。
地面を抉り取り、魔障壁の壁をも揺らす高威力。その威力が俺たちを襲った。
「分身を移動できる能力がなかったら…跡形もなく消えてたぞ…」
鏡の位置を変えたことに違和感を感じたアツキとアリエスは、放たれる瞬間に分身と本体を入れ替えて、なんとか切り抜けた。
「これで、ようやく相手の能力に確証が持てましたね。」
「ようやくって…結構ヤバい試し方だぞ。」
「そうでしょうか。それより、ライブラは確率を操作できる能力…そして、カルラは鏡で受けたダメージを反射させる能力ですね。」
「え、ヤバくね?」
「はい、ヤバいです。」
開始早々、相手の能力の高さに思い知らされる2人。
作戦立てようがないぞ、これ…




