仮面の男
結論から言うと俺の予想は見事に外れていた。
川に行ったところまでは合っていたがそこからが違った。
ユウの話によると最初は川の方には行かず森の中で遊んでいたらしい。
しばらくするとマオが木に登って、川に人が流されているところを発見し、エルが川から魔法で助けた。
そして回復魔法をかけたが傷が一切治らなかったそうだ。
そこから俺を呼んでくるようにエルに言われたユウが来たところまで来て、今俺は川に向かっている。
川までの距離は大体5キロ、走って行けば五分ぐらいで行けるだろうまあユウなら……。
俺はというとそんな常識はずれみたいなことは、もちろん出来ない。
だが俺は今ユウと一緒に森の中を全力で駆け抜けている。
タネは簡単、再生で自分の体を常に再生することで、疲れを感じさせないようにして俺は、ユウについて行っている。
俺が川に着くと、マオとユウが顔を上げる。
「あ、フェスにー」
マオの横には、傷だらけで倒れている仮面の男に回復魔法をかけているエルがいた。
「兄ー魔法が効かない」
エルが何度も回復魔法をしているが効果を感じられない。
それはどうやら剣でできた傷だけだ。他の傷はエルの魔法で治ったのだろう。だが剣の傷が致命傷になっていて、このままだと危険だ。
「どうやらそのようだな、エルちょっと寄ってくれるか?今からサクリファスを使う」
「‼」
エルが驚くのも分かる、
サクリファス、回復魔法の中で最も凄い魔法だと書いてある本を読ませたことがあるからな。
もちろん俺も本でしか読んだことがない。
それでも使うと言ったのは、別に嘘を言ったわけでもない。正直再生の能力を使って治した方が早いのだがちょうどいい実験台がここにあるので以前から試したかったサクリファスを使うチャンスだからだ。
そして俺の再生には過去の自分をトレースすることができる隠し技がある。過去の俺は再生を使っていろんな時代を生きてきた。そんな過去の俺は、なにかを極めている時代があったみたいで、そんな何かしら極めていた頃の俺をトレース出来るのだ。残念ながら記憶まではトレースできないが。
今からトレースするのは、回復魔法を極めた過去の俺だ。
(再生、トレース)
俺の体に変化ない。変わったのは回復魔法に関する知識だけだ。
それと同時にこの川流され仮面の男をサクリファスで治せないことを知る
「エル、こいつの傷は魔法では治らない」
「フェスにーこの仮面の人治らないのか?」
マオが泣きそうになりながら俺を見上げる。
「あーいや、治るんだが、マオとユウは家に帰って風呂を沸かして来てくれ、大事なことだから」
「本当にその人大丈夫なの、おにーちゃん?」
「大丈夫だ‼にーちゃんが嘘ついたことがあったか?」
「んーんー、ない」
「とにかくここは任せておけ」
ユウたちがいなくなるとエルに話しかけた。
「エルこの傷は、ただの傷じゃない。魔剣で斬られた傷だ。この魔剣で斬られた傷は恐らくもう治らない」
「兄ーどうするの?」
「簡単だ傷口を広げるだけだ。魔剣で呪いが付いている傷口を新し傷で上書きするんだ。俺は、ナイフで傷口をえぐるからエルは速攻で回復魔法をかけてくれ」
「ん、兄ー頭いい」
「まあな、じゃあやるぞ!」
俺はナイフを取り出し仮面の男の傷の上から切る。
5分程で終わらせたが正直かなりグロイ。
ユウたちを帰らせたのもこれが原因だ。
エルは割と平気そうにしているが子どもに見せていいものじゃない。
だが上手く呪いを上書き出来たので良かった。出来たらいいなーくらいで実験してみいたのだ。何せ呪いなんてあまり拝めるものじゃないからな。
「よし‼帰るか」
「ん!兄ー、」
帰ろうとするとエルが俺を呼び留めた。
「兄ーご褒美」
「…いまか?何もあげられるものなんて持ってきてないぞ?」
「お姫様だっこ」
マジかー妹は俺にご褒美をくれるなんて
「しかたがないな~」
俺はエルをお姫様だっこする。
「兄ーのにおい」
エルも俺の方に抱き着いてくる。
1分程経っただろうか永遠に感じるような時間を過ごし
「エルもういいだろう、帰ろうか」
「兄ーこのまま」
「このまま帰るのか?でも仮面のやつを置いていくわけにはいかないぞ」
「ん、」
仮面の男を見ると、エルの魔法で宙に浮いていた。
「これでいい?」
「分かったよ、このまま帰るか。」
俺は、行より遅く帰るのだった。