仮面の男再び2
(どうやらマオは勝ったようだな、まああの程度の実力じゃあマオには勝てんだろう。問題はこいつか)
俺は、以前とほとんど変わっていない相手の実力に戸惑っている。俺の事を憶えているのなら、この程度でまた戦いに来るのはおかしい。
とにかく俺は、相手の動きを観察しながらそんな事を考えていた。
「くそ!使えないやつめ!あんなガキ一人も倒せないなんて」
最初の余裕はどうしたのか仮面の男は、焦っているみたいだ。
「おい、あんた一つだけいいか?」
俺は、さっきから聞きたかった事を聞くことにした。
「何ですか、私はやさしいですから何でも答えて上げますよ…ここに来た理由とかね」
「まさにその通りなんだが、何でここに来たんだ?」
俺は剣をかわしながら質問する。
「それは簡単ですよ!あなたに以前記憶を消されたからですよ」
「⁉」
驚きはしたが、やはりそうかという思いもある。俺の再生の能力で消された記憶というのは、どんなことをしても戻るはずがないのだ。だがこの男は、俺の能力をなんらかの形で破ったのかもしれない。もしそうなら、俺の再生(フェニックス」の能力の弱点になる可能性がでかい。
「少し私の話をしましょう」
こいつばかなのかあほなのかは、分からないが話てくれるみたいだ。
「私は昔、ゼクスという男を探している時にある村で酔っ払ってしまって朝起きるとゼクスの仮面を持っていました。その時の私は、ゼクスを見つけその帰りに酒を飲み酔っ払ってしまったのだと思っていました。ですが最近になって幹部の一人に言われたのです。ゼクスの時の話をしてほしいと。私は話しました。記憶が一部抜けっていることも。ですがフィーア様は、魔法で過去を見ることで私に何があったか見てくれました。そして記憶が無い部分にあなたがいたそうです。私を倒し魔法で記憶を消し、村で酔っ払ったように偽装したあなたが。だから私は、フィーア様にお願いして倒す許可をもらいました。フィーア様は三人の部下と私に力をくれました。そして私はここに来たのです。ちなみにさっき倒されたボルさんと違い後の二人は、本物の実力者です。今頃君の大切なお仲間が殺されていることでしょう」
(なるほど過去を見ることができるなら記憶を消しても意味がないか。それよりこいつ幹部の人の名前を出してるしホントに大丈夫か?とりあえず聞きたい事も話してもらえたし、さっさと倒すか……再生、トレース)
今回も剣術を極めた俺を再生させる。
「お、やっと本気を出してくれましたね、ではこっちもフィーア様にもらった力を出しましょう………オオオォォォ」
仮面の男から黒い魔力が出始める。
「はぁはぁ、どうですかこの素晴らしい魔力は‼この力ならあなたに勝てますよ!」
仮面に奇妙な文様が入り、やがて仮面の男から角が生える。
仮面の男は剣を構え俺に向かって振り下ろす。トレースをしていなかったら反応できずやられていただろう。だが俺は、それをしっかりと剣で受け止める。
(重い!)
本気のマオ並みの力に押されいったん後ろに下がる。
「どうですか?これが私の力です、手も足も出ないでしょう?」
仮面の男は再度、俺に剣を振り下ろす。
だが俺はすでに相手の剣の間合いから外れ、反撃に出る。反撃来るとは思っていなかったのか、少し遅れて防御に入る。それでも防御に間に合い俺の剣が弾かれる。
その後も似たような攻防が続く。
「なぜ私の攻撃に耐えられるのですか?おかしいこんなことある筈がない」
「お前さあー攻撃が単調なんだよ!パワーもスピードも俺より上なのに攻めきれないのはそのためだ、もう飽きたし終わらせようか」
こう言うと仮面の男はさらに攻撃をするが、俺にはただ素人がただ剣を振り回している様にしか見えない。マオに勉強させるために今まで手加減してきたが、もうその必要もないみたいだ。
俺は剣を仕舞い素手で仮面の男を殴る。腹の部分を殴り相手を気絶させるつもりでいたが、殴られても気絶はしなかった。
「グハッ、コノワタシガ、マケルンテ、オオオォォォォォォォォ」
仮面の男の魔力がさらに上がり、俺は仮面の男のスピードに追い付けず殴られた。
飛ばされながら体制を整え剣を抜く。
(まさか一発もらうとは、結構油断してたしな、くそ)
自分の力を過信していた事に腹が立つが、今は目のお前の敵に集中する。
さっきは油断して体が反応していなかったが、今は十分に対処可能だ。俺のトレースの弱点は、過去の俺をいくら再現しようと今の俺の体についてこれない事だ。もしも俺が過去の俺の動きを一瞬でも完全再現しようものなら今の体は、壊れてしまうだろう。
だが俺の右手には、再生という能力がある。この能力を使えば俺の体を壊れる前に再生できる。
だから俺は、皮手袋を外す。
(これを外すのもひしぶりだな)
そして俺は、今日初めて過去の俺の完全再現をする。
マオの視点
アニキの戦いをずっと見ていたけど、まさかアニキが押され始めるとは思わなかった。
仮面の男が、突然狂い出したと思うとアニキが吹っ飛んでいた。ギリギリ目で追えるかどうかだったけど何とか見える。
アニキも相手の動きに、何とかついていっている。俺も加勢しようかと思っているとアニキの雰囲気が変わった。
俺と訓練しているときには、見たことがない感じで一瞬だけどアニキに恐怖を覚えた。だけどそれはすぐ消え、ただアニキってやっぱりすげーと思った。
そして今度は、俺の目にも何が起こったのか分からなかった。
ただ気が付くと、仮面の男の両腕が消えていた。
フェスの視点
仮面の男は、両腕が無くってもまだ立っていた。
「グワァァァァー」
仮面の男は腕を失ってなお、俺に向かってくる。仮面の男にもう理性はなく目が完全にイっている。
俺はせめて楽に殺してやろうと、剣を構える。人を殺すことに少し抵抗はあるが、こいつは悪だ。ためらうことはない。そう自分に言い聞かせる。
だが仮面の男が途中で力尽き、俺は剣を収めようとするが異変に気付きやめる。
仮面の男の魔力が上がってきているのだ。
そして、俺を巻き込んでそれは、爆発を起こした。