目覚めの前のお仕事
魔界墓地、そこには歴代魔王たちが眠る墓があった。
そして歴代魔王最強とまで言われた13代目魔王カロンの墓の前には今1人の老人がスコップを片手に穴を掘っていた。
老人は、無言で穴を掘る。
十分ほど同じ作業をしていた老人に変化が訪れた。お目当ての物を見つけたのか老人がスコップを置き穴の中から人が一人入りそうな箱を取り出す。
老人はその箱を重そうに開けると中にあった物を今度は持っていた袋に詰めていく。
全て詰め終わると老人は立ち上がり消えるようにその場から離れて行った。
勇者しか抜けない聖剣アーロンが刺さっている台座の下には世界を救った勇者が眠っている。
まだ夜も明けない時間、老人は音もなく現れると聖剣に手をかける。
数秒もしない内に聖剣が輝きを放ちあっさりと台座から抜ける。
老人が聖剣を仕舞い台座の下から一人の若い女性を取り出す。
そして布でくるむと抱えてその場から消えって行った。
古くからエルフが住む森には1本の巨大な木がある。その木はある一人のエルフが植えた物だ。
そのエルフは、エルフの中では伝説のエルフと呼ばれその墓は木の横に丁重に扱われていた。
そこにも老人は現れる。だがその姿はボロボロだ。服は破れその下から血が滲み出ていた。
老人は肩で息をしながら傷口に右手をかざす。するとまるで時間戻るように傷口がふさがり破れた服も直る。
そのあと老人は目的の物も取り、闇の中に消えて行くのだっだ。
山奥にある一軒家の地下にその老人はいた。
薄暗い部屋の中、老人は淡々と作業をこなしていく。
そして作業が終わったのか老人は一息つく。
今老人の目の前には二人分の骨と一人の死体がある。
老人はまず死体に右手をあてると死体の変化を見ずに次は骨に右手をあてる。
今度も結果を見ずに残った骨に右手をあてる。
そして老人の目の前にさっきまでの光景は無くなっていた。
その光景に満足したのか、老人は狂ったように笑い始める。
しばらくして笑い終わると最後に自分自身の体に右手をあて老人の意識は無くなった。