その1
そこは、月が二つあり空が鈍い蒼に染められている世界。
地面は見渡す限り砂に覆われている。草木が一つも無く、泉も見当たらない。
ここにいるのは、俺たちしか居ないのだろうか?
砂ボコリがまうなかで、緋い髪に金色の瞳の天使が立っていた。緋色を纏った剣を持って‥‥‥
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ここは、魔界と呼ばれる場所だ。天界、人界や下界から追い出されたものが最終的に行き着く場所。
魔界には、険しい環境の場所しかない。吹雪が吹き荒み、氷に覆われた場所。山が火を噴き、石さえも溶かす用な灼熱に侵されている場所。木々が生きているように動き出し、一度迷い込むと戻っては来れない場所。そして、砂に覆われて、人が住めない環境が続いている場所。そして、ここにいる魔獣は異様に強い。
噂では、伝説上にしか聞かないヤツらもいるらしい。
天界、人界や下界は絶対に魔界よりは段違いに住みやすい。
しかし、魔界もやはり他の場所よりましな比較的暮らしやすい場所もあるのだ。
その場所は、いわゆる人型と呼ばれる魔物達が暮らしている。小さいながらも街があり、その街を統治している者がいた。
「新たな火種が飛んでくるな。また、同胞が増える。さあ、どんな風に退屈を紛らわせてくれるかな」
窓の外で二つの月が変わりなく蒼い光を放っていた。
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僕は、鬼崋 白夜という。
髪が純白で、翼が一般的な蝙蝠みたいな翼じゃなく天使の翼を漆黒に染めたみたいな翼だったから、「間違って、悪魔に産まれた天使」や、髪が白いことで「純白の悪魔」などのあだ名が付いた悪魔だ。
しかも、面倒なことに、産まれた家が中途半端に格式の高い貴族の家だった。
産まれた時に、殺されかけたが母親が守って家を出た。まあ、僕が物心つく前に弱り死んでしまったけれど‥‥‥
そして、僕は捨てられた。まあ、一ヶ月位生きていける食料と硬貨はくれたが、暗殺者が送り込まれて来た。まあ、さしずめ僕の存在が生き恥だと言うことだろう。
しかし、生き延びるだけの実力だけはあった。十五才の時に、森に移り住んでからは、魔獣と渡りあったりして死にかけながら今では住んでいる森にいる魔獣を従えられる位に強くなった。二十歳に成ったとき、生きているのを元の家の者に見つかってしまった。しかもレベルが二千レベを超えていたから余計自分の手元に戻そうとした。二千レベは魔界でも、十本指に入るレベルだそうだから‥‥‥
しかも、白い羽は先祖がえりだったそうだ。そのお陰か、十五才の時にはもう七百レベを超えていた。そして、家の者からの追跡はもっと過激になった。
ここで、今更だが僕がいる場所について説明しよう。
ここは、下界と呼ばれる人外が住まう界だ。まあ、人間が勝手に呼んでいるだけで住んでいる住民は認めてないけど、僕は成る程と思っているよ。確かに、人界より下に在るともいえる場所に在るしね。
そして、ここは力のある魔族と呼ばれる人に近い種族が統治している。貴族なんてモノは力の具体的な表現方法なだけなんだけど、効力が結構あって踏襲制だから、力が無くても威張ってる輩もいるね。そして、僕も貴族の家に生まれたんだけど面汚しだからね‥‥‥
まあ、今では追われてて現在も逃げて隠れてる最中なんだけど、あっ、家が見つかった~ しまった、はあ‥‥‥
えっと、どこまで話したかな? ああ、貴族のくだりね。
あとは、レベルの事だけかな? レベルっていうのは、力の数値化の事で簡単に測れるよ。自分でも測れるし、まあ高いアイテムが必要だけどね。
これぐらいかな~ よし、奴らどっか行ったし。ヨイショ。
立ち上がって、歩いていく様子は気楽で、追われている事も感じられないぐらいだった。それは、私の興味を惹き付けるには十分だった。
強い風が吹き抜けた。
「結局、あの子は誰だったんだろう? 案外、いないとされている妖精だったりして‥‥‥ 無いな。さて、行きますか。生きるために」
そう言うと、あの家の者に見つかってしまった元我が家を、振り返りながらローブを深くかぶり、あの家の者に見つからない土地に行くために歩き出した。
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砂が舞い上がり、視界を使い物にならなくし、そして行く手を阻む。
そこに、立っていたのは緋色の髪をはためかせ白い羽を広げている天使だった。
白の中の緋色は幻想的だっただろう、砂の中でなければ‥‥‥
ここは、どこなんだろうか? なんだか、さらさらした粒子に覆われている大地は歩くをかなり邪魔してくる。
私は、天使と呼ばれる種族だ。名前は特にない。気がつけば生まれていて、目的も何も分からなかった。
そんな中、会った奴らは話しかける間もなく襲いかかってきた。
まあ、返り討ちしたが‥‥‥
だから、私は彼らの敵対する者なのだろう。それが分かっていても自分のここにいる意味を聞かずにはいられなかった。
そんな中、視界に新しい何かが現れた。
三角の屋根が特徴の家というものだろうか?
そこから漏れる暖かそうな光は、何故だか私でさえも受け入れてくれそうだと思った。
私は走った。やっと自分の存在意義が分かると思ったからだ。
扉を荒々しく叩き、『誰かいないか』と叫んだ。
すると、扉はゆっくりと開いてこちらを迎入れた。
その家には、老婆と小さい娘が住んでいた。何でも、泉がこの近くに有ったため住める環境だそうだ。
私が天使だと聞いても態度は変わらず優しかった。笑顔を絶やさなかった。そして話してくれたのだ、私の、いや、天使の役目についてを。
天使という種族は、この魔界の掃除屋らしい。気がつけば発生しており、街を襲って数を減らすらしい。その様子は地獄を覗いたみたいに残酷で魅了される風景だという。
だから、私達はあなたを迎入れたのだと言っていた。私は分からなかった。なぜ迎え入れてくれたのかを。
それが昨日の夜のことだった。
目を覚ますと、そこは廃居に変わっていた。あの老婆と小さい娘はなんだったのだろう?
あいつらは何がしたかったのだろうか?
そして、この胸に残ったもやもやはなんだのだろうか?
まだ、私には分からない。
すべての答えを‥‥‥
長い目で見ていただけると有り難いです。
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