ある巫女達の死闘
「あらあら、あんたの連れ、ぶっ飛んじまったみたいだねぇ。」
私の隣にいる妖精、ヘルノは呑気にそう言った。
「…慣れてもらわないと困るわ。そのうち、こんなもの比じゃないほどの惨劇を目にすることになるのだろうから。」
そう遠くない未来を思いながら私は獣共を蹴散らす。
「今は、目の前の獣共に集中しましょう。」
不意に木の折れる音が耳をつんざく。とてつもない悪寒がする、死を感じさせるくらいの。木の折れる音と気配が少しずつ近づいてくる。これは少し、覚悟したほうがいいのかもしれない。
「あたい達は、とんでもない厄病神を守ってるのかもしれないねぇ。」
全くだ。ついこの前までこんな奴はいなかった。それ以前に、この数の獣があれだけの短い時間に集まっていたというのも考えられない。斗真を護衛するのは思ったより骨が折れるかも…。私はヘルノの元まで向かった。
「…ヘルノ、覚悟はいいかい。」
「何を言ってんだ、あんたより怖い奴なんてのはいないよ。」
ヘルノの軽口が妙に頼もしく感じる。
「そうね、それもそうだわ。」
気配はすぐそこまで迫っていた。
現れたのは異様に大きい妖怪。顔だけ、特に口が大きい、形状はドロドロとしたゼリーのようなもの。更に異様なのは私たちが殺した獣の死体を食らい、自身の体積を増やしていることだ。
「これは早く殺したほうが良さそうだわ。」
「あたいの炎でいっぺんも残らず燃やしてやるよ。」
今もなお、私たちの殺した獣を食い漁っている獣に拳を入れたが、ぶにょっと衝撃を吸収される。厄介だけど、やるしかないわね。博麗の巫女は代々、妖怪退治を担ってきた。そうすれば色々な妖怪と出会い、戦い、わかり合ってきた。分かり合えないものは殺したし、人間に危害を加えないものは殺さなかった。そうして培われたこの博麗の巫女の力は基本的には万能である。たとえば威力の通らない幽霊や、ゼリー状の敵に対して有効的に拳が入るようになったり、動体視力が上がったりする。
私の場合は、ね。
本当は結界やお札などを使って妖怪退治を簡単にする。けれど、幾分私にはそっちの才能はなかった。努力すれど現れる結果はない。まぁ、実際現実なんてそんなものだろう、たくさんの期待があるなか成功する者もいれば失敗する者もいる。この世界の大多数を後者が占めるだろうし。でもそこで失敗した者、成功した者にそんな差はないだろう。そしてそこから先も。どんな人間にも失敗に気づき、それを糧にして自分自身を変えるチャンスは必ず来る。その前に命が尽きるか尽きないかの違いがあるだけだ。私は今も変われたかどうか不安だ。
先ほどから最大出力で殴ってダメージを与えているのに相手は獣の死体を食って回復する。これじゃ、埒があかない。けれど、これ以上本気を出すと自分の命を削ってまで戦うことになる。最近大量の力を使ったばかりで、それは避けたい、今はこのまま獣の死体が無くなるまで殴り続けるしかない。幸い、永遠に殴り続ける体力はある。




