表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

ある男の旅行記・5

ドンッと音を立てて博麗が炎のすぐ左隣を駆け抜ける、そして一気に距離を詰める。それを見抜いたように、ヘルノは右に蹴りをかます。軽く右にいなし、博麗は右肘を腹に入れた。が、左手で制される。その勢いのまま首を狙ってお祓い棒を振るも、炎により防がれる。二、三歩博麗は後ろに下がり間合いを取る。レイムは珍しそうに楽しそうに眺めていた。博麗が顔に向かって鋭い拳を繰り出し、受け流される。ヘルノが膝を、空いた脇に入れようとするが払われる。

「降参。」

唐突な白旗宣言に唖然としてしまった。

「これ、自分でやっててアレだけど、いつ終わるかわからないじゃない。」

ヘルノも拍子抜けした顔をしていた。

「めんどくさいからやめたやめた。」

あぁ、とヘルノが声を漏らした。

「少し、白熱しすぎたみたいだね。」

辺りを見回しながら、ヘルノはため息をついた。

「こんなに集まるまで気づかないなんて。」

気づけば周りから荒い息遣いが聞こえる。まだここに来て日の浅い俺でもわかる、この息遣いは人間の物じゃない。一体、人外が何人、いや何体いるっていうんだ。至る所、四方八方から聞こえてくる。博麗の横側の草むらから何か大きい獣の様なモノが飛び出してきた。

危ないっ、声に出なかった。拳一つで潰されたモノを見て、博麗の強さを改めて感じて、その言葉を俺は飲み込んだ。

「斗真、私達の隣まで来てくれないかしら。」

言われなくても行くっつーの。改めて周りを見渡すと息遣いが聞こえる場所から黄色く淀んだ目がこちらを見ているのがわかる。破裂したっておかしくないくらい心臓が脈を打っている。膝が震えないのがおかしいくらいだ。

グギャァァァァア

焼け焦げた肉の匂いが鼻をつき、思わず膝をついた。

「ぅぅ、おぇえぇぇえ…」

「あら、ごめんよ。こういうのが苦手な人間は久しぶりなもんでね。」

「ちょっとは考えて行動してくれ。」

頭がカンガン鳴り響いている、意識が安定しない。博麗とヘルノの呑気な会話が遠くから聞こえる気がする。俺へ飛びかかっている獣が俺の目の前に。

え、あ、俺、死んだ、かも。

獣はその恐ろしい形相のままガラスのように空中で固まり、地面に落ちて割れた。チルノが俺の側まで来て背中をさすってくれている。

「だいじょーぶか?」

チルノに守られながら近くの木まで這った。木に寄りかかり力を抜くとようやく返事が出る。

「ありがとう。」

血の匂いが充満している。もう胃の中に何も入っていない。まぶたが重くなり、されるがままに目を閉じる。周りの音が遠のいていく気がして、それがなぜか心地よかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ