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ある男の旅行記・4

俺は目覚めた森の中に戻り、博麗、レイム、そして俺の三人で歩いていた。

「最初はどこへ向かうんだ。」

少し先を歩く博麗が立ち止まってこちらを振り向く。

「霧の湖と呼ばれる場所よ。初めてレイムが私たちを導いた時、そこに着いた。それ以来指す場所は変わっていない。」

「なら、何箇所向かえばいいかもわからないということか。」

ごめんなさいと博麗は呟いた。誰も何もわからない状態、先の見えない長くなるであろう旅路に思わずため息をついてしまう。

「そんな露骨にため息をつかない。不安なのは私だって同じ、だから、頑張りましょう。」

ため息の原因の一つとして君も入ってるんだ。

「………あぁ。」

言えるはずないのだ、こんな前向きな人に。これを言えば悲しませてしまうことぐらい、いくら不器用で鈍感な俺でもわかる。ふと辺りが少しひんやりしてきた。

「ちょっと、私の後ろに来て。そこから離れないでと言われた。」

レイムを連れて博麗の真後ろになる形となった。一体どうしたんだ、口にする前に正面から目で追うのがやっとなくらいの速さで大量の氷が無作為に飛んできた。きっと刺されば結構な傷となるような尖った氷。博麗は自分と俺に当たりそうな物だけいとも容易く叩き落とし、飛んできた先を睨む。水色の少女が視線の先から現れる。

「いざ!じんじょーに…しょーぶ…」

最初は威勢良く叫んでいたものの人見知りなのだろうか俺と目があってから声の大きさが小さくなり俯いてモジモジし始めた。

「見ればわかるだろう、チルノ。今日は訳ありなんだ。勘弁してくれないか?お前も嫌だろう?」

「…まぁ、そうだけど。」

最初に博麗神社に辿り着けて本当に良かったと感じる。俺が目覚めた場所とここはさほど遠くはないだろう。

違和感が頭を支配する。チルノという少女はどうして俺の存在を知らなかったのだろう。見ていなかった、というわけではないだろう。こいつは博麗がいることを知っていた、知っていて氷を放ち、勝負を挑んできた。でもそうなれば知らない人がいることくらい簡単にわかったはず。じゃあどうして。そこまで考えた時、一つの考えが浮かんだ。

「博麗、もしかしてあと1人どこかにいるんじゃないか?」

きっと博麗はそんなのわかってると言いたかったのだろう。しかしそれは馬鹿でかい女性の笑い声で阻止される事となる。

「相変わらず馬鹿だねぇ、チルノ。」

チルノと姿が似た女性が奥の方から木をかいくぐって飛んできた。違うのは赤いのと背が高いことだろう。

「ヘルノ、どうしてもこうもイタズラばかりするんだ。」

彼女は鼻で笑うと

「楽しいからに決まってるじゃない、それにこの子の修行にもなるしね〜。」

「勝手に修行相手にしないでちょうだい。」

チルノと目があった。つい怯えてる姿に可愛らしさを感じ微笑んでいると、向こうも笑顔で返してくれた。友好的なのかもしれない。

「そっちは誰なんだい。里の人間じゃなさそうだが。」

「言えないわ。ごめんなさいね、あともう少し待っててくれるかしら。」

「…あんたがそういうんなら待とう。どうせ力づくでやったって教えてくれないんだろ?」

ゆっくりと博麗は頷いた。ヘルノは右手に炎をポッと灯し満面の笑みを浮かべる。先程とかわって辺りが暑くなり始めた。

「教えてもらう、もらわないは関係なしにあたいはあんたと戦いたいっ!」

わかっていたのだろうか博麗は軽く鼻で笑うとお祓い棒を振り回しながら、手で挑発する。ヘルノの炎は勢いを増す。

「お、おい!ちょっと待て。こんな所で炎なんて使ったら火事になるんじゃ、」

ヘルノは豪快に笑った。

「あたいを舐めてもらっちゃ困るね。これでも妖精なんだ、自然を傷つけるような事はしないさ。」

彼女の周りを炎が覆う、熱気が離れているこちらまで伝わってくる。

用心棒の意味がようやくわかった気がする。

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