第7話 都会の目覚め
昨日開けっぱなしで寝てしまったカーテンが外からの風に揺れ、窓からは柔らかな光がさしこんでいる。最近にはなかった、気持ちのいい目覚めだ。一体何時だろうと思い、壁に掛かったデジタル時計を見る。既に11時30分ではないか。寝過ぎだ。昨日何時に寝付いたかは知らないが、恐らく近年まれに見る睡眠時間。その理由は、夜遅くまでパソコンにはりついて慢性的に睡眠不足だった事だけではないだろう。
適当なものを食べて暫し時間を潰す。窓からは絶えず涼しい風が流れこんで来ていて、とても今が夏だとは思えない。これなら都会も悪くないなと思う。ひょっとしたら今日は、ここに帰って来ないかも知れないが。
ふむ……それにしても暇だ。昔の栄光にでも浸ってみるか。かなり埃を被ったダンボールの蓋を開け、色々な思い出の品を引っ張り出す。ここ暫くは過去を思い出すのが嫌だった。しかし、それが嘘のように思い出の欠片を取り出しては口角が緩んでいる自分。あの魚が俺に何かを運んできたかのようだ。
また、時計を見る。あれこれしているうちに、気がつけば13時を回っていた。確か昨日も、これ位の時間にここを出たんだっけ。カーゴパンツと白いTシャツを着る。髪は……お世辞にも整っているとは言えないが、この方が見分けやすいだろう。なので放っておく。
さて……出るか。