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諸魚人の水難  作者: 木耳
第1章 いざ水中
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第1話 突然の来訪者

 海面は凪いでいて、空もいい夏晴れ。海風が吹いているから暑すぎず寒すぎず。カモメがあちらこちらで鳴き、実にいい海だ。そう思いながら、消波ブロックに当たる心地よい波の音を聞いていた時の事。それより手前、というか俺のすぐ近くで何かが水音を立てた。どうせ小魚でもいるのだろう、と思いつつ下を見ると、そこには銀色の長い魚。

 リュウグウノツカイ。

 しかもまだ生きている。泳いでいるのだ。体を変な角度に傾けてよろよろと。体をくねらせる様子はない。ただ傾いて、水面から僅かに突き出た背ビレだけがゆっくりと動いている。

 俺はリュウグウノツカイの事など知らないが、この泳ぎ方からして弱っているのだろう。だが残念。生憎俺は、本当に何もわからない。タモで引き上げたってそれからどうすればいいのか。そもそもタモを使ったら鱗は剥がれてしまわないのか、それすらもわからない。

 かといってエサになりそうなものなど持っていない。周りを見渡しても、釣り人はおろか人自体が居ないようだ。

 困り果てていた時。

「あのー……」

声がした。周りに人はいない。声は、俺のすぐ側から、即ちリュウグウノツカイから発せられているようだった。

「リアル竜宮の遣いのお迎えが来たってか……?」

思わず呟いてしまう。

「あ、物分かりが良くて助かります」

……俺はどうかしてるんだ。魚が喋ってるなんて、どうかしてる。

 リュウグウノツカイは、死骸が海岸に打ち上げられて、水族館で大事に標本が飾られるような存在だ。生きたままここで泳いでいるところからどうかしている。しかも、何故喋る。

 俺の頭のネジは何をきっかけに外れたんだろう。

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