序章 第一節 核兵器
人類ははじめて自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。これこそが人類の栄光と苦労のすべてが最後の到達した運命である ――ウィンストン・チャーチル
核兵器は核分裂反応または核融合反応によって得られる核エネルギーを破壊力に利用した大量破壊兵器の一種であり、核戦略とは戦略爆撃機や弾道ミサイルなどの運搬手段を含めたその核兵器の破壊力を活用するための戦略である。核兵器には超高温の発熱、爆風や衝撃波などの破壊効果、放射線効果、放射性降下物の散乱、電磁パルスなどの影響を及ぼす兵器であり、従来の火砲などの兵器とは異なる性質を持っている。
核戦略はこのような核兵器の特性に立脚しながら国家の安全保障や国家の目標達成のために決められるものであり、核兵器の開発、核攻撃の目標の選定、発射官制、核攻撃に対する防護や被害管理などの手段を包括している。ただし留意すべき点として核兵器には短期間のうちに社会の機能を停止させるほどの物理的破壊力があり、したがって核攻撃がないとしても核兵器の保有によって相手の軍事行動を強く規定することができる。つまり相手国が攻撃的行動を行えば自国が懲罰的な報復を行うことを核兵器によって威嚇することで、相手国の攻撃的行動を思いとどまらせること、すなわち核抑止が可能となるのである。
だが一度核を使ってしまえば待っているのは止まることを知らない核の応酬、そして世界規模の破局。だからこそ超大国同士の全面核戦争は絶対さけなければならない。幸い世界は今平和にある。いつ切れるかも分からない綱渡りをしながら。