03☆:BACK TO the YOROZUYA
1日1話のペースでいきたい。
〜僕は迂闊にも万屋の楽しさを知ってしまった。
月曜日の学校帰り。
僕は再び万屋の前にいた。
店の前には新鮮なフルーツが並び、とてもあのアングラなイメージの店ではない。
「おお弟さんか!」
昨日店番をしていた初老の男が店の前で躊躇する僕を見つけて呼び掛けた。
「入荷したてのフルーツなんだけど食べるかの?」
と言って試食用に小さく切られた果肉を楊子に刺して僕に渡した。
「何のフルーツですか?」
僕はそれを口に運びながら聞いた。
赤い色をしていて、一見スイカのようだが。
「ブタブタの実じゃよ。十数年前に食べさせた奴は優秀な戦闘機乗りの賞金稼ぎになりおったわ」
―あっ危ねぇ!
僕はあわや口に入るブタブタの実を寸前で止めて男に返した。
「いらないのか。残念だ」
―何が残念だ!
男はその果肉を道に放り棄てた。
すると駅前をうろついている野良犬が走ってきて、さっと拾った。
そしてその野良豚はこちらをちらりと見て、のしのしと走っていった。
―謀ったな!謀ったな!
店に入り商品を眺める。
店の隅に大きめの段ボールが置いてあるのが見えた。
「農薬未使用、安心、安全、悪魔の実」
と書かれた段ボールだ。
僕は今日も商品を眺めた
タケコプター、1万円
―どう見ても、ただの白い粉だ
フェニクスの尾、募金制
―恵まれない瀕死の子の医療費になります
モンスターボール、200円
―決して人には投げないでください
僕は気付いてしまった。
万屋にいるだけでなんか楽しい。
やはり兄と僕は血が繋がっているのか・・・。
タチコマという戦車のカタログを眺めていたら、辺りが騒がしくなってきた。
店の前でフルーツを売っていた初老の男が必死に抵抗しているらしい怒号が聞こえる。
僕は嫌な予感がしたのでどこか隠れる場所を探した。
あそこだ!
僕は素早い身のこなしで隠れた。
すると黒い覆面の男が万屋に入ってきた。
僕は今、段ボールの中にいる。
大きな声では言えないが、隣に誰かいるんだけど。
「こちらスネーク。潜入に成功した」
―タツオだー!タツオがいるー!
僕は小声で話し掛けた。
「タツオ!何やってんだよっ」
「AKにグレネードか・・・」
―話し聞けよこの野郎!
「リョウタがこの店に来たと聞いてな、写真に収めようとしたらこの展開だ」
―店先にいた男だな!ちくりやがって!
覆面の男は何をするわけでもなくうろうろしている。
どこからともなく音がした。
授業中にならしたら大変なことになる、あれだ。
「 !? 」
―お兄ちゃん、オナラしちゃった?
「そっそれよりどうすんだよ」
と僕は小声で訴える。
僕はとにかく家に帰りたい。
「雑誌を置いてそのうちに逃げる」
とタツオは黒い覆面の男を見ながら言った。
大丈夫なのか・・・。
タツオは雑誌を覆面の足元に投げた。
「 ! 」
予定どおり覆面の男は気が付いた。
「うわ!ジャンプじゃん!今週のテニプリどうなっちゃってるんだろう!」
僕らはその隙に逃げた。
今後の参考にしたいのでコメントを頂けると嬉しいです。




