第八話 ひと時の休息
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騒がしかったこの一週間の戦いも一時休戦。土曜日となった今日は、昨日の天気とは違い、大雨だった。まるで、みおの心を写すかのように。
昨日こんどは西森拓也に告白された。そして三日前には幼なじみである、大和そらに。
そして昨日、真央から受けた言葉。ずっとそのことについて考えていた。
そらとは、本当に幼い時からの知り合いで、ずっと友達としてしか見てこなかった。恋愛対象として見たことは一度だってない。
拓也とは、今年になってから初めて知り合った。サッカー部ということで、そらと仲のいいみおと関わる機会も少なくなかった。
そんな二人から受ける告白。みおはあまり表情に出さないようにしていたのだが、戸惑いが隠せなくなってきた。
みおの初恋。それは幼稚園のときだった。しかも相手は20歳は歳のはなれた先生にだ。
いつも優しいそんな先生が大好きだった。
けれど、みおが卒園を迎える少し前、その先生は結婚した。お相手は同じ幼稚園の先生。職場内恋愛だった。今思えば素敵だなあと思えるけれど、幼いみおの心には裏切られた、としか思えなかったのだ。
・・・それ以来、気になるな。という人には出会えても、好きという感情になるひとはいなかった。みおは初恋以来、恋をしていないのだ。
「自分の心に素直にねえ・・・」
昨日からずっと呪文のように唱えている。
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一方そらは、こちらも悩んでいた。
「拓也か・・・思わぬところに敵がいたとは」
そらにとって、拓也はまさに天敵のような存在だった。
そらがみおに振られた理由。それは幼なじみで、恋愛対象として見たことはないから。だった。けれど、拓也の場合はそれがない。そのため拓也にはそらよりも障害物が少ない。
確かに拓也はそらほどモテたりはしないし、キャーキャー騒がれるタイプではない。けれど、人懐っこい性格だし、好感は持たれやすい。それにかっこいい部類には入るのだ。
それにそらが拓也に勝るルックスのよさや、モテることも、みおの前ではまったく関係ないことなのだ。
だからそらは焦っている。
「もうのんびり好きになってくれるのを待つ。
なんていってられないな・・・」
二人は悩む・・・そうして休みの片方はすぎていくのだった。
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「うわ!結局昨日なんもしないまんま寝ちゃったよ!休みなんだからもっと有意義に過ごさないともったいない!」
日曜日の朝。みおは少し寝坊をして起きたのは朝の9時ちょっと過ぎ。
さすがに無駄な時間を過ごしていると反省した。
プルルルル、プルルルルル。
そんなみおの携帯が鳴り響いた。
「もしもし?」
『あ、みお?今日空いてる?』
「なんだそらか・・・。あいてるけど」
『なんだ、ってひどいなあ。今日俺ん家来れる?』
「なんで?」
『母さんがさみしがっててさ。たまには連れてこいって言うから』
「春子さんが?・・・なら行ってもいいけど」
春子とはそらの母親である。
『ホント?母さん喜ぶよ。あ、あと秋人と真央さんも来るから』
「あの二人もくるのか・・・」
『ん?二人っきりのがよかっ「全然。」』
「じゃ今から行くから」
返事を待たずに電話を切る。
あの二人なら他人の家でも余裕でイチャイチャするであろう。それが少し憂鬱だったのだ。
そらの家まであるいて二分。ほんとに近くなのだ。
「春子さんこんにちはー!!」
「みおちゃん!久しぶりねー!」
「はい!ホントそうですね」
「みおちゃん来なくて寂しかったんだからー
ささ、あがって」
おじゃましまーすといってリビングに入る。
春子は本当に美人だ。この親あって、この子ありという具合に、親子揃って顔がすごく整っている
「あ、みおっち!チャオ」
「みおちゃんチーッス」
「みおいらっしゃい」
真央は秋人の隣に座って、手をつないでいる。
そらはテーブルをはさんでその反対側、みおを隣に座らせようと催促している。
春子の前であるし、うかつに抵抗はできないのでおとなしく従う。
「秋人君と真央ちゃんはホントに仲良しさんねえ」
「うふふ。だって将来は結婚するんだもん」
「だな。昨日は雨だったから家でずーーーっとしてたもんなあ」
「あーーもうそれ以上なにも言うな!」
耐えかねたみおが口を挟む。
「そーいやみおちゃんは彼氏君作らないの?」
「母さん!みおは俺のものだから!」
「誰がおまえのものになるっつった!?・・・あ、そうだ。・・・・・・悪いんだけど、秋人君とそらで、コンビニ行ってアイスでも買ってきてよ」
「えーー今雨降ってるよーー」
「秋人・・・空気読んで?」
「んー真央がそういうなら」
「俺もみおの頼みだし、しょうがない、いくぞ秋人」
二人はダルそうに出ていった。
「ふたりを追い出したってことはおとといのことについてだね?」
「おとといのこと?」
「あ、春子さんにも分かるように話しますから」
「春子さんはそらが私に、その・・・告白したことについては知ってます?」
「ええ。そらから聞いたわ」
「それなら話しが早いです。」
「みおっちはね、そらを幼なじみだからっていう理由で付き合うことを拒否していたの。」
「まあ・・・でも分からないわけではないわね」
「はい。それで真央に自分の気持ちに素直になれって言われて、昨日一日考えてみたんです。」
真央と春子は真剣な面持ちでみおを見つめる。
「それで、結論は、やっぱり好きじゃないし、付き合えないんです」
「!」
「あ、でも今までとは違って、これからはしっかりそらのこと見つめて行こうと思う」
「みおちゃん・・・」
「みおっち・・・」
「それで好きになったらしっかり伝えようと思う。でもそうじゃなかったら・・・やっぱり断るんだと思う」
「そっか・・・みおっちしっかり考えたんだね」
「さすがみおちゃんね。私ますます好きになっちゃったわ」
「それで西森君のことは?」
「西森君?」
「あ、おとといみおっちに告白した人なの」
「へぇみおちゃんモテるのねえ」
「モテません。で、西森君についても私は全然知らないし、そらと同じようにこれから・・・になると思う。」
「そっか。ま、みおっちも成長してるってことだねー」
「そうね。みおちゃんこれから大変だろうけど頑張ってね」
「まぁ・・・めんどくさいけど」
そしてその後そら達も帰ってきて、昼ご飯もごちそうになって、みおと春子の料理は絶品だということ、真央は料理が苦手・・・もう苦手とは言えないくらい下手だということが分かった。
その後もたわいない話しをして気づけば時間が7時近くになっていた。昼前からいたことを考えるとだいぶ長居してしまった。
「じゃ真央は俺がしっかり送って行くから」
「じゃ俺はみおを」
「近いからけっこうです」
「だーめ。家から近い方が事故率は高いんだから。それに誰かに誘拐でもされたらどうすんの?」
「大丈夫なのに・・・」
「私も心配だから・・・ね?」
「うぅー」
春子に言われたらみおはしたがうしかないのだ。
「なあ、みお」
「ん?好きだってのは禁止ね」
「うわ先回りされた!・・・それ以外のこともなんだけど。」
「何?」
「拓也のことどう思ってるの?」
「!」
みおは歩みを止めた。それに合わせてそらも止まり、今二人は向き合っている状態だ。
「どうって・・・」
「好きなの?」
ジリジリとそらは距離をつめる。
「好きじゃない!」
「それはホント?」
耐えきれなくなったそらはいつかのように、みおを抱きしめる。
「拓也にみおは渡さないから」
「・・・。」
「拓也になんか負けないから」
「ふっ男の子ってのは単純だなあ」
「!?」
「あ、放してくれる?」
みおはすっとそらから離れる。
「ま、私に迷惑かけない程度に好きにケンカでもしててくださーい」
そしてみおはまた歩き出す。
「えーちょっと待ってよーみおー」
それを追うそら。
みおは確実に進歩している。日々強くなっていく。そんな彼女に寄り添って歩くのはそらか、拓也になるのか。
こうしてまた平日の学校がスタートする。
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