第七話 新たな風
みおはいつもどおりに帰宅する・・・・・はずだったのだが、それすらも叶わなかった。
「みお、一緒にかえろ」
「ん、ああそら。今日は部活は?」
「今日はフリーだから。」
「そう。じゃ、私は真央と帰ろっと。」
「ひっど!」
「真央~」
みおは真央に声をかけに行ったのだが、真央はすでに秋人と二人の世界に入ってしまっていた。
「真央~聞こえるか~い?」
「ふふっ明日楽しみだね秋人。」
「そうだなみお。」
「おーい」
「みお、もう諦めたら?もうこうなった二人は止められないよ・・・」
「むー。じゃあ一人で帰る!」
ぷいっと向きを変えてスタスタと歩いていく。
「あ、ちょっと待ってよみおー」
後ろを追うようにそらもついて行く。
「そら様が翻弄されている・・・」
琴美が驚いた目をしながらボソッとつぶやく。それは琴美だけではなく、クラス全員がそう思っていたのだった。ベタベタし続けるバカップルを除いて。
「秋人・・・」
「真央・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・
「誰も一緒に帰ることを認めてないけど。」
「ん?俺は、たまたま、みおの隣をあるいてて、たまたま、自宅が近所なだけだよ。」
「じゃさっきから話しかけてくるのはなぜ?」
「そりゃあ、道を歩いてるときに、たまたま、知り合いに会ったらみおだって声かけるだろ?」
「・・・まあ確かに・・・ってちっがーう!
さっきからあんたのたまたまは全然たまたま
じゃなーい!」
「みお、まだ明るいのに女の子がそんな玉玉、連呼するもんじゃないよ」
「!!!」
みおの顔が首元から真っ赤に染まっていく。
「もう知らない!このドヘンタイどっか消えろーー!!!」
「褒め言葉として受け取っとくよ。」
ギャーギャーとまるでマンガのように騒ぎながら歩き続ける。
そらがふと後ろを振り返ると、そこにはチームメイトの姿があった。
「拓也じゃねえか」
「ん、あ。そら。」
「おまえなんでこっちの方向に」
「まぁ用事があってさ」
「・・・ふーん。ってか拓也。もし次一回でも朝練遅れたらただじゃすまさね=ぞ」
「はいはい。そらが怖いからもう遅刻なんてできないよ。・・・それよりも、二人ってまだ付き合ってないんだよね?」
「!もちろん!まだっていうかこれからも未来永劫付き合うことなんてないよ!」
「みお、未来永劫の意味分かってる?これからずっとって意味なんだよ?」
「う、うん知ってるけど、それが?」
「もうすぐ付き合うことになるんだから、それは間違ってるよ。」
「だからありえねえっつうの!」
ビシッと一発そらの尻に蹴りをいれる。
予期せぬ不意打ちと、それ以上に激しい痛みにそらはその場にうずくまる。
そんなそらを尻目にみおは歩き出す。
「おーい俺のことわすれてなーい?」
「あ、ごめん」
「ひどいなあ。あ、みおちゃんにちょっと言っておかなきゃいけないことあったんだった。」
「なに?」
「好きです!俺と付き合ってください!」
「「!!!!!」」
その言葉で覚醒したそらと、この数日間で二回も告白を受けたみおは驚き、しばし無言になった。
「だって、二人は付き合ってないでしょ?だったら俺にもチャンスがあるじゃん。」
「!拓也・・・!」
「ね?だから俺と付き合わない?笠原ちゃん」
まだみおは固まったままだった。それを見た拓也はみおに近づく。
『チュッ』
響くリップ音。拓也がみおの頬にキスをしたのだ。さすがにそれを黙って見てられるわけのないそらが二人を引き剥がした。
「いいかげんにしろ拓也!」
「おー王子様焦ってるね〜」
「てめえ!!!」
「やめなよ!!」
さっきまで何も話さなかったみおが
声をあげた。
「道の真ん中で他の人の迷惑じゃん!」
「今はそんなことどうでもいい!」
「落ち着きなよそら!・・・それと、悪いけど付き合えないから。」
「えー残念。でも諦めないから」
「勝手にしなよ。もう私帰るから。ケンカしたいなら人目のつかないとこですきなだけどーぞ」
そしてみおは少し早足で去って行った。
「拓也。おまえには絶対負けねえ」
「ははっ王子は怖いなあ」
拓也の余裕そうな態度にそらは怒りを覚えた。
だが、手は出さなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
プルルルル、プルルルル。
電話の呼び出し音がなる。みおが電話をかけているのだ。あいては・・・
『もしもし』
「あ、真央?」
『おーみおっち。どした?』
「今から会える?」
『んー今から?・・・ちょっと待ってね』
真央が確認をとっている。まぁおそらくは秋人にだろう。
『秋人いるけどいい?』
「この際いてもいいや」
『OK。じゃ、家きてちょうだーい』
「うん。じゃあね」
みおと真央の家は中学が一緒だったこともあり比較的近くにある。秋人の家も同様だ。
「お邪魔しまーす」
「あら、みおちゃん久しぶりね~」
「あ、おばさんこんにちは」
「ふふふ、ゆっくりして行ってね」
ありがとうございます、と礼をいい二階の真央の部屋に向かう。
(真央のお母さん相変わらず素敵だなあ)
真央の母親はすごくおしとやかで、どうして真
央はこういう風になったのかたまに疑問を感じ
るみお。
「お邪魔しますよー」
「あ、みおっち。いらっしゃい」
「みおちゃん元気ぃ?」
「あ、真央。服乱れてるよ」
「え!?さっきちゃんとなおしたのに」
「嘘だよ。・・・ってかあんたらまたやってたんかい」
呆れながらみおは腰を下ろす。
「だって、真央がかわいすぎるからねえ」
「もう!秋人ってばエッチだから」
「んー?そういうこと言うと、もうしてあげないぞお?」
「それはダメー」
「イチャイチャしてもいいけどせめて私の存在は忘れないでよ」
あははーと真央は笑う。
「で、今日はみおっちどうしたの?」
「・・なにもノロケたいわけじゃないからね。
・・・また告られた」
「そら君に?みおっち愛されてるね〜」
「違うの!・・・拓也君に。」
「「ええ⁉」」
その場にいた秋人も思わず声をあげる。
「なんで!?」
「知らないよ・・・いきなりだったし」
「へえ、拓也がねぇ。そらはどんな反応だった!?」
「秋人君興味深々だね・・・。なんかきれてたよ。で、ウザかったから放置してきた。」
真央と秋人は顔を見合わせて苦笑する。
「さすがみおっち。」
「これは三角関係の始まりかな」
「秋人。みおっちがかわいそうだよ」
「ってか三角関係作る気ありませんから」
みおは体育座りをして顔を伏せる。
「なんかホント、めんどくさい・・・」
「みおっちモテ期だね」
「うー。嫌だよ~ホント勘弁して欲しい・・」
よしよし、と真央はみおの頭をなでる。
「みおちゃんは付き合おうとか思わないの?」
「好きじゃないから無理」
「好きな人は?」
「いない。」
「んー。いないんなら付き合ってみればいいじゃん。そうすればいいところ見つかって好きになるかもよ?」
「私にはその考えがよくわかんないんだよね。そもそもあの二人のどっちも好きにはなれないと思う。」
「それは付き合ってみなきゃ」
「な・れ・な・い!」
「あ、そうすか・・・」
みおに圧倒され秋人はなにも言えなくなる。
「明日、明後日と休みなんだし、どこか遊びにいったら?」
「それはあり得ない」
「だってみおっち、つい最近までは一緒に遊びに行ったりしてたじゃん。」
「でもそれはあくまで幼なじみとしてであって・・・」
「ねぇみおっち。」
「?」
「幼なじみだからって好きになれないなんてことないんじゃない?」
「でも兄妹みたいな感じに・・・」
「そうやって無理に押しつけて、考えることから逃げてるだけじゃない?」
「!そ、それは・・・」
「自分の心に素直になって。そして少しでもいいから考えてみて。それが告白してくれた人への少しの恩返しになるから」
「真央・・・」
みおは普段感じたことのない雰囲気を真央から感じた。こんなところにあの母親から遺伝されたものがあったのだ。
そしてみおは無言で部屋を出た。
「・・・今の真央かっこよかったぞ」
「えへへーありがと」
「今日はもう一回するか。・・・さっきより激しくな」
「いやーん」
「嫌なのか?」
「秋人のいじわる。・・・嬉しいにきまってるじゃあん」
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「ふう・・・。自分の心に素直に・・・かあ」
このような気持ちになったのは初めてだった。今、みおの心は大きく揺れ動いている。




