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第二十一話 絆


「そら!そら!!」


愛する彼氏の、大事な幼なじみの名をひたすら叫ぶ。




___________________



それは数時間前の出来事だった。



そらはみおを家まで送った後、普通に家へと帰ろうとしていた。


徒歩一分。そんな短い距離でおこった。


「おまえは・・・!」


数ヶ月前。みおは泣いてそらへと助けを求めた。そらはそんなみおを見て今まで守ってやれなかった悔しさがこみ上げ、それと同時に愛しい彼女を一生懸けて守ると決めたのだった。


ーーーその引き金を引いた、あの日みおを突き落とした女子だ。



「そら様。おまえなんてひどいですよ」

「・・・何のよう?」


「あら、冷たいのね。あの日から私は大変だったのよ?まるで罪人のように扱われて。

今でこそなんとか他の高校に編入できたところなのに。」


「自業自得だ。」


それだけ言って通り過ぎようとした。


「笠原みお。可愛いわよねぇ?」


そらの足がピタッと止まる。


「彼女を悲しませたくはないでしょう?」


「っ!おまえまだこれ以上手を汚すつもりか!?」


「今度は確実に事・故、になるんじゃない?」


その女子はにやりと不気味な笑みを浮かべる


「・・・何が狙いだ?」


「そうね。まずは手始めとして笠原みおと別れてもらおうかしら。そして私と付き合って」


「・・・できない」


「あら。彼女を見捨てるの?かわいそうに」


「く!元はおまえらが!」


「だから提案をしているのよ。そうじゃなければもうとっくに行動を起こしてるわ。別にこれからも仲の良い幼なじみとして接していいのだから悪い話ではないでしょう?」


「・・・。」


そらは揺れる。今みおから身を引きこの女子の条件を飲めば、みおは安全でいられるのだ。けれどそれはみおにとってもそらにとっても望む形ではない。



「やっぱり断る」


「ふうん。いいのね?」


「みおは俺が守るって、生涯幸せにするって決めたんだ。」


「・・・まあそういうと思ったわ」


それだけ言い残して女子は去って行った。




そして数日も経たぬうちにそれは起こった。


飲酒運転をした車がつっこんできたのだ。

明らかに事故を装って。

みおをかばってそらがはねられた。



___________________



病室から白衣を着た医者が出てくる。



「先生!そらは!?」


「命には関わりません。ですが多少頭を打ってしまったようで・・・」


みおはすべて聞き終わるまえに病室へと駆け込んだ。


そらはベットに上半身を起こして横になっていた。頭に包帯を巻き、ぼうっと窓から外を眺めていた。


「そら・・・」


みおはそらが怪我人であるにも関わらず、強く抱きつく。


「よかった・・・」


「あの~すみません」


少し様子がおかしいと思ったのか、そらの顔を覗き込む。


「あなたは誰ですか?」


みおは一瞬にして凍りついた。



そして連絡を受けた秋人と真央が病室へと入ってくる。


「なんだーそら。元気そうじゃないか」

「まあそらくんだからね」


何も知らぬ二人が普通に話しかける。


「あのーそら、って誰ですか?」


時を同じくして医者が入ってくる。


「頭を打ったショックによる記憶喪失です。」


三人の顔が曇る。そしてみおが口を開く。


「記憶は戻らないんですか?」


「明日にも戻るかもしれない。・・・けれどこのまま一生・・・」


まさに地獄へと突き落とされたかのような気分になった。


「みおっち・・・泣かないで」


みおはそのときじぶんが涙を流していることに気づく。


それを見た秋人がそらに近づく。


「なあそら。嘘だろ・・・?」


「そらって僕の名前ですか?」


「・・・そら!!思い出せよ!おまえの名前は大和そら!目の前で泣いてくれてんのはおまえの、おまえの大事な彼女だ!」


「・・・ちょっとわけが分からないんですが・・・。」


「そら!」


胸ぐらをつかもうとした時だ


「秋人君!」


みおが声を上げる。


「もう・・・いいよ。・・・そら。無事で良かったよ。・・・じゃあね」


みおが部屋を出て行く。





「ふうーー!」


そらが大きく息を吐く。


「あ、先生ありがと。それと、秋人と真央さんも心配してくれてサンキュ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


沈黙が流れる。


まず秋人が口を開く。


「これで、よかったのか?」


「・・・ああ。」


「そらくん。みおっち泣いてたんだよ?」


「・・・うん」


そらが記憶喪失なんてのはまっさらな嘘。

そらは目を覚ましてからみおが入ってくるまでの一時間で医者や秋人、真央と打ち合わせをして演技をしていたのだ。


「俺も好きでこんなことしたくなかったよ。

みおのこと抱きしめてやりたかった。でも、これが一番確実だから・・・」


「他にも方法があったんじゃないか?」


「俺だって守ろうと思ったよ。でも俺だって結局はただの人間だ。・・・みおと一緒にいたらみおが不幸になる」


「そんな!みおっちがそれを望むと思うの?

おかしいよ!」


真央が病室から走り去って行く。


「そら。おまえらは十七年間も一緒だったんだ。ちょっとやそっとじゃ壊れない絆だって信じてるから」


そして真央の後を追うように秋人も病室から出て行く。


「バカなことしてるって分かってるよ・・・でもな・・・」


そしてそのまま目を閉じた。



___________________



次の日みおは目を覚ます。


もう目覚ましがなくても起きる習慣が身についていたのだ。


けれどいつも聞こえる幼なじみの声も、見慣れた笑顔もそこには無かった。



「そーだった・・・」


もう彼氏でも幼なじみでもない。


その事実を身をもって感じた。そうして目から涙が溢れてくる。


「今日は学校休も・・・」

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