第十七話 会長
夏休みも終わりに近づき、それぞれ宿題に追われるもの、残りをのんびりと過ごすもの、わずかで貴重な時間が過ぎていく。
ちなみにみおは後者で家で寝っ転がりながら今集めている漫画を読んでいた。
「・・・終わった。んー。次の巻買いに行こっかな~」
と、立ち上がろうとした時に携帯のランプが点滅しているのに気づいた。
「おっとメールだ・・・ってそらかい」
果たしてそれは彼氏からのメールに対する正常な反応か。本来もっと喜ぶべきだろう。
『今からそっち行っていい?宿題ヘルプ!』
そらからのメールは宿題を手伝えという内容。もちろんみおは
「自分でやれ!!!・・・っと」
そして間髪置かずに返信がくる。それと同時にインターホンが鳴ったので先に玄関へ向かう。
「よっ!みお」
メールを確認すると
『返信こないからもう来ちゃった』
「せめてアポとれよ・・・」
「一応メールしたじゃん」
「OKしてない!」
「じゃ、会いたいから来たの」
「そーだよみおっち」
「うわっ真央!」
「俺もいるよー」
「・・・秋人くん」
そらだけでなく秋人と真央まで。
もちろん秋人たちも宿題目当てだ。
「・・・まあいいや上がって」
「「「おじゃましまーす」」」
「じゃ部屋入っててよ飲み物持ってくるから」
「「「ありがとうございまーす」」」
みおは冷蔵庫を開けて中をみる。中には飲物
がコーラとオレンジジュースと麦茶。
「麦茶でじゅーぶん」
グラス四つに氷を入れて麦茶を注ぎトレイに置いて運ぶ。
「お待ちーっておい」
みおが部屋に入るとそこには、扇風機の前で涼んでる秋人、さっき読んでた漫画を読む真央、そしてみおのベッドで寝転ぶそら。勉強をしてない人々の姿が。
「てめえら何しにきたんだー!」
「みおのベッドいい匂いする」
「みおっちこの漫画続きは?」
「あーーーーーーーーーーー」
ぶちっ
いかにもアニメのような効果音とともにみおの猛き雷が降ちる。その日は一秒たりとも休憩はなかった。
そして夏休みも終わり、また新たな学期が始まる。
「・・・今までお疲れ。君は長生きしたよ」
享年1ヶ月12日。今、命が一つ空へと舞い上がって行った。みおの目覚まし時計の中では最長寿だった。
散らばった時計を片付けて学校へと向かう。
「おはよーみおっち」
「あ、おはよー今日は朝練無いの?」
「まあ始業式の日ですから」
「だよね」
最初に教室に入ってきたのは真央。
そして次に秋人とそらが並んで入ってくる。
「おはよーみお」
「んー。って抱きつくな学校で!」
「じゃあ他の場所ならいいの?」
「・・・二人っきりの場所なら」
「そしたら襲っちゃうよー」
「じゃあもう触れんの禁止」
「ゴメンなさい冗談です」
みおLOVEのそらと、とにかく羞恥心を保護するみおの攻防は当然のようにみおがいつも勝利する。
「そら思いっきり尻にしかれてるな」
「そら君かわいそー」
「真央、そらに優しくするなんて妬けるなあ」
「ふふっ本命は秋人だけだよ」
そしてバカップルはキスをする。
この二人は一日に何回キスをするのだろう。なんならカウントしてやろうか、などとみおが思った時にいつの間にか登校していた琴美が近づいてくる。
「ねえ笠原さん」
「あ、琴美ちゃんおはよ」
「そら様と付き合ってます?」
「情報早いねえーまあ否定はしないよ」
「そうですか!いやあ嬉しいです!ついに実ったんですね!」
「あははー」
「あ、そういえば純菜先輩が呼んでました」
「純菜さんが?なんだろ」
「・・・音楽室にいるそうですが」
「ん。分かった行ってみるね。ありがとう」
「いえいえ」
琴美はビシッと敬礼しながらみおを見送る。
「失礼しまーす」
「みおちゃん。」
「何かようですか?」
「まあ少しお話をね。・・・そら君と付き合ってるの?」
「!!・・・またそれですか。・・・はい」
「そう・・・いきなりなんだけど別れてくれない?」
「え!?」
「邪魔なのよあなたが。学園の王子を独り占めなんて生意気じゃない?」
「え・・・でも今までも彼女はいたじゃ」
「あれはそら君が本気じゃないのわかってたもの。でも今度は違う。」
「・・・嫌です」
「そう。じゃあ私があなたに何かしても知らないわよ?」
「それでも・・・別れません」
純菜はそれを聞いてみおとの距離を詰める。純菜が手を振り上げ、叩かれると思ったみおは反射的に目を閉じる。
しかし次にはみおは優しく撫でられた。
「合格よ」
「・・・へ?」
「ふふっ驚かせてゴメンね。あ、みおちゃんには話してないことがあったの。」
「?」
みおは頭にはてなを浮かべポカンとする。
そんなみおの様子を見てクスッと笑い純菜は続ける。
「私は会員番号001番、そら様ファンクラブのトップ、会長よ。」
「・・・えええええーーー!!」
「みおちゃんには正直少し嫉妬したわ。でもこれからは幸せなそら君を見守るのも悪くないなーって思って」
「はあ。」
「でも私や副会長、琴美みたいにこうやって踏ん切りをつけれればいいけどファンクラブの中には本当にイラついて行動を起こそうとする人もいるのが現実。」
「本当ですか!?」
「ええ。まあそれを何とかするのが会長である私の役割よ。琴美にも頼んであるけどみおちゃん自身気をつけてね」
「・・・。」
「もう時間だわ。さ、お互い教室戻りましょ」
「・・・はい」
みおはその事実を伝えられて頭のなかにはいろんな考えが浮かんだ。
どうすればそれを回避できるのか、考えを巡らす。女子は怖い。特に恋愛関係ではもはや制御が効かないくらいなのだ。
一番の解決法は別れる、ことなのだがみおにとってそんなことはあり得ないことだった。みおの中でそらの存在はかなり大きくなっているのだ。




