第十二話 少しずつ。
「ねーみおちゃん。この後はどうするの?」
「えっと次にですね・・・」
夏休み初日、みおはそらの家にきていた。
「ねーみおーここどうやって解くの?」
「そら!今みおちゃんは私とお料理してるの!それくらい自分でしなさい!」
「まーまー春子さん。えっとそこはね・・・」
みおは春子と料理をしつつ、そらの夏休みの課題を手伝っていた。
みおはズバ抜けてできるものはないけれど、逆にできないものも無いのだ。基本的に中の上がみおにとっての普通なのだ。
「みおーもう終わっちゃダメ?」
「ダメ。」
「うーサッカーしたいよー」
そらはテーブルに突っ伏す。
みおは``素直にならない``ことの意味に気づくためとりあえずそらの家に足を運んだのだ
「・・・ねえ、みおちゃん。例の話しどうなったの?」
春子が小さなこえで尋ねてくる。
「ええっと、ちょっと今進展しにくい状況でして・・・」
春子にはみおがそらを好きなことを伝えてある。そのときかなり喜んでくれたのはいいのだが、実際は上手くいかずに苦悩しているのだ。
「そうなの・・・。まあ若いんだからたくさん悩みなさい」
「春子さぁん・・・」
「あらあら。みおちゃんがいつか義娘になる日が来るのね・・・」
「!さ、さすがに結婚は、」
「ないの?うちの息子とは遊びなの!?」
「ち、違いますし、まだ付き合ってませんから!」
「あら。じゃあやっぱり結婚はしてくれるのね。孫の顔が早くみたいわあ」
「春子さん・・・」
「ふふ。あながち冗談じゃないわよ」
「・・・さ、ラスト頑張っちゃいましょうか!そらも!早く終わらせちゃいなよ。お昼できるよ」
「「はーい」」
そして数分後昼食が完成した。そらのほうは今日のノルマは終わってないようだが
「はーいそら。出来たわよぉー」
「そら・・・終わってないんだね?」
「わー美味しそうだなあー」
「話しをそらすな!」
ちなみにみお達が作ったのはボンゴレパスタ。
「うわ、俺あさり嫌いなのにぃ」
「あんたは小学生か!」
「でもみおの作ったものならなんでも美味しいよ。」
「はいはい。早く食べてさっきの続き!」
「うーやっぱダメかあ」
そらは確かにスポーツはズバ抜けてできるものの、勉強はイマイチだ。さすがにこれで勉強も出来たら神は不公平だ。けれどさすがに人生はそう上手くはいかない。
「ふふ、あなた達夫婦みたいね」
「春子さん!」
「みお、付き合う段階飛ばして結婚しちゃう?」
「あんたまだ16だろうが!」
「来月になれば17だもんねー」
「どーでもいいよ、もう・・・」
「「「ごちそうさまでしたーー」」」
「あら、そら。ちゃんと残さず全部食べたじゃない」
「みおの愛情、いただきました!」
「作ったのはほとんど春子さんだけどね」
「愛情はみおちゃん担当だもの」
「は、春子さん」
みおも春子にはかなわないのだ。そしてその代わりに・・・。
「さ、早く終わらせちゃおう!」
「ぐへー」
そらをいじめるのだった。
(まったく。今更ながらどうしてこんなやつ好きになっちゃったんだか)
そして数時間後・・・
「もーダメ!死ぬ!」
「ここまでするのに時間かかりすぎ!でもこれで明日からすこし楽でしょ?」
「ふぇー。みおってばほぼ今週分やらせちゃうなんて鬼だよ!」
そらは意外と飲み込みがはやい。教えたことはけっこうすぐにできるようになったので、いっそのこと今週分やってしまおうというわけだ。
春子にはさすがに退屈だったのか、とっても綺麗な顔をしながら寝息を吐いている。
「にしても春子さん綺麗だよねえ」
「そう?みおのほうがよっぽど綺麗だし魅力的だよ」
「いや、それはないって」
「んーみおってば照れ屋さんだなあ。・・・ねえ頑張ったご褒美ちょうだい」
「勉強はご褒美の為にするもんじゃありません。」
「むー頑固だなあ。・・・あ!そうだ今週分の課題は終わったんだし、明日から暇じゃん?」
「?うん、まあ」
「じゃあさ海行こうよ!」
「はあ⁉」
ちょうどいいタイミングなのかどうなのか、春子が目を覚ました。
「海行くの・・・?いいんじゃないかしら」
「ええ!春子さん!」
「なら決まりだね!」
「ちょ、他にも誰か呼ぼうよ」
「例えば?」
ふと頭に浮かんだのはあのバカップルだった
「じゃあ明日からでも」
「ええ!さすがにそれは真央達もキツイんじゃ」
「電話してみよっか?」
そう言ってそらが電話をかける。
「もしもし?」
『おーそらか。どした遊びの誘いか?』
「さすがは秋人。察しがいいねえ。・・・明日からなんだけど海いかね?」
『海?誰と?』
「こっちはみおが承認済みだよ。」
「承認してねーだろうが」
ガスッとそらに蹴りを入れる。
『なんか今鈍い音が・・・。なら俺も真央に聞いてみるよ』
「お、今日は一緒じゃないのか?」
『ま、さすがに毎日ヤってたら体力持たないしな』
「うーうらやましいな秋人」
『あはは。でけっこう長旅になるだろうけどどうすんの?』
「やっぱ電車になるかな。一応予定は二泊三日ね」
『了解。じゃまた後でな~』
「そら!?泊りなの!?」
「そーだよ?だって遠いから日帰りは辛いでしょ?」
「そーかもしれないけど・・・。でも二泊する理由はないじゃん!」
「それは俺たちの愛を深めるためだよ」
「!」
みおの顔が真っ赤に染まる。
「ん?みおなにに考えてるの?顔真っ赤だよ。・・・まったくエッチだなあ。」
「ば、バッカじゃないの?この変態が!」
こうして見てみると本当にカップル、しかもみおがバカにしていたバカップルなのだが。それでもまだ正式に付き合ってはいないのだ。
「ふふ。まあ楽しんできてね?」
「え!春子さんは行かないんですか?」
「若い人達の邪魔しちゃ悪いものね」
「そんな邪魔だなんて!」
「母さんナイス空気読み!」
そらはピースサインを春子に向ける。
「そら。あんまり弾けちゃダメよ?」
「な、何を言ってるんですか」
「そうだよ母さん。それは付き合ってからのお楽しみなんだから」
「一生あり得ないから!」
「みお好きだよ。俺と付き合って」
「だから、あんたは幼なじみなんだから!」
そこまで言ってみおは言葉につまる。
「んー残念だなあ。ま、もちろんまだ諦めないけど」
そらはニヤッとする。
(私が素直になる前にそらを拒絶していた理由。幼なじみだから。・・・・・・なんか嫌だ。でもなんで嫌なんだ?)
「んーみお?」
そらが顔を覗き込んでくる。
「!あ、ごめん考え事。」
目の前にあるのはつい最近、素直になることで初めて気づいた好き、という感情を抱く相手。
「ふーん。ま、いっか。楽しみだなあ。明日から」
「・・・。」
(なんか変な感じ・・・)




