第十一話 自分に素直・・・ではなく?
・・・思いを秘めたまま月日は流れる・・・
そして伝わらぬまま、夏休み前の最終登校日の日。
長期休業前ということで、生徒はみな集められ全校集会が行われる。
七月も末になり、非常に暑苦しい中集められる。前に立っている校長の話しをいったいどれだけの人が真面目に聞いているのだろう。もちろんみおは聞いていない派だ。
(長いよ・・・暑いよ・・・)
しばらくすると、校長の話しも終わり、集会も終わりに差し掛かった時だった。
あともう少しだったにもかかわらず、みおは貧血を起こしてしまった。
過去にも貧血になりそうなときはあったのだが、いつもギリギリのとこで耐えられた。
今日はたまたまいつもより数分長いだけだったのだ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
みおは目を覚ますと、天井が見えた。すこし薬品くさいことも考えると、どうやら気を失って保健室に運ばれたようだ。
少し頭に鈍い痛みがある。そこに触れると、やはりコブができていた。倒れた時におそらく打ったのだろう。
頭をさすりながら体を起こす。
(今何時だろ・・・)
確認をするためベットの周りを囲っていたカーテンを開ける。
「あ、笠原さん起きたの?」
「あ、先生。今何時ですか?」
「今4時を回ったとこよ」
「へっ!?」
校医の先生が指す時計を見ると、確かに4時ちょい過ぎだった。
「あの時まだ昼くらいだったから・・・私だいぶ寝てた!?」
「まぁ呼吸は安定してたし、頭打ったみたいだけどそんなひどくは無かったからねかしといたのよ。」
「もし万が一のことがあったら?」
「大丈夫よ、私のかんは良く当たるもの」
「勘かよ」
ビシッとまるでお笑い芸人のようなツッコミを入れる。
「家に両親いないとこういう時大変よね」
「ははは、まぁ少しズキズキしますけど帰る
のに支障は無いんで」
「・・・いい友達(笑)がいて良かったわね」
先生が指を指した先にいたのはあのいつもの親友(?)達だった。
「みおちゃんおはよう。」
そこにいたのは秋人と真央、そしてそら。
けれど起きていたのは秋人だけだった。
真央は秋人に抱かれながらスヤスヤと、そらはテーブルにうつ伏せになって寝ている。
「あーごめんね?だいぶ待ったっしょ?」
「いやーさっきまでは先生も含めて騒いでたから退屈はしなかったよ。ただ真央達は寝ちゃったけどな。」
秋人はつん、と真央をつつく。
「んーむぅ。ふにゃ・・・。んー?もう朝?」
「真央寝ぼけ方凄いな」
「あ、秋人!」
二人は自然とキスをする。
「目覚めたか?」
「うん!バッチリ」
「はぁ、ホントバカップルさに磨きがかかるね」
「ふふふー羨ましかったらみおっちも早くーそらくんをゲットしな?」
「・・・こんなんならいらんよ」
「んー。あ、みお起きたんだー」
「!そ、そらおはよう」
「なら起こしてくれれば良かったのに。ところでなにがいらないの?」
「!!」
(ふう危なかった。あともう少し起きるの早かったら聞かれるとこだった・・・。真央ちゃん、いや、真央のバカヤロー)
「さ、早く帰ろーか。ゴメンね私のせいで遅くなっちゃって。」
「んー?ま、いっか。うん帰ろう」
うまく話しを変える方向に持っていけた。後ろでニヤニヤしている二人がムカつくところだが。
「ねえみお?」
「ん?」
このパターンは・・・
「俺と付き合って?」
ここで素直になれば付き合うのは容易なはず
「嫌だ」
けれど、もしそこまでみおが大人しく自分の気持ちを出せたなら、こんなに時間がかかるわけがないだろう。
そんなみおの気持ちを知る秋人と真央はどうしても歯がゆくなってしまう。
どうすればみおは全てをさらけ出せるのであろうか。
それは一生かけても解けない超難解問題な気がした。
結局そのまま普通に帰宅した。けれどまたもや、みおの部屋の前には人影があった。
「お、笠原ちゃん。だいぶ遅かったね。」
「・・・西森くん」
そこにいたのは拓也だった。
みおの頭をあの日の記憶がよぎる。
「そんな怖がんないでよ、もうあんなことしないからさ」
「・・・。」
「ねえ、笠原ちゃんさ、そらのこと好きっしょ」
「!」
「んーそうだなあ。ズバリ俺があんなことしちゃった日からかな」
「!!」
「その顔は図星だね?」
全て見抜かれてしまい思わず声が出ない。
「なんか悔しいなあ。俺がキッカケ作っちゃったなんてさ。ま、さすがにもう諦めるよ」
「ホント?」
「あんなことしちゃったうえに、もう心がそらに向いちゃったんなら諦めるしかね」
「・・・。西森くんには感謝してるよ。形はどうであれ、私の素直な気持ちを気づかせてくれたから。」
「・・・やっぱ、いいな笠原ちゃん。お詫びと言っちゃなんだし、俺がいうのもアレだけどさ、一つ助言ね」
「?」
「笠原ちゃんは今自分の気持ちに気づけた。そしたら次も素直になり続ける必要は無いんだよ」
「・・・どういうこと?」
「はは、それは自分で分かろうよ。・・・それに気づけばもう何も壁はないよ。」
それだけ言い残して拓也は去って行った。
(素直になんなくてもいい?)
拓也の言ったことが頭の中をグルグル回る。
ドアを開け、着替えをして、夕食を作って食べてるときも、風呂に入っている時も、ずっと考えたが答えは出てこない。
「あ、真央に相談してみよう!」
そして電話を鳴らす。
『もっしぃ?みおっちどした?』
「あ、真央?あのさあ、素直にならないってどういうこと?」
『はい!?』
「実は・・・」
みおは拓也に言われたことをすべて話した。
『あー!なるほど!・・・いやあその手があったか。西森くんやるなあ!』
「ちょ、真央どういうことなの?」
『そーいや、やっと真央って呼んでくれるようになったね』
「あ、そーいえば。ってそんなことどーでもいいよ!」
『あははー。みおっち?西森くんの言うとおりだよ。それは自分で気づかないと意味ないもん』
「えー真央までそう言うの?」
『ま、今度は意外と早く気づけるんじゃないかな。じゃ、おやすみー』
「ちょ、真央!」
そして電話が切れる。
真央に話せば解決するかと思ったが、むしろ謎が深まったばかりであった。
駄目もとで秋人にもメールで聞いてみたが、返事は真央と変わりなかった。
「あ~もう何なの~自分に素直になれって言ったり、今度はその逆~?」
不幸にも明日から夏休み。これでは真央に文句の一つも言えない。
(こんなめんどくさいんなら、好きになんなきゃ良かったーー!)
しかし今更そんなことを言っても取り返しはつかない。みおは一度好きになった相手のことはなかなか頭から離れないのだ。
両思いなのになかなか結ばれない。あと少し
なのに。あと一つの壁なのに。
みおにとってその壁は海より深く天より高く感じられた。
そして次の日から、みおはその壁を越えようと必死で挑んでいく。




