第十話 自分に素直に。
「琴美ちゃんちょっといい?」
「はい、笠原さんなんでしょう?」
朝、みおは学校にに来ていつものように朝の時間をみおなりに有意義に過ごしたあと、登校して来た琴美に声をかけた。
「ええ!?まあ不可能じゃないですけど」
「うん。ならお願いできる?」
「はい・・・でもいいんですか?」
「うん、そうでもしないとね。・・・ってか何で敬語?」
「笠原さんは姉御的な存在ですもん!」
「あ・・・そう。ま、お願いね?」
了解です!と琴美は敬礼をする。
そしてその旨をちょうど帰ってきた真央に伝える
「朝練いつもお疲れ。」
「あ、みおっち~!!」
「はいはい、抱きつくのは秋人君だけにしときな」
「ちゃんと毎日抱きついてるからー」
「そーかい。でさ・・・」
と、みおが言いかけた時にそらが教室に入ってきた。
(これは説明するよりまえに見れるか?)
「おーいみおーおは・・ってうわ!」
「そら様!」
「なんてかっこいいんでしょう!」
キャーキャーとそらの周りに群がる女子生徒。それを見たみおは琴美にピースを送る。それに琴美は苦笑いをする。
そう。早くもネタバラシとなったのだが、これが先ほど琴美に頼んだことだった。
普段そらファンクラブのメンバーは会長と副会長によって行動を制限されている。
具体的にいえば、こうして直接アタックしてはいけなく、見守っていようというのが、ファンクラブの入会条件の一つになっている。
しかし、このような条件があるのならファンクラブなどに入らず、自由に動いた方がいいのでは、とみおも思ったのだが、なにやら入会すれば特典があるのだとか。内容を尋ねたが、これから先は企業秘密なのだそうだ。
入れば分かると言われたが、そんなのに入るくらいなら、舌を噛み切って死ぬ覚悟があるのだ。
ちなみにこのまえの防御壁もこの琴美の力を借りていたのだ。そして今日はそれの超超超ロングバージョン、一日中制限解除をしてもらったのだ。
「・・・みおっち、これ作戦なの?」
「あはは、嫌ウザかったからさ~」
「素直になるって話しは?」
「あ・・・。んーと、あ!ほら!距離をおいた方がなんか気づくことがあるかもじゃん!」
「ふーん。みおっち今完璧に忘れてたでしょ?」
まさにぎくっと効果音が出そうなくらいに反応した。真央ははぁとため息をつく。それを見て、何も言い返せずみおはただ苦笑する。
「みーおー」
教室に響く声に聞こえないフリをしながら。
・・・四時限目・・・
(ふう。文系に進んだのはいいけど、授業つまんないなあ)
みおはもともと数学が得意だった。数学に関しては楽しみすら覚えたくらいだ。
けれど、あまり理系に関して積極的に進みたいとか思わなかったので、流れに身を任せ、文系を選んだのだ。
授業が頭に入らないと、余計なことが頭に浮かんでくる。
(素直になるって言ったってなかなか厳しいんだよ)
ちらっと真央のほうを向く。真央は必死になって黒板を写していた。
みおはなぜだかあまり勉強せずとも、テスト前にちょこっとするだけで点数は取れる。
いつも20には入る学力を持っている。けれど、小さい頃から夢などはなくまぁいつかはできるだろうと早16年。きっとこのまま普通の大学行って、
普通に就職するんだろうなあと。
「笠原。ここの答えは!?」
「え!?」
「83Pの2。」
「はい・・・」
(やっば、解いてなかった・・・ん?あ、簡単じゃんか)
「えと、set up a timetable for corrective actions.
・・・かな?」
「・・・よろしい。すわっていいぞ」
「はい」
(ふう。あーぶねー、昨日暇つぶしに入試問題解いといて良かったー)
・・・暇つぶしという考えが信じられない。生まれながらの天才はいないということだ。
そして昼休み・・・
「うーみおっちー勉強教えてよー」
「だよなあ。どうしてみおちゃんそんなできんの?」
「まあ授業聞いてりゃ何とかなるよ」
本当に頭のいい人ほどその努力はひけらかさないものなのだ。
「笠原ちゃん!おれも入れてよ!」
「げっこっちを忘れてた!」
拓也相手ではあの作戦は使えない。
(ここは我慢・・・)
「かわいいなあ、またキスしちゃおうかな?」
「できるかあ~!!」
みおは走り出す!
それを追って拓也もゆっくりと立ち上がり、追いかけに行く。
数分後この前も逃げ切った場所にきていた。
「ふう。ここなら前も逃げ切ったし、大丈夫」
「じゃ無いんだなあ」
「!」
もうすでに、拓也は後ろにきていた。
「笠原ちゃんの行きそうなとこぐらい分かるよ」
「あんたはストーカーか!?」
みおは強気で対抗する。が、拓也は徐々に距離を詰めて行く。みおは後ろに下がろうとしたが、なるべく見つからないところに来ようとしたのが仇となり、後ろはもう壁だった。
二人の距離は近づく。
・・・5m、3m、1m。
そしてもう直ぐに触れれる距離まで近づいた時、拓也が口を開く。
「ねえ笠原ちゃん。・・・しっかり俺を見てよ。そらだけじゃなく、俺にもチャンスちょうだいよ」
「!だっ・・・!」
しゃべろうとしたみおの口は塞がれた。拓也がキスをしたのだ。しかも今度は唇に。
「はぁはぁ・・・何でこんなことすんの?」
「照れてるの?顔真っ赤・・・。前にも言ったでよ?笠原ちゃんのこと好きだって」
「っ!そんな・・・ん!」
また拓也はキスをするしかも今度は先ほどと違い深いキス。
拓也は舌を使い、みおの口の中を巧みに攻めてくる。始めてのことにみおは抵抗できず、ただされるがままになっていた。
(・・・やだ!怖い!気持ち悪い!)
唇が離れ、みおは大きく呼吸をする。
息は乱れ、顔は赤くなっている。
「・・・ホントかわいいな〜もうずっと放したくないよ」
そう言って拓也はみおをギュッと抱きしめる。
みおはもう抵抗したくとも、力が抜けてしまい、声すら出せなくなっている。
そして開放したかと思うと、また深いキスが始まった。そして、拓也の右手が制服の上からみおの一般より少し大きめな膨らみを触る。
どんどん行為が危なくなっていき、ついに拓也がみおのシャツの中に手を入れようとしたそのときだった。
「みおっち!!!」
「みおちゃん!!」
救世主が現れた。
秋人がみおから拓也を引き剥がし、力の抜けたみおを真央が支える。
「拓也!・・・強引なやり方は感心しないな〜」
「あーあもうちょっとで笠原ちゃんの全部手に入れられたのに」
「・・・でもそれは心は手に入れられない。もっとしっかりとした関係を築くのが優先じゃあないのか!?」
「・・・・・・俺にだって余裕がないんだよ!
・・・ライバルは学園の王子みたいでファンクラブまであってさ。そんなやつに勝つためにはそらよりも早くアタックするしかないじゃんか!」
「西森くん!それは間違ってる!・・・みおっちは見た目で判断するようなひとじゃないよ!相手が王子みたいだからって簡単について行くひとじゃない!・・・・・・西森くんもそんなみおっちだから好きになったんんじゃないの?」
「・・・っ!・・・俺は・・・どうしたらいい?」
「それは自分で考えなよ。みおっちはどんなひとに憧れる?好きなら相手のこと、しっかり考えないと」
「・・・ゴメン笠原ちゃん。」
とだけ言って拓也は去って行った。
そこで今脱力状態にあるみおに声をかける。
「みおっち大丈夫!?」
「きづいた・・・」
「え!?傷ついた!?どこ!?ケガしたの!?」
「違うの。私・・・気がついたの。自分の・・・素直な気持ちに。」
「!」
みおは拓也に抱きしめられ、心底嫌だと思ったし怖かった。
それはとても嫌なものだった。
「西森君は・・・冷たくて・・・こわ・・・くて・・・。」
みおの目からはしずくがこぼれる。
真央たちは一瞬驚いたが、泣きながらも頑張って話してくれる友人の目を見つめる。
「でも・・・あい、つに・・抱きしめ・・・られ、た、時は、あったかくて、優し、くて・・・」
他人に自分のことを騒がれ、自分の弱さから泣いて早退したあの日。
自分に素直になると決めたあの日。
あいつ、生まれてからずっと近くにいたあいつはみおを優しく包み込み、いつのまにか心の支えになっていた。
「私・・・そらが・・・好き。」
みおはまた一歩踏み出す。一歩は一歩でも大きな一歩だ。
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「ねえ秋人?」
「ん?」
「みおっち・・・頑張ったよね」
「だな・・・。俺たちのときはあんな苦労無かったもんな・・・」
秋人と真央は中3の時結ばれた。お互い好きだと気づいた日が、キッカケが同じで、告白した声もハモってしまうくらい息がピッタリだった。
けれど真央たちの親友は違った。
片や熱烈にアタックを、片やそれを必死にかわす。
でもその思いは今日噛み合った。
その思いを知るのは真央と、秋人、そして本人であるみお。これから、みおはまたひと頑張りしなければならない。
「みおっちはいつ伝えるのかなぁ」
「いつまでも来ないかもな」
「・・・否定しきれないのが怖いんだよね」
「そらはどうなるかな・・・」
全てを知る真央と秋人。そして自分の心に気づいたみお。今もみおを思うそら。
今、大きなターニングポイントが待ち受けている
ちょっと急展開になってしまいました(汗




