嵐の中の静けさ
窓から差し込む赤い夕日は、教室内の全てを朱色に塗り替える。教室と言ってもそこには生徒のための勉強机が並ぶわけではなく、元は空き教室だった場所である。現在ではとある部室として使用されており、部屋の中心に長机が向かい合って置かれるだけの、殺風景な場所だった。
部活動名は『架空人生共有会』。活動内容は未だ不鮮明である。
そんな教室の中、窓を開け、そこから身を乗り出すようにして黄昏る少女は、そよぐ風になびかせる長い髪が良く目立つ。最も、背を向けているのだから当然だろうといえばその通りだ。
その透き通る金髪は、だが今の時間帯にその色を見せる事無く夕日の色に染まっている。そこから斜め後ろのやや離れた位置に立つ、腰までの黒髪が似合う優しそうな少女は何をするでもなくただ彼女を見守っていた。
二人はそうしたまま、風によって髪はなびくものの、自身の意思では何一つとして動かない。かれこれ数分、この状態が続いていた。
この部室は、文化部棟と呼ばれる、校舎から少し離れた位置に建てられる二階建ての棟の一室である。
階下では、誰かの笑う声が聞こえる。酷く楽しそうで、限り無く日常的である雰囲気が壁や床を通して感じられた。過敏にそれらを感じる事が出来るのは、ここが人気の無い二階の奥地に部室があるためであろう。その上、空間が静寂に包まれているのが手伝っていると考えて間違いない。
「風が啼いている」
たそがれ乙女は口にする。
部室内は温度を下げたような気がした。その意味は決して良い意味ではないし、この表現をいい意味で使っているところを見た事が無い。捉えるのも稀だ。
気がつくと表情を強張らせている同級生は、私の正面の席に座ったまま、気まずいようにこちらをチラチラと窺ってくる。私にどうにかしろと言っているのであろうが、この会話に突っ込んでいく果敢さも勇猛さも、残念ながら持ち合わせていなかった。そもそもこれは会話になっているのであろうか。いや、これからそうなるのだろう。
「もう間も置かずに”奴等”の時間が訪れる……気を引き締めろ」
サッシに両手を付いて、押し出すように身を弾いて窓から離れる。するとふわりと髪は浮かび、彼女は流れるように此方を視た。
緊張は走らない。その変わりに嫌な予感がした。授業中に先生と目が合うような感覚だ。うげぇっと言う感じで、私は思わず顔を反らす。だが無論、そんな行為は無駄であった。
「……もう日暮れだ」
何かを促すかのように、何を求めているかも分からぬ言葉が飛来する。どうすりゃいいんだと嘆く暇すらも与えぬ威圧が胸に突き刺さった。私は救いを求めてもう片割れに視線を流すが、彼女は依然として、窓付近の少女を見つめたまま動かない。視線は完全なる一方通行を作り出していた。
ならばと、正面の同級生”粟田栗子”をチラりと見るが、先ほど無視したのが祟って今度はそっぽを向かれてしまっている。これが世に聞く四面楚歌という奴か。
私は腹を決め、大きな深呼吸の後しっかりと彼女を見据える。この眼は凄まじく勇ましいものだろう。
「あぁ、そうですね……この世界では、もう日暮れです」
がたりと音を立てて、椅子を足で押し出すように引いて立ち上がるのは私である。彼女等みたいに長い髪を持たぬ私は揺れるのが一枚のスカートだけになるが、別段羨ましいだとか憧れるだとか言う事は無かった。
「ならまた後日、という事になりますね。夜になってしまっては、貴方に、私に、フェアじゃなくなる」
ふっ、と彼女は笑い、今度は窓の縁に寄りかかる。腕を組んで余裕を体現してみせる彼女は、さらに鼻で笑うことで圧倒的な優位さを見せていた。主観的にも、そして恐らく客観的にも。
私は右手を腰に当ててモデル立ちをするだけで精一杯だから、一目で私がただの雑魚だと見て取れてしまうのが悲しいところだ。
そこで漸く、手を二度叩く音が響き渡る。音の主は、黒髪の乙女だった。
――その音で身体がやっと弛緩する。硬直していた筋肉は込められていた力を解して堕落し、崩れるように席に座り込む私は、そのまま上目遣いで二人の先輩を窺った。
霜月京子は薄い笑みを作って、窓際に寄りかかる身体を起こして此方に向かい、やがて私の背中側、席にして横の位置に腰を落とす。御堂珠樹は夕日にさえも映えてしまう黒髪を揺らしながら、リンコの傍らの席に着いた。私は正面を向きなおし、ほっと短く息を吐く。私はリンコと、御堂は霜月と向き合う形で一旦落ち着き、それから御堂が流れるような自然さで口を開いた。
「大分慣れてきたみたいね。違う自分を装うというのは、演技と同義語というのは分かってもらえたかしら?」
それぞれの席の前、机の上には紅茶が注がれたカップが並べられている。既に数十分も前に淹れられたものなのだが、口にしてみるとまだ温い。熱い方が美味しいのかもしれないが、猫舌である私にとってはこの程度が丁度良かった。
私は口に含んだ紅茶を飲み下しながら頷き、それから口内が空っぽになってから返答する。
「ええまぁ、先輩方の指導のお陰ですよ~」
なははと笑い後頭部に手を当てながら反り返る。そんな私に誰一人として視線を止める者は居らず、それから額に滲む汗を拭いながら、顔に掛かる髪を後ろに流して両手を膝に置いた。
――季節は初夏。六月の半ばである。故に制服は夏服。皆ワイシャツを着用するだけの薄着となっており、人々の、主に男子生徒の感嘆を煽った。
確かに、今年の夏は暑い。春の時点で例年より五度ばかし気温が高いと天気予報士がのたまっていたのだ。そしてその通りに汗はにじみシャツは身体に張り付く。学校指定のワイシャツは透けて、下着が人に見えてしまうほどである。それでも私は愛用のニーソックスは決して脱がない。なぜならば、若干筋肉質な脚が露になってしまうからだ。しかしそのせいで周囲から寒がりだと勘違いされてしまい、私だけ暖かい紅茶でもてなされてしまっている現状を持っていた。
「あ……空、曇ってきましたね」
リンコが何もしていないのにもかかわらず冷たいストレートティーで喉を潤して何かをほざく。ふはは、その紅茶は既に温いだろうと腹の中で呟きながら、私は頷いて窓へと視線を投げると、先ほどまでの夕日は黒煙が如き雲によって遮られようとしていた。
「そういえば今週中に入梅すると聞いたな」
「そう、残念ね……。ちなみに皆、傘は持ってる?」
「いやあ、ちょっと持ってないです」
「私は常に備えて折り畳みのを持ってます」
それじゃあ、と御堂は立ち上がる。流れるように霜月も、席の脇に置いてあるカバンを机の上に置いて起き上がる。私達も促されるように席を立ち、カバンを手に持ち、或いは肩に掛けた。
「雨が降ってしまわないうちに帰りましょう。どのみちいつもより今日は遅いし、仮に降雨に見舞われても、私と京ちゃんは帰り道が一緒だし、ミズキさんにはリンコさんが付いているし、ね?」
恐らく御堂の方が傘を持っているのだろう。否、二人とも折り畳み傘を所持しているのかもしれない。いや、普通に考えれば置き傘、という手段を持ち合わせている可能性もある。なんにしろ、この二人が不測の事態に困り果てるという状況を、私は想像できなかった。常に優しく、常に冷静である二人である。このまま完璧人間人生を貫いて欲しいと思うほど、欠点が見られなかった。
そして私は傘を持っていない。リンコは持っている。
つまり私の為に、通常より早くの部活終了を決めたのだ。たった今”どのみちいつもより遅い時間帯だし”と言っていたが――ともかく、なんとなく申し訳なくなる話である。仮に私が部長だったら、構わず雨が降るまで部活を続けていたであろう。そしてその後輩へと傘を手渡し、というか半ば押し付けるようにして豪雨の中を走って帰る。恐らく批判はご意見箱一杯に溜まるだろう。
かくして私達は、やがて完全に夕日が燃え上がるが如く真赤になる頃、東の空が夜の色以外に侵されるのを見ながら下校するのであった。
――自宅の最寄り駅に到着すると、既に空は黒雲に塗り固められていて、さらに冷たい、否、生温かい雨を降り注いでいた。水滴は力いっぱい叩きつけられるように弾けて音を鳴らし、点ではなく線を描く降雨は視界を白く染める。
多くの人々はその時点で駅入り口で立ち往生しざわめくが、私はというと、顔の前で両手をあわせ、且つ頭を垂らしてリンコに念仏を唱えていた。
「リンコさんリンコさまどうか哀れな産子が如きか弱きこの私めに雨風を防ぐそのちっちゃい折り畳み傘をお分けたまえ」
「神様に守ってもらいなさいよ。って言うか、ちっちゃいから二人も入れないし。こんな豪雨じゃ尚更よ」
確かに彼女の言葉通りこの降水は豪雨であり、入梅というよりはただの夕立である。
彼女は心底嫌そうな顔でそう告げると、カバンからさっさと取り出した折り畳み傘の拘束具を外して、中棒に手を添わせるように傘布の中へ手を突っ込み、今正に広げようとする体勢のまま人ごみを掻き分け駅を出ようとする。
私は焦る心を奮い立たせ、独り残される恐怖に、あるいは雨の中一人で帰らざるを得ないかもしれない孤独さに震える手を精一杯伸ばして、なんとか彼女の肩を掴み、引き寄せる。人ごみ突入前だった彼女は誰に迷惑掛ける事もなく、驚いた顔をして私の元へ舞い戻ってきた。が、何故だか彼女の頬は、朱色に染まりつつあった。外はもう暗いというのにも関わらず。
ぱっと手を離して彼女の身体を自由にすると、彼女は少しばかり顔を赤くして、それから短く息を吐いた。
「今日は父さんが遅いらしいから、帰り道にスーパーに寄らなくちゃなんだよねぇ」
「もう――わかったって。でも、背はアンタの方が高いんだから傘はそっちが持ってよね。無論、私最優先で」
「はいはい」
「ハイは一回」
「あいよ」
なんだかんだで押せば願いを聞いてくれる彼女は、なんだかんだ言って優しいのだ。中学時代からの友人はこうだから中々縁が切れなくて困る。勿論、損得勘定だけの仲では決して無い。
私は人を掻き分け、彼女の手を引き、やがて傘を広げて歩き出す。手を引いたのにもかかわらず、彼女がその手を自主的に弾いたが故に数歩遅れて、その為に少しばかり濡れて防水領域内に入り込む彼女は、冗談交じりに後頭部を叩き抜けた。
視界は開け、いつもより人通りの少ない駅前が広がる。そしてそう間もおかず、私達は近くの大手スーパーへと入店した。
――自動ドアが快く迎え入れる。緩慢だと受け取れる動きだがストレスを感じさせない程度の速度なので、私は素早く入り込んでカゴを手にする。傍らでは一歩遅れて入店するリンコが、早足で私に追いついて来た。
「何買うの?」
「何がいいかねぇ」
彼女の問いに対する返答は適当にして、正面に大きくプッシュされる旬の果物の陳列台を華麗に回避して、右脇の常に水蒸気が噴出されているが為に潤っている野菜の、その陳列を眺めて歩く。が、今現在特に野菜は切れていないことを思い出した。
「あぁそう、トマケがもう無いんだよ」
「は? オマケ? なんの」
「トマケだよ。トマトケチャップ」
小バカにするように聞き返す彼女を、その上から愚者を見下す神が如き視線を重ねて返す。彼女は「はぁん」なんて分かったかわからないような気の抜けた、聞きようによっては外人の相槌みたいな返答で済ませた。何か気に喰わないが、リンコ補正で許す事にしてあげよう。
それからすぐさまケチャップを発見し、その中で特に高くも安くもないものを選んでカゴへ。それから彼女の要望で、菓子売り場へ直行した。
その移動の最中で色々手に取っていたら、かごの中には既に今夜の夕飯の食材が揃っていた事に気付く。これで彼女が適当に菓子を選べばレジへ行こう、などと考えていると、ぼうっとしているのかと思ったのか、彼女が肩を叩いて私の意識を呼んだ。何かと思ってそちらへ顔を向けると、彼女は私の視線に合わせるような高さに、昔懐かしのシールのオマケ付きウエハースチョコを上げていた。なんだか健気な子どものする行為に見えて、ちょっと心が揺らいだのは秘密だ。
パッケージにはなにやら剣や鎧で武装した青少年たち。ファンタジー風味である。私はその中の、丸まったような角を生やす悪魔っ娘が可愛いと素直な感想を漏らすと、あからさまに軽蔑する視線が胸に突き刺さる。なにやら心外だった。
「これに対する感想なんか聞いちゃいないの。聞きたくもないし」
「でもリンコの方がもっと可愛い」
「あら、ありがとう」
「とか言われたかった?」
鋭い拳が腹に食い込む。私の瞳は上向いて、さらに一回転してしまう勢いだった。内臓が押し込まれて息に詰まり、指先からは力が抜け、だが私はそれでもカゴを落とさず踏ん張った。
私は涙目になって彼女を睨むと、悪かったわ、なんて簡単な謝罪と共にお腹をさすってくれた。しかしこんな程度でプラスマイナスゼロになったと勘違いされてしまっては困る。私が軽い女だと勘違いされてしまうではないか。でもまぁ結局、彼女の怒りを促したのは私なのだから、許してあげよう。イーブン、と言う奴である。
「いや、別にシールも集めてないし……」
ウエハースチョコはなんかパサパサするのでそもそもあまり好みではない。
「でもこの前、あったじゃない。机の中に」
「何勝手に見てんのよさ」
「懐かしいなぁ~って自分で見せたんだわさっ!」
言われて見ればなんとなく思い出してきた。しかし確かアレはギックリマンチョコであって、この全裸干渉チョコとは違うのだ。それを懇切丁寧、慇懃無礼に説明をしてみるものの、
「でも同じシールじゃない」
なんてトンチンカンな返答しか来ないので、私は肩を落としてレジへと向かった。
「お父さん居ないなら家でご飯食べる? 多分お母さんは了承してくれると思うけど」
私の家はぶっちゃけると父子家庭である。母は今から大体十一年くらい前に訳あって他界してしまっているのだ。そして彼女はこんな何でも知ってる優しい幼馴染面をしているものの、出会ったのは僅か三年前なのだ。
しかし、仲が良いのでそれもあまり関係ないのだが――。
「好意はありがたいけどな。どのみち父さんに飯……ご飯作っとかないといけないし、お前ん家遠いじゃん」
「そう? 歩いて十五分だけど」
「この雨じゃ厳しいねぇ」
駅も離れて、本格的に歩行者が少なくなる。その代わりに一車線しかない道路には車が渋滞でもしているような勢い、つまり緩やかな速度で走っていた。私達はその、白線だけが引かれる歩道の内側――勿論、右側通行――で、私が傘を指しながら歩いていた。道は高いコンクリートの塀に挟まれ、いつもはその上で呑気そうに眠る猫も、空を飛ぶカラスも居ない。まぁ、この雨だ。当たり前だろう。
――しかし、断る理由はそれだけではない。もう腹具合は今日の夕飯色に染まっていて、且つ、彼女の家に行くとしても着替えなければならないので、結局家に帰らなければならないから面倒なのだ。彼女はこの事情を知っているが、恐らく彼女の両親はこの事を知らない。それ故である。
いくらこの、”女の子として認められる美貌――男勝りという系統だが――”を持ち合わせていても、一般的認識と了承とを得られるのは難しい。その事は、まだ何も起こっていない現在ですら理解済みだ。
そう、訳あって『女装』しているというこの現状を他者に認められるのは……。
――そんなこんなでリンコに家まで送ってもらった。正確には玄関である。まるで令嬢のような扱いだ。
「ありがとな」
「この借りは高いわよ?」
「んじゃ明日高い傘、貸してやるからな」
「ははっ。まぁなんでもいいわ。でもま、何か困ったらなんでも言ってよね」
彼女はそう言って背を向け、我が自宅を後にする。私は彼女の背を見送ってから、パンパンに張ったスーパーの袋を手に、鍵を開けて家の中に入り込んだ。
玄関を閉めると、雨の音は少し薄れる。私は自前の肩まで伸びる髪を手で撫でるようにして掻き揚げて、ビショビショに濡れる左肩に触れると手がまるで水に浸したように濡れた。さらにスーパーを出た頃から思っていた事だが、肌に張り付き不快感を催させいる。
「……先に着替えるか」
どうするかこうするかと、袋を玄関の端に置いてから数分間手を拱いて、それから靴を脱いで靴下を手に、けんけんぱと意を決して跳びあがろうとした瞬間。
――チャイムが家中に鳴り響いた。
「チィ! なんてタイミングの悪さだ。時間とクソッタレな機会的に考えてリンコだろうが……」
頭の中の呟きを声にして、水が溜まる革靴ではなく簡単に履けるサンダルを踏んで大股一歩踏み込んだ。そこで、そういえば鍵を掛けていなかったな、と思い出して――手も触れていないのに、ドアノブは自然に下に下がる。それは外側からリンコが勝手に、なんの遠慮も無く玄関を開け放とうとしている事を意味しているのだ。
なんて野郎だ。デリカシーの無いのは相変わらずで安心する。
「おいスギ!」
――そんな声は、悪態を付く頭の中の思考が全て消し去った。
ドアを勢い良く開いて、家の前の景色を遮るように立つのは見慣れぬ制服に身を包む男。短髪が良く似合う好青年は何が楽しいのか頬をにこりと吊り上げて玄関に入り込み、
「悪いな、居るならちょっと来て――」
目の前に居る私をじっと見て、硬直した。
――脳が震える。思考が焦点を合わせぬように揺らぎ、私は彼の眼を見据えながら、全身を震わせていた。だがその中で、私の心臓は確かに停止していた。同時に、全神経に電撃が走ったような激痛を覚えた。覚えざるを得なかった。今はどうにかして、このどうしようもなく混乱した感情を別の衝撃で消し去らなければならないと、本能が警鐘を掻き鳴らすよりも先に行動に移していた。
彼は中学時代の親友、榊慈郎その人で――。
「お前、何、してんの……?」
私の耳にはもう何の音も入らない。びっくりするくらいの静寂を保っていた。
――今日は記録的な大雨になりそうだ。そう頭の端で考えて、私は静かに目を瞑る。
榊は瞳孔が開くその眼で、開け放した口をそのままにして此方を見る。それが私が見る彼の最後の姿だった。
――中学時代の友人は中々縁が切れなくて困る。仲が良くて、損得勘定だけでなければ尚更だ。
そういつの日か考えた私の言葉が頭の中に蘇る。現実から引き剥がされた意識は、さらにその深層下からも投げ出されて、私の意識は完全に消失した。少なくともこの数分間、私の意識が失われたのは確かである。