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あらゆるイケメン達が、王女の私を称賛してきて最高です!  作者: 逆立ちハムスター


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至高の咀嚼

ジルヴェスター王太子の「ストーカー的観察ログ」に胃もたれした私は、物理的な空腹を満たすため、王城が誇る鉄の厨房へと足を運んだ。


そこに君臨するのは、宮廷料理長セバスチャン。

……出たわ。相変わらず、視覚の暴力みたいなイケメンね。

燃えるような赤髪を適当に結い上げ、はだけたコックコートの隙間からは、過酷な厨房で鍛え上げられた大胸筋が主張している。彼は私を一瞥すると、手にした牛刀をまな板に突き立てた。


「遅いですよ、ホメーテ王女。貴女という『極上のメインディッシュ』を待たせすぎて、私の情熱はオーバーヒート寸前だ」


「……あら、口の聞き方には気をつけて。でも、その生意気な態度、嫌いじゃないわ。さあ、私を満足させなさい」


ダイニングの椅子に座るや否や、セバスチャンが「超至近距離」まで詰め寄ってきた。

近い。高密度のイケメンが視界をジャックする。彼の吐息からは、最高級のブランデーとスパイスの香りがする。


「今日の献立は……『貴女』を世界で一番美味しく見せるためのフルコースだ。さあ、まずはこの『黄金のコンソメ』を。……一滴残らず、その紅蓮の唇で蹂躙じゅうりんしていただこうか」


私はスプーンを取り、琥珀色のスープを掬った。

セバスチャンの顔が、私の顔面からわずか数センチの距離まで迫る。まつ毛の一本一本が、鋭い針のように私の視神経を刺激する。


「……っ、ふふ、……いただくわ」


セバスチャンが私に見惚れている。不味いわね。


「……あら、美味しい。……でも、セバスチャン。貴方、何か忘れていない?」


私は彼を、少し冷ややかな目で見下ろした。

料理が美味しいのは当然。王国の料理長なのだから。

私が求めているのは、料理の味ではなく、料理を食べる「私」に対する、味付け(称賛)である。


私がもう一口スープを口に含んだ瞬間。セバスチャンの喉が猛獣のように鳴った。


「おおおおおッ! ご覧なさい、そのスープを受け止める唇の弾力! まさに産地直送、朝獲れの最高級ラズベリーのような瑞々しさだ! スープが舌の上を転がる音……それは、熟成されたヴィンテージワインがデキャンタの中で目覚める瞬間の調べ! 王女、貴女の口腔内は、今や世界最高の熟成庫セラーだッ!」


(熟成庫!? ……いいわ、もっと言いなさい!)


「見てください、この喉越しの所作! 嚥下えんげの瞬間の首筋のラインは、白磁のボウルに注がれた最高級生クリームのようになめらかで、気高い! 貴女がスープを飲むだけで、この厨房の全食材が嫉妬で発酵しちまうぜッ!」


私は、彼の「食材比喩」の洪水に脳を焼かれながら、メインの子羊のローストにナイフを入れた。

肉厚で、官能的なほどに柔らかい。それを口に運び、奥歯で一気に噛み締める。


「……ああっ、美味しい……!」


「そうだ! もっと強く、もっと無慈悲に咀嚼するんだッ! 貴女の歯が肉を断つ音……それは、完熟したトリュフの皮を剥く時の、あの背徳的な快楽の音だ! 噛むたびに溢れる肉汁と、貴女の唾液が混ざり合う……! おお、なんというマリアージュ! なんという化学反応! 貴女の口の中は、今、銀河系で最も熱いテフロン加工のフライパンだッ! 宇宙の旨味がそこで再構築されているッ!」


(フライパン! 私は今、宇宙を炒めているのね!?)


セバスチャンの顔が、さらに寄る。もはや鼻先が触れそうだ。

彼の瞳は、獲物を狙う鷹のように私の口元を凝視している。


「見てください、その頬の膨らみ! まさにオーブンの中で理想的に膨らんだスフレの如き曲線美! 幸せそうに咀嚼するその表情……それは、低温調理で48時間愛でられた極上ロースの安らぎそのものだ! 貴女が食べる姿を見ているだけで、私は、……私は、自分の心臓をカルパッチョにして差し出したくなるッ!!」


「セバスチャン! 貴方の言葉、最高にスパイシーよ! 私は今、世界で一番価値のある、最高級の珍味になった気分だわ!」


私は歓喜し、手掴みで骨付き肉にかぶりついた。

淑女の作法? そんなもの、この熱狂の前では、パセリの飾りにもならない。

口の周りにソースが飛び散り、脂が滴る。


「……っ、ああ! そのワイルドな喰らいつき! 骨の髄まで愛そうとするその貪欲さ! 貴女はまさに、飢えた牝豹という名の『最高級キャビア』だ! その指先に付いた脂さえ、私にとっては、最高級のエクストラバージンオリーブオイルより尊い……! 一滴たりとも、床に落とすことは許さない。それは、この国の国家予算に匹敵する、至高のドレッシングなんだからなッ!」


セバスチャンは、私の手の甲を掴み、その指先を見つめて恍惚の表情を浮かべた。


「ホメーテ王女……! 貴女の胃袋に収まる食材たちは、どれほど幸せなことか! 貴女に咀嚼され、貴女の一部になれるなら、私は、……私は、今すぐ自分をミンチにして、貴女のハンバーグになりたいッ!!」


「ええ、いいわよセバスチャン! 貴方をこねくり回して、最高にジューシーに焼き上げてあげるわ! もっと、もっと私を褒めなさい! 私の食欲が、この国の食料自給率を1000%に引き上げると、叫びなさいッ!」


ダイニングには、セバスチャンの「食材まみれ」の絶叫と、骨にかぶりつきながら高笑いする私の声が、異様な熱量で渦巻いていた。


……そして。

その様子を部屋の隅で見ていたジルヴェスター王太子は、

「……ハンバーグ。……負けた。……私の『聖典』には、肉料理の語彙が足りなかった……!」

と、激しい敗北感に打ち震えながら、血眼で「肉の部位」をメモし始めていた。

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