第4話 ランキングの数字は嘘をつかない
現実を突きつけられる凛夏
そしてももかの追い討ち
「ライバー・ミサキ」としての活動は、
驚くほど順調な滑り出しを見せていた。
連(勝利)や勇次のリスナーたちが
遊びに来てくれるおかげで、
画面はいつも賑やかだ。
連自身も、忙しい合間を縫って
ほぼ毎回のぞきに来てくれる。
(……でも、連くん
数分でいなくなっちゃうんだよね。
忙しいのかな?)
そんなある夜、凛夏はふと、
白百合ももかの配信が
始まっていることに気づいた。
同じ「連推し」の仲間だし、
たまには挨拶でも……と
軽い気持ちで入室したのが運の尽き。
「あ、ミサキちゃんいらっしゃーい!」
画面の中のももかは
相変わらずあざといほど可愛い。
そしてコメント欄には、
自分の枠では見たこともないような熱量で
連がコメントを連投し、
キラキラしたギフトを景気よく投げていた。
(……え、私の時より
全然テンション高いじゃない。
ギフトの勢いも違うし……)
凛夏は愛想笑いの顔文字を打ち込み、
お返しのギフトを投げて退室した。
だが、気になって
「新人カテゴリー」のギフトランキングを
覗きに行って、絶句する。
ももかのランキング1位には、
燦然と輝く『連』の文字。
その額
なんとミサキに投げてくれた額の3倍以上。
(3倍……!? 応援してるよってDMくれたのは、
社交辞令だったの……?)
数字という名の残酷な現実に、
凛夏の心はポッキリと音を立てて折れた。
その瞬間、スマホが震えた。
勇次の配信開始通知だ。
今の自分には
あの脱力系モデルの癒やしが必要だ。
凛夏は吸い寄せられるように
勇次の枠へ飛び込んだ。
「あ、ミサキさん。今日は早いね」
カメラの向こうで
勇次がふわりと優しく微笑む。
その余裕たっぷりの表情を見た瞬間、
凛夏のダムが決壊した。
『勇次さん、ちょっと話聞いてくれますか……?』
「いいよ、どうしたの?」
勇次の穏やかな声に促され、
凛夏はももかへの嫉妬、
連のギフト額へのショックを
コメント欄にぶちまけた。
本来なら「重いリスナー」として
敬遠される内容だが、
勇次は「あー、それは凹むよね」と
親身になって共感してくれた。
周りのリスナーたちも
空気を読んで静かに見守っている。
勇次の包容力に救われた凛夏は、
お礼のつもりで少し奮発した
高額ギフトを投げた。
「お、いいの? ありがとう。
でもそんなに投げたら
連くんが嫉妬しちゃうかもよ?」
勇次が茶目っ気たっぷりに笑う。
その冗談に、
凛夏は「そんなわけないですよ」と苦笑いしながらも
少しだけ心が軽くなるのを感じていた。
しかし、現実は甘くなかった。
それからしばらくして、
連の配信枠での空気が明らかに変わり始めた。
「ミサキちゃん、それさっきも言ってたよね?w」
白百合ももかのコメントが、
妙にトゲトゲしくなったのだ。
気のせいかと思ったが、
彼女の言葉の端々に、
ミサキを突き放すような
冷ややかさが混じる。
(……また古参のリスナーさんが減ってる。
もしかして
みんなこうやって追い出されたの?)
連への恋心は募るばかりだが、
それと同じ分だけ、
ももかの存在が鬱陶しくてたまらなくなる。
耐えかねた凛夏は
連にDMを送った。
『ももかちゃんに、私何か悪いことしたかな?』
返ってきたのは、
『えー、分かんないな。仲良くしてよー』という
のらりくらりとした返事だけ。
しかも恐ろしいことに、
そのDMの内容を、
なぜかももかが知っている節があるのだ。
(どうして? 連くんが話してるの?
この二人、一体どういう関係なの……!?)
疑惑と嫉妬。
キラキラした配信画面の裏側で、
ドロドロとした暗雲が渦巻き始めていた。
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