第3話 自覚なき「ガチ恋」と、ライバー誕生
ついに凛夏がミサキとしてライバーデビュー
オフ会という名の魔界を潜り抜けてから、
三崎凛夏の日常は一変した。
画面越しの憧れだった連から、
頻繁にDMが
届くようになったのだ。
『今日の配信
ミサキがいてくれて心強かったよ』
『小説の執筆、順調? 無理しないでね』
(……うわああ、心臓に悪い!
リスナーが配信者に恋をするなんて、
小説のベタな展開すぎて
自分でもボツにするレベルなのに……!)
凛夏は悶絶しながらも、
「あくまで一リスナー」
という仮面を必死に被り
淡々と返信を続けていた。
配信中のコメントも、いつも通り。
平常心。誰も気づいていないはず——。
だが、世の中そんなに甘くはなかった。
「……ねえ連くん、ミサキちゃん
絶対あんたにガチ恋だよ」
スマホの画面の向こう側で、
白百合ももかが断言した。
連と近所住まいの彼女は、
配信外でも頻繁に通話する仲だ。
「えー、そうかな?
俺の自惚れかと思ってたけど」
「女の勘を舐めないで。
オフ会の時のあの視線、
獲物を狙うハンター……っていうか、
捨てられた子犬みたいな顔してたもん」
連は「まいったなー」と
鼻の下を伸ばしながら、
内心では
「やっぱり俺って罪な男」と
ほくそ笑んでいた。
一方のももかは、
自分のテリトリーに踏み込んできた
新参者への警戒心を
じりじりと募らせていた。
そんなある日の連の配信中、
唐突にその提案は投げかけられた。
「ミサキもさ、配信してみれば?
文才あるし、絶対面白いよ!」
連の言葉に
コメント欄が
「見たい!」
「ミサキちゃんの配信なら行く!」と
一気に盛り上がる。
凛夏はスマホの前で固まった。
(私が配信……?
無理無理
人前に出るタイプじゃないし!)
悩み抜いた翌日、
彼女は「大人の相談所」こと
山本勇次の枠へと逃げ込んだ。
「勇次さん……連くんに配信しろって言われちゃって。
どう思います?」と震える指でコメントをした。
「いいじゃん、やりなよ」
勇次は相変わらずの脱力感で即答した。
「ミサキさん、聞き上手だし。
小説の宣伝にもなるでしょ?
うちのリスナーもみんな応援しに行くからさ」
『ミサキさんの初配信、投げ銭の準備しとくわw』
勇次のリスナーたちからも
温かい(?)野次が飛ぶ。
外堀を完璧に埋められた凛夏は、
ついに「ライバー・ミサキ」として
産声を上げる決意を固めた。
連が所属するライバー事務所「ダブルスター」から
配信権限を付与され、
ついに運命の初配信の日がやってきた。
(心臓が口から出そう……。
誰も来なかったらどうしよう、
いや、誰か来たら来たで何を話せば……!)
震える指で『配信開始』ボタンをタップする。
画面が切り替わった瞬間、通知が爆発した。
『一番乗り!』
真っ先に飛び込んできたのは連だった。
続いて、監視……もとい、
お祝いに駆けつけた白百合ももかと、
連の常連リスナーたちが
ゾロゾロとなだれ込んでくる。
「わわ、みんな、いらっしゃい……!」
パニックになる凛夏だったが
さらに通知は止まらない。
『ミサキちゃん、おめでとう!』
山本勇次がリスナーを引き連れて
「援軍」として到着し、
さらには「初配信」のタグを見た
全く知らないライバーやリスナーたちまでが、
キラキラとしたギフトを投げ込んでくる。
「え、あ、ありがとうございます!
知らない人まで……みんな、案外優しい……」
画面の向こうで、
誰がどんな思惑を抱いているかも知らず
凛夏は押し寄せるコメントの波に
必死に食らいついた。
こうして、小説家・三崎凛夏の
「ミサキ」としての第二の人生が、
波乱含みでスタートしたのである。
お読み下さりありがとうございます
次回もお楽しみに♡




