第16話 絶望の果ての、身勝手な賭け
エンタメ要素にされる連
連(勝利)は、
リア友リスナー・海斗をカフェに呼び出していた。
「……で、勝利。俺の貴重な休日になんの用だよ」
面倒くさそうに現れた海斗は、
席に着くや否や、コーヒーを注文する前に言い放った。
「勝利、全部お前が悪いやん」
「……ぐっ」
図星すぎて、連は反論の言葉を失う。
「全財産使い果たしてでもミサキを1位にするか、
新規を一から集めるか。選択肢はその二つやろ」
海斗はアイスコーヒーを一口飲み、
冷徹な現実を突きつけた。
「この間、ミサキの配信見に行ったけど、
すごかったわ。勝利の元リスナーもゴロゴロいたし。
大体お前、ギフト煽りがエグすぎるねん。
あれじゃリスナー持たんて」
追い打ちをかけるように、海斗はトドメを刺した。
「……お前、ミサキやリスナーたちが
『トップ層に繋げて欲しくて』戻ってきてほしいと思ってんの
知ってるん? 」
「友達なんだから、慰めてよ……」
涙目で訴える連に、海斗は鼻で笑った。
「ミサキをブロックしてリスナー減り始めた時から、
こうなるとは思ってたけどな」
家に帰り、連は薄暗い部屋で一人、
スマホの画面をぼーっと見つめていた。
(……なんで、配信なんて始めたんだっけ?)
大手企業の管理職。金には困っていない。
……そうだ、単純に有名になりたかった。
だから海斗も応援してくれていたはずだ。
「期待の新人」ともてはやされた日々。
(……ももかじゃなくて、ミサキを大事にするべきだった)
いつも自分の愚痴を聞き、
自分のために財布を開いてくれたのはミサキだった。
今や彼女は、最強王者クリスタルに可愛がられ、
ファンクラブ会員はトップ層並みの50名。
「小説家崩れ」と馬鹿にしていたはずの彼女は、
今や歌手デビューさえ狙える位置にいる。
「……なんで、俺じゃなくて」
涙が溢れてきた。
(誰か助けて……! ライバー人生、まだ諦めたくないんだ……!)
溢れてくる涙を拭っていたその時、
スマホが震えた。DMだ。
送り主を見て、連は心臓が止まるかと思った。
ミサキ(凛夏)からだった。
慌てて開くと、そこには短い一言が記されていた。
『ももかちゃんをブロックして
ファンクラブのVIP会員に入ってくれたら
私も連くんのファンクラブVIP会員に入ってあげる』
これは、先ほどのコラボ配信の裏で、
ミサキが王者クリスタルに相談して出た結論だった。
ちなみに、VIP会員の会費はクリスタルが
「俺が持ったる」と男気を見せていた。
『……本当に? 本当にそれだけでいいの?』
震える手で返信を打つ。
『枠には来てくれるの?』
『気が向いたらね』
連の心は狂喜乱舞した。
『ミュージックサバイバル、貢献度1位頑張る!』
その返事を見て、
ミサキは心の中で「単純なやつやなぁ」と呆れながら、
ちょうど配信中だった「2回目のコラボ配信」の場で、
そのDMの内容を暴露した。
「……っていうDMが来たんですよ」
その言葉を聞いた瞬間、
コラボ枠にいた大西直也や山本勇次、
健太たちは爆笑の渦に包まれた。
当の連は、
その裏で「これでミサキが戻ってくる!」と希望に燃え、
ももかをブロックするために
震える指で設定画面を開いていた。
その結末が、
彼にとってさらなる地獄の始まりになるとは知らずに。
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